29 治癒術師さんの全力ダッシュ
「店はまだ開いてねえから、一旦戻ってくれ。それにあいつはまだ寝てる」
「いいじゃない。少し様子を確かめるだけ」
「ま、まあいいじゃないですか。これだけ会いたがっているんですから。そうですよね?」
三人の話し声がドアの奥から響いている。
「ちょ、ちょっと!?少しだけっ!ほーんの少しっ!気にしてるだけっ!」
その必死そうな声が聞こえたのと、ドアノブを押し出したのは同時だった。
生の朝日が飛び込んできて、手の甲を顔に押し当てながら、少しずつ目を開ける。
「それにシャナさん。昨日うちに通り掛かって、急にグレイさんの治療費を無理矢理全額負担したくらいなんですから、顔を見るくらい」
「ん?俺がどうかした?」
「グレイさんっ!?」
武器屋のおっちゃんと、シャナと、確かこの人は……
「あ、この前の治療術師さん。その節はどーも」
「どどど、どーも…ではこれにて失礼させていただきますさよならぁ~!」
アルファルドに襲われた時、お世話になった治療術師さん。
俺を見るなり急に店の外に出て、渾身のダッシュを披露し出した。
「さよならぁ……どうしたんだあの人?」
気が付けば豆粒サイズになっている背中を目で追いながら、ふと思い出した。
「ああ、そうか。俺がアルファルドに腹ぶっ刺されて、腕凍らせて、その治療費を払ったのが、シャナ、で……………………えええええええええええええっ!?」
その時になってようやく、俺は度肝を抜かれた。
久々の二本連続投稿ゥ!
戦闘パートに比べ、日常パートは作者側の気分も多少和らぐものですね!




