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11 バッファロー丼が食べたいだけの占い
水晶を両手でスリスリしながら呪文を唱えるおばあさん。
「貴様の未来が見える。バッファロー丼の大盛りを食っておる。香ばしいバッファローのがめつい香り、ガチガチの食感、飛び出る肉汁おっふぉぉぉぉぉぉ」
なんだこの占い。
「結果はどう?」
「バッファロー丼が食べたいとか言ってた」
「そうなの。あんまり聞いたこと無い料理ね」
「発狂した直後に食堂目掛けて走り去っていったよ」
ひたすらカオスだったあの空間に魂を抜かれた俺は、完全完璧な放心状態だった。
空の色からは赤みが消えて、夜の深い青が広がっている。
「ところで、エレナさんはどうだった?」
「私?私はね…」
その時だった。
棒立ちしている俺のすぐ横を、肩が当たりそうな距離で、一人の男が素通りする。
強く記憶に刻まれた顔をしていた。
俺を殺そうとした、あの男の顔だった。
「すまねえエレナさん!先帰ってくれ!」
思い出すのに数秒掛かった。
振り返ると、さっきの男の背中が人混みの中に混ざっていて、分からなかった。
それでも俺は、駆け出した。




