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第35話 鉢合せ

 豪華な水着が店内を彩る。


 沢山の年頃の女性達が、女性同士で嬉しそうに水着を選んでいる。


 ここで何をして待っていればいいんだ。


 春陽は途方に暮れる。



「オー! 春陽! お久しぶりでーす」


「なぜ、水着店に春陽がいるの?」



 振り返ると、ジョディ先生と香織が立っている。


 その隣で春陽を同じように頬を赤く染めている優紀と和尚が立っている。


 和尚は大柄だから目立つ。


 多くの店内の女性達は和尚を見てヒソヒソ話を始めている。


 優紀はイケメンだ。


 店内の女性達は優紀の顔を見て、頬をピンク色に染めている。


 香織がツカツカと歩み寄ってくる。



「春陽が1人で来てるはずないわよね。誰と一緒に来たの?」



 春陽は本当のことを言えずに目を泳がせる。


 店内の奥から春陽を呼ぶ声が聞こえる。



「今から試着しますから、春陽君は試着室の近くで見てください」



 香織が声の方向へ顔を向けると、既に水着を選んだ京香先生と綾香の2人が立っていた。



「どうして休みの日に京香先生と綾香先生と一緒にいるの? どうして2人の水着を春陽が選ぶの? 一体、どうなってるのよ」


「たまたま、モールの中で会ってさ。それで一緒にここまで来たんだ」



 香織と優紀は綾香との関係を知らない。ここでバレるとマズイ。


 優紀が近くに寄ってくる。



「俺の憧れの京香先生と一緒に水着選びしてるなんて、許せないな。それなら俺も一緒に誘えよ」


「優紀! 何を言ってんのよ! 怒るわよ!」



 香織の目が吊り上がる。


 優紀は顔から汗をかいて、言葉を探しているが、上手い言葉が浮かばない。



「2人共、ここは水着売り場、喧嘩をするところではござらん。皆で一緒に水着を選べば良いではないか」



 和尚がツルツル頭を右手で撫で、ニッコリと笑って2人の喧嘩の仲裁に入る。



「そーでーす! 香織! 私達も早く水着を選びましょう! 優紀をそれでノックアウトね!」



 ジョディ先生は香織の腕を引っ張って、水着を選び出す。


 香織もジョディ先生には弱いのか、仕方なく一緒に水着を選び出す。



「春陽君、私の水着も見てよー!」



 試着室の方向から、鼻にかかった甘い声が聞こえる。


 和尚と優紀が春陽の背中を押して3人で試着室の前まで行くと、そこには美の女神がいた。


 白の布地をクロスさせただけの水着。背中はお尻が少し隠れているだけ、ほぼ全開に開いている。


 そしてクロスさせた布がEカップの形の良い胸を縦に隠しているだけで、横から胸がはみ出ている。


 長くて煽情的な脚はギリギリのところまで見え、きれいな脚を、より際立たせている。


 胸の下でクロスした布が、下半身でまたクロスして逆三角形を作っているが、面積が非常に少ない。



「どう? 私にピッタリでしょう? あら? 優紀君、浩平君もいたの! 私、似合ってる?」



「「「似合っています」」」




 和尚と優紀は京香先生から目を離すことができない。


 他の店内の女子達も京香先生の見事なスタイルに全員が振り返っている。


 優紀が春陽の首に手を回して抱き着いてくる。



「今日、水着を買いに来てよかった。京香先生の水着姿、最高だぜ」



 和尚は口が閉じられない状態で、両手を合掌している。


 口の中で何かを言っているが小さくて聞こえない。


 京香先生の試着室の隣の試着室の扉が開いた。


 そこには可愛い天女様がおられた。


 薄桜色のワンピース。それもスクミズそっくり。


 ダイナマイトボディを薄桜色のスクミズが覆っている。


