エリンを出し抜け!
訓練開始から1ヶ月と数日───
「ほら!今日からあと10日でチーム対抗テスト!ラストスパートかけるよ!」
チーム強化月間に入ってから半月以上が経過した。
訓練開始から1ヶ月以上経ち、かなりチームにも馴染めてきた。
ただ、問題もある。
「作戦会議!始めるよ!レティも来て!」
ここ数日は、一通り訓練メニューを終えるとヘロヘロの状態でテストの作戦会議に入る。
「昨日話した通り、エリンチームは……」
会議は1番経験豊富なアガリアを中心として行う。
私は話を振られた時だけ話す事に徹する。
「ソイツの対策にレティを前に出したいんだけど、胞子系の解析とかって行ける?」
「えっ!あ……えっと……む、無理かも……」
「そ、そっか、ごめんね?具体的にはどの程度まで解析できるかな?」
……さっき言った問題のひとつはレティだ。
なんというか凄く暗い。
分かりきっていた事だが、会議中にその卑屈さを発揮されると、話を回さない訳にも行かない故に空気が凄くキツイ。
「え、えっと、まぁいいよ!レティには収集した植物を運んで貰うし、ネビロが戦闘になった時はそのサポートにも入って貰うから!」
「そ、それより!要注意人物について教えてくださいよ!」
「うん、要注意人物ね!とりあえず、エリンチームのメンバーから紹介しようか。」
「エリンチームはエリン含め4人。中でも、特筆すべきは小柄で赤毛の男の子、2年目の「アジロ」。」
小柄で赤毛、朝全員で集まる時に、見覚えがあるようなないような、と言った感じだ。
「スキルは確か『毒解析』。かなり専門的なスキルだけど、問題はそれ以外にある。」
「あぁ、アイツの毒魔法はここじゃ有名だ。前回エリンチームが優勝できたのはアイツが最前線に出てきてほとんどのチームを泥沼の戦闘に引きずり込んだからだ。」
毒魔法……あまり聞かない魔法だ。
というのも、毒魔法を扱うには調合なんかの知識が不可欠で、一般的な魔法とは一線を画す難易度だからだ。
「エリンチームは攻めの姿勢を崩さない。植物の群生地を探せば確実に鉢合わせる。」
「鉢合わせたとして、対処は?」
「うーん、こっちの基本戦術として、出会って速攻でネビロの魔法での拘束がある。でも、植物によるものだから、あっち側からも解きやすいのが難点なんだよねぇ〜。」
「まぁ拘束出来ようが出来まいが、対処は俺だけで完結させるよ。」
ネビロの戦闘能力には、正直疑問が残る。
ネビロの訓練は見たことがあるが、草に話しかけてるネビロの周りでピカピカ光るツタがうにょうにょしてて、なんだかあまり実戦向きな面を見れていない。
まぁそれは良いとしても、
「敵はエリンチームだけじゃない。」
「ウィルフ、多分お前と因縁のある奴が出てくるぞ。」
「フォルネチームの「ラーム」か……」
私が最初自己紹介したときに突っかかってきた憎たらしい黒髪短髪の荒くれ者のような風貌の男だ。
「ラームに限らず、フォルネチームはほとんど全員チンピラみたいなチームだ。」
「じゃあラームと……その、フォルネ?の説明をお願い出来ますか?」
「うん、フォルネは『植物魔法使い』で、まぁ戦闘能力に関しては特筆すべき事は無いと思う。問題はラームね……」
「ラーム元々、戦士志望のかなり肉体派な男だった。俺とほぼ同時期にここに入ったから、かなり知った仲だけど、正面から闘うとなると、かなり厄介だと思う。」
ラームは、ロザリオファングの一件で少し戦っている所を見たことがある。
魔法はまぁ、人並み程度だったが、山の中での戦闘となると、主に立ち回りが気になる所ではある。
「ラームの対応はウィルフに任せたいんだけど、いける?」
「借りもあるんで、返してやりますよ。それより、僕が気になるのはエリンの対策ですよ。結局どうするんです?」
「正直、エリンとフォルネで潰しあってくれるのが一番ありがたいんだけど、十中八九ネビロが標的になるんだよね。ネビロ、アジロとエリン、2人同時に相手した時、勝率はどれくらいあると思う?」
ネビロは顔をしかめて言った。
「アジロを早い段階で拘束できても、一割かな。」
一割、2人同時に相手して、無理難題である事は分かっているが、正直五分五分くらいは欲しい。
……私の頭の中で、このテストのルールが反芻する。
4.他生徒に対する妨害行為は殺害以外は許可される
ハッと、思いついた。
「アガリアさん、逆にもっと根本的に作戦をガチガチに固めるっていうのはどうですか?」
「何か策があるの?」
「前回の収集する植物ってどんなのでした?」
アガリアは難しそうな顔をしてこう答えた。
「うーん、名前までは忘れちゃったけど、ツルみたいな植物だったよ。」
「……これはただの提案です。それを前提として聞いてください。」
テスト当日───
「皆、作戦は頭に入ってるな?」
「うん!これで失敗したら全部ウィルフのせいってことで!」
「何でですか!」
「レティ、今日は気張って!」
「あっ、うぅ……はいっ……」
エリンがネビロに近寄ってくる。
「ネビロ、今日は敵同士よろしく。」
エリンはネビロに握手を求める。
ネビロは差し出された手をガシッと力強くとる。
「楽しみだよ、エリン先輩と戦れるなんて。」
「……それで……後ろにいるゴツい奴らは?」
エリンは私とアガリア、レティがボディラインが隠れるくらいの大きさのゴツい鎧をきているのに目をやった。
「ネビロ、お前仲間を盾にする気?」
「さぁ、どうだろうね」
ネビロは最高のおとぼけ顔でそう言った。
「諸君!こっちに寄ってきたまえ!」
壇上のドストフはそう言った。
「今から集める植物を発表する!集める植物は「ハクチョウゼンマイ」という薬草だ!」
私は心の中でガッツポーズを決めた。
「今から一斉にミルネア山に転送する!全員その台に立て!」
前回が台に立ち終える。
周りが光に包まれる。
シュン……
「全員いるか!」
「レティもいる!大丈夫!」
ピィーーーッ!
テスト開始のホイッスルが鳴った。




