20 シャナのナイフ
これが最後かなんて、考えるな。
踏み止まるな。
冷静になんて絶対になるな。
「ブリザード・ミスト・ソードぉ!!」
構えた右腕を左手で抑え、走りながらも氷結の強度を高める。
「お前…もういい、殺すのはお前からだ。見せてやる。これはシャナだけにあげたかった。だがぁあ!目障りなガキを葬るには丁度いい!破壊魔法!!」
今まで黙り込んでいたシャナの兄が、そう言った。
破壊魔法。確かにそう聞こえた。
妹であるシャナの魔法を、その兄が使えないなんて、どうして、なんて思うな考えるな走れ!!
「《デーモン・ファング》!!」
石材の壁など容易くぶち抜くであろう、俺の凍った右腕の数倍は大きい牙。
下を向く牙が四つ。上を向く牙が四つ。
上下に列を作って並んでいる。
怪物が口を開けて、噛み砕こうとしている。
「粉砕しろぉ!!」
シャナの兄の叫び。
牙が、恐怖が、破壊が、死が、俺に真正面から進撃を始める。
同時に、空間が揺らいだ。
「なんだこれ!」
身体が牙と牙の隙間に、引き寄せられる。
足を止めても止まらない。
開いた口に吸い込まれる。食われる。
気付けば、また絶望していた。
死ぬ。
「受け取って」
シャナの声。
だらりと下がる俺の左手に、ナイフが収まっていることを自覚する。
「これは…」
これは、魔法が封じられている、魔法剣…?
ふと、意識が飛ぶ。




