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21 四つの最上位魔法

「シャナは、君を選んだのか」


 (うな)り声と共に、優しい声がする。


「誰…だ…?」


 目を開けると、俺は未知の空間に飛ばされていた。


 森だ。赤や橙の色に実った紅葉を撒き散らす大木が、ここの周囲を埋め尽くしている。


 そして、その鮮やかな風景も色褪(いろあ)せる、真紅の毛並みを纏わせる巨躯(きょく)四足獣(しそくじゅう)が、俺の意識を穏やかな眼差しで射止めていた。


「僕はローゼン・ミリオメデス。破壊の魔獣だよ」


「破壊…だって?」


 その声は、空間全体から響き渡って聞こえてくる。


 魔獣の口は開かない。ただ、静かに燃えるような唸り声を放つだけだ。


「そう。時空、天空、破壊、再生。僕の知る限り四つ存在する最上位魔法。その一つである破壊魔法を、アーク家は代々僕を通じて継承している」


 とんでもないことを聞いた、のだろうか。


 普段なら分かりそうなことでも、唐突に、見たこと無い場所で、聞いたこと無い声で言われても、全く分からない。


「シャナ・アーク。彼女が僕を君に託したということは、その力を君に譲るということだ。だけど、見たところ君は、アーク家の人間では無さそうに見える。加えて」


 この魔獣に俺は、何をされている?


「君はシャナのことを知らなさ過ぎる」


「そんなことねぇ!俺とシャナのことで、お前に分かることなんてねえだろ!」


 なぜか、無意識にローゼンの言葉に対する反論が出た。なんでだ?


「分かるさ。今、僕と会話しているのは、君の身体ではなく、君の心だからね。心の姿は、その人の記憶が形作るものだ。だから、それくらいのことなら容易に分かる」


 変わらず優しい口調で、ローゼンは俺に語り()けた。


「今から契約を結ぶに当たって、君には命のリスクを負ってもらう必要がある」

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