アジロの〈毒鎌鼬〉
「ネビロ作戦通り頼む!」
「分かってるっての!」
ネビロは近辺で一番目立つ大きな草に手をかざす。
「植物の精霊よ、ハクチョウゼンマイの群生地を示せ!」
大きな草がゆらゆらと揺れ、光り出す。
「群生地はこっちだ!」
私達はネビロを追って走り出す。
「随分開けた所に出たな。レティ!あそこに沢山生えてるのがハクチョウゼンマイで間違いないか?」
「えっ、あ……は、はいっ!」
まだ誰もいない、一番に着けたようだ。
「ウィルフ、悪いが俺はここじゃ、戦えない。戦闘になったら森の中へいっちまうが、大丈夫か?」
「エリンが来なければね。早速ハクチョウゼンマイを集めよう。アガリアさん、成長魔法を!」
「ネビロ、あれ。」
「分かってる。」
森の中から人影が忍び寄ってくる。
数は一つ、それもかなり小柄で、最初に感じたのは異様に静かだった事だ。
現に、私は影が見えるまで存在に気づかなかった。
「アジロが一人で……?妙だな……」
「エリンはどうせネビロ狙いだ、こっちから仕掛けていいと思うよネビロ」
「あぁ……アジロ!そこで止まれ!」
ネビロが急に声を張り上げる。
と、思ったらネビロは急に私達に耳打ちしてきた。
「ウィルフ、12時の方向にアジロ、8時の方向に一人、ここは多分山の南側、追加の敵が来るとしても多分9時の方向から。」
何故分かるんだろうという疑問を飲み下し、頷く。
ネビロは再びアジロに話しかける。
「アジロ!エリンはどこ行った?!」
アジロがおどろおどろしく返答する。
「……答える訳ねぇだろうがよ……でもな、エリンは「ネビロはアジロ一人で十分」って言ってやがったぜ……」
「……はっ!十中八九ブラフだろ。」
「ネビロ、」
「分かってる、ウィルフ、作戦通りに頼むよ。」
そう言ってネビロはアジロの方に駆け出す。
「かかってこい……〈毒液魔法〉!」
そう言い終える前にネビロはアジロを蹴りあげる。
「うげぇ!」
その隙を見逃さず、ネビロはアジロの服を掴み、森の中へ投げ飛ばす。
「ネビロは……上手くやるかな。僕の問題はこっちか。」
「ウィルフ、気をつけて。」
森の中からガタイのいい男が姿を現す。
「よぉウィルフリードくぅん……そんな名前だったよな?」
ここでネビロがレティを置いていった事に気がつく。
「あっやべ……レティ、下がってて。」
「借りをよぉ……返しに来たぜ?ウィルフリードくん?」
「……アンタには敬語は要らなそうだな、ラーム先輩。」
「ここまで来れば問題ないな」
「てめぇ……ボコボコ殴りやがって……」
俺は森の中でアジロと対峙していた。
「植物の精霊よ、私の命に従え!」
植物のツタがアジロの体に巻き付く。
アジロは妙に冷静な様子だ。
「……ナシメ、やれ。」
俺は知らぬ間に後ろに立っていた茶髪の女に気がつく。
その女は魔法を叫んだ。
「〈華袈裟〉!!」
その場に大きな花が召喚される。
よく見るとその花の花びらは刃物になっていた。
その花は俺に向かって突っ込んでくる。
「あっ……ぶねぇ!」
ギリギリで身を翻す。
「アジロを生贄に不意打ちかよ……」
「生贄……?それは少し違うな……」
アジロは既に拘束から抜け出していた。
アジロの横には、金髪もじゃもじゃで長身の女性が立っていた。
「エリンチームの残り2人か……1人は植物、いや、『花魔法使い』、もう1人は俺と同じ『植物使役』か。」
「まぁ……そんなとこだ。」
エリンが居ないのが気がかりだ……早い所金髪もじゃもじゃの女を封じて、アジロともう1人の茶髪を拘束したい所である。
「まあエリンが居ないならどうって事はない……ちゃっちゃと済ませよう。精霊よ!奴らをやっちまうぞ!」
俺の周りを守っていたツタが、一斉にアジロに飛びかかる。
「〈華袈裟〉!」
ツタの前にさっきの魔法の花が立ちはだかる。
俺はこれに乗じ金髪の女に向かって走る。
「させるかよ……毒液魔法!!〈腐毒弾〉!」
無数の毒液の弾がこっちに飛んでくる。
ただ、この魔法は躱すのも簡単で、大した驚異ではない。
「オラッ!」
俺は金髪の女のみぞおちに蹴り込む。
金髪の女はぶっ倒れる。気絶したようだ。
「さぁ……あとはもう1回拘束するだけだな?」
「舐めんな……!こっちも本気だ!〈毒鎌鼬〉!!」
来た、これがアジロの本領だ。
無数の毒の斬撃が飛んでくる。
「精霊よ!私を守れ!」
ツタの束が俺の前に現れる。
「そんなんで守りきれる程……俺の魔法はヤワじゃない!」
ブチブチとツタが切り裂かれる音がする。
「……グ……何?!」
同時に何個もの鎌鼬が貫通し、俺の体に突き刺さる。
「その毒……超即効性だ……すぐにぶっ倒れるぞ。」
「これはまずい!に、逃げるしかないか……」
できるだけ森の奥に逃げる。
「ナシメ、メジーネを起こせ。エリンが言ってた通りアイツは俺一人で十分だ。」
……後ろでアジロが追ってくる音がする。
今は機を窺うしかない……。
「おいネビロ……随分逃げるのが好きなんだね……?鬼ごっことか好きそう。」
「うるせぇよ……」
アイツの魔法は大木すら貫通する、逃げると言ってもそんなに長くは持たない。
ここらで腹ァ括るか。
「!顔色が随分良いじゃねぇか……いや、そんな訳ない!一発当たっただけでも致命的なはず!」
「そろそろ種明かししてやろうか?」
俺は胃の中のものを吐き出す。
「うぇっ!き、汚ぇ……って、お前何を吐き出しやがった!」
「このテストは服以外持ち込み禁止だが……胃の中までは調べられ無かったようだな!」
「ソイツは毒消し草!まさか……」
「あぁ、この毒消し草はただの毒消し草じゃない。根っこで毒を吸収し、解毒する。レティとウィルフに感謝しないとな。俺じゃこんな作戦思いつかなかった。」
最初にウィルフからこの作戦を聞いた時は正気じゃないと思った。
だが……
「作戦大成功!そう!胃の中に種入れて、成長魔法使って貰ってたんだよ!」
「馬鹿かお前……胃の中パンパンどころか……内蔵全体に根っこ張り巡らされるんだぞ……?普通ならすぐ吐き出しちまうだろ……」
「あぁ、だから葉っぱの部分吐き出したんだよ。なぁ、かかってこいよ。種は明かしてやったぜ?」
「舐めんな……!!〈毒鎌鼬〉!!」
無数の鎌鼬が身体中を切りつける。
それでも尚、進む。
「舐めてんのは……テメェとエリンだ!俺を倒したかったらもう百人呼んでこい!」
「ネビロォ!!」
「精霊!捕らえろ!!」
バチッ……ツタがアジロの体を締め付ける。
「さぁ、聞きたいことは山ほどあるが……」
「エリンはどこにいる?」




