14話 ナンパと船旅
「ちょっと、お前、本気か?」
アリーチェがこっそりと耳打ちしてくるが、俺には彼女が眉を寄せている理由がよくわからなかった。
「何がだい?」
「何がって…ああ、もう!」
「リモーネちゃん、内緒話か?俺がいるからって気を使わなくてもいいぜ?」
「別にお前に気なんて使ってない」
俺と肩を組んだままニカッと笑うカルロ。そんな俺達を見て、何故かアリーチェはジト目になって顔をそらした。
「ところでカルロ、本題に入りたいんだけど」
「…いいのか?リモーネちゃん怒ってるみたいだけど。本当に恋人じゃないんだよな?」
「違うけど、どうして何度も聞くんだい?」
「うーん、ロレンがいいならいいんだけどな?じゃあいくぜ。この船の甲板にいる女の子達を口説いて練習してみるといい。それぞれの女の子のイメージにあった美しいものに例えて褒めるんだ。それと、ロレンが大切に思うもので褒めてもいいかな。あとはとにかくお姫様みたいに扱うんだ」
「へえ、そういうの初めてだよ。褒めればいいんだね?」
「まあ、女性を褒めるなんて挨拶みたいなものさ。最初だし実践あるのみだ。当たって砕けてこい!」
カルロに言われて俺は足を踏み出す。
船の甲板を見渡すと周りにいたのは綺麗に着飾った、裕福そうな女性ばかりだった。俺はとりあえず一番近くにいた女の子に声をかけることにする。
「失礼、そこのお嬢さん。君の純真そうな笑顔がまるで百合の花のように美しくて、思わず声をかけてしまったよ。俺と話をしてくれないかい?」
曖昧な笑顔を浮かべてこちらを見た女の子は、俺を見ると表情を変え、紅くなった頬を両手で覆って隠すような仕草をした。
彼女がしばらく黙ったままで固まってしまったので、『これは失敗だろうか?』と考え、謝ることにする。
「やっぱり、いきなり声をかけるなんて迷惑だったかな?ごめんね」
女の子をじっと見つめながら少し首を傾げる。すると、女の子は更に顔を紅く染めて首を横に振った。
「ち、違うんです。あまりに素敵な方でびっくりしてしまって。是非お話しましょう、してください!」
話をしようと俺が頼んだはずなのに、何故か相手からも頼まれてしまった。
とりあえずカルロの言う通り女の子を褒めたけど、次は何を話せばいいのだろうか。お姫様扱いってどうすればいいのだろう?
目の前で期待のこもった眼差しで見つめてくる女の子と何を話そうかと考えあぐねていると、カルロが後ろからやって来て俺の肩を叩く。
「ロレン、思ったより素質があるじゃないか!じゃあ、俺がこの子と話しているから、ロレンは他の女の子にも声をかけてきてくれ」
「え?俺がその子と話すんじゃないのかい?」
「いいから、いいから」
カルロは自然に女の子の肩を抱き寄せる。なんだか女の子は少し不機嫌そうな表情をしたけれど。
そんなカルロの後ろの方でアリーチェが額に手を当てて俯いているのが見えた。もしかして頭でも痛いのだろうかと心配になった時、自分の周りに女の子が集まって来ていることに気づいて驚く。
「あの、私達ともお話しませんか」
「え?ああ、うん。俺で良ければ」
そこで後ろの方で俯いていたアリーチェが俺達の方へ歩いて来た。
「カルロ、この世間知らずはすぐに人に影響されるんだぞ?まるで生まれたてのヒヨコみたいなやつなんだからな!」
「リモーネちゃん、もしかして心配なのか?」
カルロの言葉にぎくりとしたように身体を震わせると、アリーチェは上目遣いに俺達を睨んだ。
「し、心配なんて、誰が...!まったく、もう付き合っていられない!私は部屋に行くからな」
そう言うなり、踵を返すと船の中に1人で入って行ってしまった。
アリーチェが居なくなってしまうと黙って見ていた女の子達が、我先にと俺に話しかけてくる。...一番話しかけてきたのはカルロだったけれど。
「ロレンのおかげで女の子に囲まれて幸せだぜ。ありがとな、イケメンくん?」
こうして現在、船員ことカルロと女の子達に囲まれている訳である。回想終了。
イメージイラストです。手書き。
7/19 イラスト追加しました。




