第34話 ドライブ
深夜遅くまで京香先生との飲み会は続く。
「あなた達2人も、付き合って2カ月以上経つのに、キスだけで、よく我慢しているわね。春陽君ツライでしょう」
酔っぱらった京香先生は色っぽくもなるし、エロい話も平気でし始める。
綾香と付き合う時から、先生と生徒の間での恋愛の難しさを知っていた春陽は、当然のように綾香にキス以上のことを求めたことはない。
「女は時には好きな男性に夢中に抱かれたモノよ。綾香だってそうでしょう?」
「ハワワ―! 何を言い出すのー! 京香、飲み過ぎよ!」
「綾香は処女だから、我慢できるけど、私なら我慢できなくて、春陽君を誘ってしまうわ」
艶めかしい視線で京香先生が春陽を見る。
そんな視線で誘われたら、どんな男性でも京香先生の誘いに乗ってしまいそうだ。
「京香先生は大人の女性の魅力に溢れているから、憧れますけど……選ぶのは綾香です。俺にとっては綾香のほうが魅力的です」
「冗談よ! 春陽君には綾香だけよ。私は飲み疲れたわ! あとは2人でイチャイチャしてなさい。 私、寝るわね」
ニッコリ微笑んだ京香先生はそう言ってリビングのソファから立ち上がると空き部屋へと入っていった。
京香先生がいなくなった途端、綾香が春陽の膝の上に頭を乗せる。
「嬉しいな。京香より綾香を選んでくれる男性なんて春陽君が初めて。すごく嬉しい」
綾香が体を春陽側に向けて、春陽のお腹に頬をこすり付ける。
そして手の平で春陽のお腹を何度も優しく撫でる。
「春陽君が私のお腹を撫でる気持ちがわかります。とても落ち着く。春陽君を離したくない」
「俺もいつも、綾香のお腹を撫でている時は、そう思って撫でているんだよ」
綾香が顔を上向きにして、下から春陽の顔を、潤んだ瞳で見つめる。
その唇は妖しく濡れている。
春陽は顔を近づけて綾香にキスをする。
しかし、無理な姿勢でキスをしているので、濃厚なキスができない。
「もっと♡」
綾香は首に両手を巻き付けて、春陽に抱き着いて濃厚に唇を重ねる。
綾香とのキスは気持ちよくて、なんて安らぐんだろう。すごく安心する。
春陽はまるで綾香の唇に包まれているような感覚になる。
春陽も綾香の背中に両手を回して、しっかりと抱きしめて口づけを交す。
「私、今のままでも十分に幸せ♡ もっとキスして♡」
「うん!」
2人は時間を忘れて唇を重ね続ける。
唇を離すと綾香の顔が真っ赤に照れていいて、とても可愛い。
「顔が火照っちゃった。今日は飲み過ぎたかも。春陽君、私をベランダへ連れて行って」
「いいよ」
綾香をお姫様抱っこして、ベランダへ連れていく。
ベランダの窓を開けて外へ出ると、綾香は春陽の手から降りて、体を寄り添わせる。
「こんなに一緒に居られる日が来るとは思わなかった。本当は学生と先生の恋愛だから、すぐに飽きられちゃうと思ってた」
綾香はそんなことを思っていたのか。
先生という立場に囚われている綾香は悲しい恋の選択をしていたのかと、春陽は驚いた。
「絶対に綾香を離さない。いつまでも一緒にいよう」
「うん。キスして♡」
「うん」
綾香のスタイルの良い腰に手を回して、ギュッと綾香を抱きしめる。
綾香のほうから激しく唇を重ねてくる。春陽はそんな綾香を愛しいと思った。
綾香の体から力が抜けた。目を開けると綾香はキスをしたまま、眠っていた。
飲み過ぎだよ。
春陽は綾香をお姫様抱っこして、リビングに入り、部屋の電気を全て消し、寝室へと綾香を運ぶ。
そしてベッドの布団をめくって、綾香を寝かし、自分も綾香に腕枕をして、綾香に抱き着いて眠る。
綾香の体から甘くて優しい香りが漂っている。春陽が一番に安らぐ香りだ。
すぐに春陽にも眠気がやってきて、2人で抱き合いながら、眠りの中はと誘われていった。
◆◆◆
「いつも、こんなにイチャイチャして寝てるのね。ちょっと妬けちゃうわ。本当に羨ましい」
頭の上から声が聞こえる。
遮光カーテンなので日の光は入ってこない。
薄暗い部屋の中で春陽が目を細めてみると、京香先生が両手を腰に当てて、呆れたように立っていた。
