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30 誰もいない扉にノックを

「シャナ。お前なんでわざわざ…」


「ローゼンの破壊魔法を継承した。それがどういうことなのか。貴方に教えにきたの」


 賑わいに満ちた昼のセライア街。


 俺を武器屋から連れ出したシャナの後ろにくっついて、歩いていた。


「ん、まあそうか。破壊の魔獣ローゼン・ミリオメデス。あいつがどういう奴なのか、確かに俺、あんま知らないし。そういやお前、神獣のレジェルのことそれなりに知ってたっぽいし、どういう経緯だったのかとかも、あれ、聞きなきゃならないことが実は山盛りなんじゃ…」


「そのことは、一先(ひとま)ず私の家で話しましょ」


「了解って、えっ!?シャナの家ぇ!?」


 思わず声が裏返った。


「そっ。安心して、汚くはないから。今日は丸一日使って魔法の極意を叩き込んであげる。それと、家って言ってもお屋敷じゃない所よ」


 振り返ったシャナの顔が日差しに当たって、白く眩しく輝く。


「シャナってやっぱりお屋敷育ち?」


「……ええ、そうよ」


 シャナがそう返すまでには、妙な間があった。


「もう少しで着くわ」


 俺達は壁沿いをなぞるように歩き、やがて立ち止まった。


 すると、シャナは隣のものと比べ一際大きな家の扉を、二回、ノックする。


「……ただいま、ブロード兄さん」


 そよ風みたいで、あまりに小さすぎる声。


 出迎えてくれる存在は、誰もいない。

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