 胸のボリュウームとお尻のボリュームが半端ない。


 体にピッチリと張り付いたようなスクミズの破壊力に春陽は口を開けたまま言葉がでない。



「似合ってますか?」


「……すごく似合ってる……でも外では着てほしくない。部屋で着てほしい」



 京香先生が綾香を見て目を丸くしている。



「綾香、それスクミズと色違いなだけでしょう。あなた24歳なのよ。学生じゃないの。もっと色気のある水着を選びなさいよ!」


「でも……春陽君が部屋で着てほしいって……エヘヘ」


「それは2人でやってなさい! ちゃんと海水浴用の水着も買うの! 私が選ぶわ!」



 和尚と優紀が京香先生が揉めている先を見る。


 そこには薄桜色のスクミズを着ている綾香が立っている。


 優紀が春陽にささやく。



「これはこれで良い。可愛さと色気が混じり合って、春陽のようなマニアックにはたまらないだろう」


「ああ、最高だ!」



 童顔の綾香の顔が、薄桜色のスクミズによく似合っている。


 どこから見ても20歳の女性がスクミズを着ているようにしか見えない。


 これは水着か! 


 綾香が恥ずかしそうに体をモジモジさせる度に、たわわに実った、豊満な胸がプルンプルンと震える。



「春陽君が気に入ったみたいだから、部屋用でこれを買うね。海水浴用は京香に選んでもらう」



 その言葉を聞いて優紀が首を傾げる。



「綾香先生の言ってることがおかしいぞ。何か変な気がする。 春陽、気づかないか?」


「なんのことだ?」



 春陽は無表情を貫いて知らないという素振りをする。


 優紀は振り返って綾香に問いかける。




「綾香先生? 綾香先生がスクミズ買って、家で着たら、なぜ春陽が見えるんだ?」


「それは一緒に住んでるからじゃないの! 優紀君忘れちゃったの?」



 優紀の顔が青くなり、ゆっくりと春陽の方向を向く。


 春陽は素早く逃げようとするが、優紀が腕を伸ばして、春陽の腕を掴むほうが早かった。



「白状してもらおうか? 俺に何を隠してた? 俺と春陽は親友だったよな!」



 和尚は何も言わずに、男性用の水着を選びに行った。



「あー、優紀に言うのを忘れてたよ! 今度、引っ越ししただろう! あれは綾香先生と一緒に暮らすためなんだ! もう言ったつもりでいたよ!」


「お前も綾香先生とデキてたのか! 和尚といい、春陽といい、羨ましすぎるだろう!」



 京香先生が試着室から出て、優紀の腕に自分の腕を絡める。


 豊満なバストが優紀の腕に当たる。その感触を感じた優紀は身動きが取れなくなり、口をパクパクとさせている。



「優紀君、怒っちゃーダメよ! 今日は私も綾香と春陽君の家にお泊りしてきたの。だから一緒なのよ。このことは誰にも言わないでね。私達と優紀君だけの内緒! ね?」


「……わかりました!」



 水着姿の京香先生に密着されている優紀は顔を真っ赤にして俯いている。



「優紀君だけに秘密で教えてあげるわ! 時々、綾香と春陽君の様子を見に、私も部屋に遊びに行ってるの! 私に会いたかったら春陽君の家に遊びにくれば会えるわよ! だから内緒」


「……絶対に誰にも言いません」



 京香先生がダメ押しで、優紀の耳元で甘くささやく。



「物分かりの良い男性って好きよ♡」



 優紀を京香先生の妖艶な色香が包み込む。


 優紀は恍惚とした表情で、春陽へ顔を向ける。



「グッジョブ!」


「そうはいかないわよ!」



 後ろから甲高い怒った声が飛ぶ。


 春陽が振り返ると、体全身をプルプルと震わせて怒りのオーラ―を放っている香織が立っている。



「全部、聞いたんだからね! ジョディ先生にも確かめたんだから!」



 あ、ジョディ先生に口止めするのを忘れてた!


