望みを叶える月の簪
魔法使いと魔女が目を留めました。
少女は自分が想いを寄せる相手に、他に想い人がいることを知りました。
少女は愛されたいという自分の気持ちを胸に秘めて、笑顔で相手の恋を応援しました。
「なんて優しい女の子だろう」
「そうだわ、あの子に魔法をかけて、望みを叶えてあげましょう」
二人は月の簪を贈りました。
少女は新しく自分を大切にしてくれる男性と出会いました。その男性と恋人になった少女は沢山の愛をもらい、幸せな生活を送り始めました。
しかし、どこか不安な様子です。
望みが叶うというのは良いことばかりではありませんでした。胸の内に秘める思いは、綺麗なものばかりではないからです。
ある日、少女は一人の人間を憎らしく思うようになりました。しかし、少女はとても優しい心の持ち主です。決して自身の憎しみを顔に出さず、口にもせず、自身の心に留めました。
けれども簪は逃しません。少女の秘めた思いは全て、善悪問わずに実らせました。
月が綺麗なとある夜、少女は魔女と魔法使いを呼び出して言いました。
「私が憎しみを抱いたばかりに、人が死んでしまいました。私は自分を許せません。もう望みが叶うことが怖いのです」
少女は折られた月の簪を二人に返しました。
その後、罪悪感に苛まれた少女は自らの首に縄を巻きつけて、ついに命を絶ってしまいました。
「まあ、哀れだわ」
魔女は冷たくなった少女を前に、困ったように笑いました。
「どんなに心が広い人間でも、恨みや憎しみの感情は避けられないものなのか」
魔法使いが受け取った簪を悔しそうに握りしめると、二人はその場を後にしました。