「今日は休みじゃないですか。京香先生も昨日は夜更かしをして眠いでしょう。もう少しだけ眠っていましょうよ」
「今、何時だと思ってるの?」
「何時ですか?」
まだ、朝方だろうと思って春陽は京香先生に問いかける。
「もう、お昼の1時よ。あなた達は寝すぎ! 外は良い天気よ。 今日はせっかくだからドライブに行きましょう」
俺も綾香もママチャリしか持っていない。
京香先生はセルシオでマンションまで来ているから、今日は車がある。
車でドライブもいいなと春陽は考える。
京香先生がそっと春陽の耳元に顔を近づける。
「いつも綾香をどういう風に起こしてるの? 面白いから、いつもみたいに起こしてみて」
春陽も思わず微笑んで、その提案に乗る。
小さな声で綾香の耳元にフーと息を吹きかける。
「フニャー! ダメですー!」
まだ起きていない綾香はそう言って、春陽に抱き着いてくる。
春陽は綾香の頬にキスを何回もする。
「嬉しいです。もっと♡」
「綾香、早く起きないと遅刻しちゃうよ」
「もっと♡」
「うん」
綾香の可愛い唇に春陽は唇を重ねる。
すると綾香が春陽の背中に手を回して、ギュッと春陽に抱き着いて、体を絡めてくる。
春陽は顔を離して、手の平で綾香の頬を撫でる。
「本当に遅刻しちゃうよ? それでもいいの?」
「遅刻はダメです! でも、もう少し甘えさせてください♡ キスー♡」
「仕方ないな! 後1回だけね!」
春陽は綾香を抱き寄せて唇を交す。
段々と綾香の目が少しずつ開いてくる。
綾香の目にはニヤニヤ笑いをしている京香先生の顔が映る。
「ハワワ―! どうして京香がここにいるの! 見ないでー! 恥ずかしいよ!」
「それは恥ずかしいわよね。年下の男の子にメロメロになって、すっごく甘えてる姿なんて。綾香がこんなに甘えただったなんて思わなかったわ」
「ハワワー! いつもは逆です! 私が春陽君を優しく起こしてるんです!」
「そんな言い訳通じませーん」
京香先生は笑いながらリビングへと去っていった。
「京香に見せるなんて、春陽君も意地悪です」
「今日も綾香は可愛かったよ。朝の綾香は正直だから大好きだな」
「ハワワワ! 言わないでください!」
春陽は微笑んで布団からでて、綾香を起こす。
綾香は枕をギュッと抱いて、枕に顔を埋めている。よほど恥ずかしいらしい。
「さー、顔を洗いに行こう!」
綾香の手を握って、春陽は恥ずかしがっている綾香を立たせて、寝室を出て、洗面所へ向かう。
京香先生は既に、新品の歯ブラシを使って洗顔を済ませていた。
京香先生はいつも薄化粧だが、化粧を取っていても、その美貌に全く変わりはない。
綾香も基本は薄化粧で、化粧品の匂いが好きではないらしい。
朝から綾香と京香先生という2人の美女をみることができて、春陽はご満悦だった。
京香先生はまだ着替えずにネグリジェのまま、リビングのソファに座っている。
スタイルの良い脚が艶めかしい。
今度、綾香にお願いして、綾香にもネグリジェを着てもらおう、春陽は心の中で計画を立てる。
頭に浮かぶネグリジェはどれもスケスケで、綾香のツンと上向いた胸が透けて見えていた。
こんなの実際に綾香が着たら、理性が吹っ飛びかねない。
春陽はネグリジェを断念することにする。
洗顔を終わった綾香が京香の近くへ歩いていく。
「京香! ネグリジェのままで部屋をウロウロするのは禁止です! 春陽君に影響が出ます!」
「そう言われても、この部屋、すごく落ち着くのよね。まるで自分の部屋にいるみたい」
「それと、これとは話が違います。私も着替えますから、京香も着替えてください」
京香先生は肩を竦めて、空き部屋へと入っていった。
そして綾香は寝室へと入っていく。
しばらくすると、綾香は両肩の見えるフレアーな洋服にデニム姿でリビングに現れた。
そして遅い朝食をキッチンで作っていく。
京香先生は白のニットシャツに、白のスカートを履いて寝室から出てくる。
2人がリビングにいると艶やかで楽しい雰囲気になる。
春陽は寝室へ入って、薄緑色のニットを着て、デニムを履いてリビングへ行く。