 優紀は爽やかな笑みを浮かべて、香織の肩を抱く。



「俺は春陽の家に遊びに行く相談をしていただけさ。春陽は俺の親友だ。遊びに行ってもおかしくないだろう」


「でも、春陽の家には綾香先生がいるじゃない」


「綾香先生のことを好きなのは春陽だ。俺じゃない。だから香織が怒る必要なんてないだろう」



 香織は綾香の方を見て、春陽を見る。



「ジョディ先生と和尚のこと、学校も酷いと思ってる。だから春陽と綾香先生のことは絶対に言わないわ。1つだけ約束して! 京香先生と優紀を2人っきりにしないこと!」



 京香先生が水着姿のまま、香織の隣に立つ。



「誤解よ! 私は高級ワインのような大人な男性が好きなの! 優紀君はイケメンだけど学生だから興味ないわ。ごめんなさいね優紀君!」



 優紀はその場で膝を崩す。


 香織は満面の笑みを浮かべる。



「そうですよね。京香先生ほどの女性が、年下好みって言うほうがおかしいです。納得しました。ありがとうございます」



 京香先生って話術の達人か。全ての人を丸め込んでいく手腕がすご過ぎる。


 私服に着替えなおした綾香が試着室から出てきて、春陽の隣に立って微笑む。


 それを見た京香先生の額に筋が立つ。



「綾香! 優紀君と香織ちゃんは、春陽君とあなたの関係を知らないでしょう! なぜ自分からバラすのよ!」


「フェ? そうだったの? あ! 浩平君と間違えた……テヘヘ」



 そこは笑って誤魔化そうといても無理だと思う。


 綾香の癖だ。



「あなたは教師なの。そして春陽君は生徒。だから本当は恋愛禁止でしょう。しっかりしなさいよ」


「京香の額に筋が1本立ってる。怒ってる?」


「当たり前でしょう!」



 それにしても、やっと香織の怒りが消えて良かった。


 優紀はそのうち立ち直るだろう。立ち直りは早いからな。



「オー! 私の水着ー! 見てくださーい!」



 いつの間にかジョディ先生が水着に着替えていた。


 しかし、それは水着なのか? 貝殻3枚にしか見えません。


 どこも隠せてねーよ!


 あまりにも大胆に素肌を見せているジョディ先生を見て、全員が固まった。



「なりません。なりませんぞ!」



 男性用の水着を選んでいたはずの和尚が、大柄な体を揺すって走ってくる。


 そして両手を広げてジョディ先生を隠した。



「オー! 浩平! ナイスバディー? OK?」


「貝殻はなりませぬー!」



 和尚は無理やり試着室の中にジョディ先生を押し込んだ。


 あんな商品あったっけ? あれってディスプレイ用の非売品じゃなかったのか。


 和尚は頭も首も真っ赤にしてゼイゼイと息を切らせている。


 香織が呆れ顔でため息をつく。



「和尚も大変ね! ジョディ先生って日本の常識わかってないもんね! ジョディ先生、スタイル抜群だから、海水浴に行ったら、男性達に狙われるわよ!」



 それを聞いた和尚が顔を青ざめる。



「それは困り申した。どうしたらよいやら」



 まだ水着姿のまま立っていた京香先生がニッと笑う。



「こうなったら、海水浴でジョディと勝負ね! どちらが多くナンパされるか! 香織ちゃんも参加しようね!」


「へ? あたし?」


「たまには優紀君に焼きもち妬かせなさい」



 香織の心に闘志の炎が灯る。



「私も参加します!」



 京香先生と香織が固い握手をしている。


 京香先生、忘れていると思いますけど、いつまで水着姿のままでいるんですか。



「京香。早く水着から私服に着替えてよ。目立っちゃてるよ。他の男性の人達も京香のことを見惚れてるよ」


「あら、忘れてたわ。私服に着替えて、綾香の水着を選ばないとね」



 京香先生が私服に着替えに試着室へ戻っていく。


 それと入れ替わるようにジョディ先生が泣きながら試着室から私服で出て来た。



「浩平! おかしいでーす! 浩平のDVDで見まーした!」



 全ては和尚が原因か!


 綾香が春陽の手をギュッと握って、甘えた声で耳元でささやく。



「この水着は部屋専用にするね。今度、一緒にお風呂に入ろうね♡ 楽しみ♡」

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