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第2話
翼と角とギルドと変なエルフ
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「……やっぱ目立つよなこれ」
街の入口、石でできた大きな門の前で立ち止まる。
人、多い。
めっちゃいる。
行き交う人、馬車、荷物抱えてる商人、鎧着た冒険者っぽい人。思ってたより普通に“街”だ。ファンタジーだけど、ちゃんと生活してる感じ。
で。
その中で。
うちだけ。
翼。
尻尾。
角。
「いや無理でしょ」
どう見ても浮いてる。
隠そうとする。
翼、背中にぴったり寄せる。
尻尾、足に巻く。
角……どうしようもない。
「……バレるなこれ」
《確実に認識されます》
「知ってる」
ため息。
でも入らないわけにもいかない。
腹くくる。
「よし、いく」
そのまま門へ向かう。
門の横には鎧を着た男が立っていた。槍を持ってて、完全に門番って感じ。
うちを見る。
止まる。
目、めっちゃ細くなる。
「……おい」
「はい」
「その格好はなんだ」
きた。
「えーと……コスプレ?」
「こすぷれ?」
「あー、その、あれ。お祭りとかでやるやつ」
門番はしばらくうちを見て、それから翼を見る。尻尾を見る。角を見る。
「……どこから来た」
「森の方」
「森……」
少し考える。
「魔物じゃないな?」
「違う違う違う違う!!」
即否定。
「人間!一応人間!」
《分類上は竜です》
「今は人間ってことで」
門番はまたしばらく黙る。
空気がちょっと重い。
後ろで待ってる人もちらちら見てくる。
やばい、これ止められるやつだ。
「……まあいい」
「え?」
「問題起こすなよ」
「起こさない!」
「行け」
「ありがとうございます!」
あっさり通れた。
門くぐった瞬間、ちょっと拍子抜けする。
「意外といけたな」
《外見に対する許容度が高い地域です》
「助かるー」
街の中に入る。
石畳。
両側に店。
パンの匂い。
肉焼いてる匂い。
「うわ、めっちゃいい匂いする」
お腹鳴った。
そういえば、さっき狼燃やしただけで何も食べてない。
「腹減った……」
でもまずは情報だ。
適当に歩く。
視線は感じる。
めっちゃ感じる。
「あの子なに?」「羽ついてない?」「角もあるぞ」
ひそひそ声。
「うん、目立つね」
《視線集中率:高》
「言わなくていいから」
歩いてると、大きな建物が見えた。
人の出入りが多い。
武器持った人も多い。
入口の上に看板。
見上げる。
文字が見える。
読める。
「……読める」
《言語理解機能が正常に作動しています》
「いや助かるけどさ、なんで読めんの?」
《竜の叡智による補助です》
「便利すぎない?」
とりあえず読む。
“冒険者ギルド”
「これか」
中に入る。
ざわっと空気が動いた。
さっきまでの会話が少し止まる。
視線が集まる。
「うわ、さっきより見られてる」
《視認性が高いためです》
「言い方」
気にしないふりして歩く。
カウンターがある。
奥に人が立ってる。
落ち着いた雰囲気の女性。
「あのー」
声をかける。
「はい」
にこっと笑う。
「ご用件は?」
「冒険者になりたいんだけど」
「登録ですね」
さらっと言う。
「初めてですか?」
「うん」
「では、こちらに記入をお願いします」
紙を出される。
ペンも一緒に。
「名前、年齢、出身地などを」
「おけ」
ペンを持つ。
普通に書ける。
「ノア……っと」
さらさら書く。
自分でもちょっとびっくりするくらい自然に書ける。
「……はい、どうぞ」
渡す。
受付の女性が目を通す。
「ノアさんですね」
「はい」
「出身地が“森”になっていますが」
「あー、うん、まあ森」
「そうですか」
深くは突っ込まない。
助かる。
「それでは、こちらがギルドカードになります」
カードを渡される。
「ランクはFからのスタートになります」
「ランク?」
「冒険者の実力を示すものです。Fから始まり、E、D、C……と上がっていきます」
「へえ」
《初期ランク:F》
「また出た」
「何か?」
「いやなんでもない」
カードを見る。
名前と、ランクFって書いてある。
「これでいいの?」
「はい。本日から冒険者です」
「マジか」
なんか、あっさりだな。
「依頼はあちらの掲示板から受けてください」
指差された先を見る。
びっしり紙が貼ってある。
「了解」
振り返る。
その瞬間。
すぐ後ろにいた。
「うわっ!?」
銀髪。
長い耳。
近い。
めっちゃ近い。
「近い近い近い!」
「その翼、本物ですか?」
目、キラキラ。
「いきなり距離詰めすぎでしょ!」
「触ってもいいですか?」
「だめ!」
「では観察を」
「なんで許可取らずに次行くの!?」
少女はまじまじとうちを見ている。
翼、角、尻尾。
全部。
「……興味深い」
「なにこの子」
《高い関心を示しています》
「見れば分かるわ」
少女は一歩下がる。
それでも目は離さない。
「あなた」
「はい」
「普通ではありませんね」
「二人目だ」
《同意します》
「お前ほんと黙れ」
少女は気にせず続ける。
「その魔力、形状、維持構造……どれも見たことがありません」
「見なくていいよ」
「いえ、見ます」
「強い」
ため息。
めんどくさいタイプ確定。
「で、なに」
聞く。
少女は少しだけ間を置いて、それから言った。
「私はリリアです」
「急に自己紹介」
「あなたは?」
「ノア」
「ノア」
一度うなずく。
それから。
「あなたを観察したいです」
「やだ」
即答。
でも。
この時はまだ。
これからうちの冒険がどうなるかなんて、全然分かってなかった。