3人でリビングで遅い朝食を食べる。
「ねえ、綾香! この家に私の私服を置いてもいいでしょう! この家のほうが学校に近いんだもん! 時々、泊りに来たいし!」
「京香のことだから、そう言うと思っていました。春陽君も京香のわがままは許すでしょうから、私も許しますよ。でも悪戯はやめてください」
まだ朝の寝起きを見られたことを、綾香は恥ずかしいらしい。
「私にも、あんなに綾香が甘えたことないのに。ちょっと春陽君が羨ましかったわ。綾香、可愛いわよ」
「なぜ、私が京香に甘えないといけないんですか。おかしいです」
2人の会話はとても仲が良くて、聞いていてい楽しい。部屋の仲が和やかになる。
朝食の跡片付けを終えると、京香先生がニッと笑う。
「さて、ドライブに行きましょうか!」
◆◆◆
地下1階の駐車場に行くと京香先生の白のセルシオが止められていた。
春陽と綾香は後部座席に乗る。
「なぜ、誰も助手席に乗らないのよ!」
京香先生から不満の声が飛ぶ。
車の中に居ても綾香の隣にいたい。綾香も春陽と同じ気持ちだった。
「絶対に私も良い男を見つけるんだから!」
京香先生は独り言を呟いてセルシオは走り出す。
一般道を抜けて、高速に入る。空は晴天で、高速道路の上からは遠い山脈が見える。
京香先生の向かっている方向は父のオフィスがある都会だろう。
あそこならモールやデパートもある。
「今日は洋服選びよ! 洋服は女性の命だから! 春陽君にはつまらないかもしれないわね!」
そう言って京香先生が微笑む。
「俺はどこでもいいですよ。綾香と京香先生と一緒にいるだけで楽しいですから」
「言ったわね。本当に連れて歩くからね」
京香先生が微笑みを深める。その微笑みに悪戯心が見えるのは春陽だけだろうか。
まだ眠かったのか、綾香は春陽の膝の上で、すやすやと眠っている。
春陽は優しく綾香の頬を撫でる。
「こんなに安心してる綾香を見たのは初めてよ。本当に春陽君のこと信頼してるのね。羨ましいわ」
「俺のほうが子供ですけどね」
「年齢は関係ないわよ。女性にとって愛する男性の膝の上が一番安心するものよ」
そんな話をしている間に、高速を降りて一般道へと降りていく。
一般道を走って繁華街に入ってすぐのところのパーキングに車を駐車する。
「綾香、着いたよ。起きようね」
「ハニャー、おはようございます」
いつもながら寝起きは寝ぼけているようだ。
春陽は綾香の手を握って、後部座席から綾香を降ろす。まだ綾香はフラフラしている。
綾香のもう一方の手を京香先生が握る。
綾香は両手を春陽と京香先生に繋がれて、まるで子供のようだ。
3人で近くのモールに入って、洋服店の中に入って洋服を見る。
その間に綾香も目が覚めたようで、今は京香先生と熱心に洋服を選んでいる。
綾香は気に入った洋服があると、胸の上に洋服を乗せて、春陽に見せにくる。
「これ、似合う?」
「どれも似合うよ!」
「そんな答えは聞きたくありません。1番、似合う服を選んでほしいのに……」
「仕方ないじゃないか! 綾香は何でも似合うんだから!」
こんな時、男性はどう言えばいいんだろう。なかなか綾香は納得してくれない。
「綾香! 男性は女性の洋服には無頓着なの! 春陽君にとってきれいなのは綾香! だから何でも似合うように見えちゃうの! もっと男性を知りなさい!」
京香先生がそう言って綾香を引き戻す。
京香先生、ありがとうございます。先生の言う通りです。
何軒か洋服店を回って、候補は決まったが、まだ洋服を買っていない。
女性の洋服選びは長いと聞いていたが、こんなに選ぶとは思わなかった。
「さー! 次はこの店よ! やっぱり夏はこれよね」
春陽は店の中を見て唖然とする。
この中で一体、自分はどうやって時間を過ごせばいいんですか。
店内一杯に、水着が飾られている。店内も女性だらけだ。
京香先生はニッと笑って春陽の腕を掴む。綾香もニッコリと笑って、春陽と腕を組むと、春陽の意見も聞かずに店内へと入っていく。
「ちょっと待ってください!」
「「待ちませーん!」」




