鬼殲騎士団、ここに。
─── 王宮 ───
王座に座る男の前に、三人の男女が跪く。
「招集できたのは三人だけか……」
王座の横に立っている男はそれに対してこう言った。
「いえ、陛下。四人でございます。」
陛下と呼ばれた、王と思わしき男は周りを見渡す。
だが、もう一人いるはずの人陰は見当たらない。
「はて……?」
疑問に思っていると、向こうの扉が開く。
扉から、赤い髪の、いかにも魔法使いらしい帽子をかぶった女が入ってきた。
「すっ、すみません陛下!お、遅れてしまいました……」
女は慌ててそう言う。
王はもう一度口を開く。
「はて……見ぬ顔だが、「鬼殲騎士団」のメンバーか?」
「い、いえっ、私は...皆さんに訓練してもらってる「ロコ」って...言います。」
女は常に慌てた様子だ。
王国最強のパーティ「鬼殲騎士団」。
現在のメンバーは7名であり、ここに集まっているのは、その内の3名と、その見習い1人である。
王座の前に跪く男が、口を開く。
「彼女は見習いの「ロコ・モーティ」です。精神的には未熟な部分が目立ちますが、役に立ちます。直に騎士団に加入予定なので、以後お見知り置きを。」
「ふむ、良いだろう。アイン、作戦指揮はお前がとれ。」
「はっ!」
アインと呼ばれた、長い金髪に鎧を纏った男は、力強く返事を返した。
王は手を伸ばし、命令を告げた。
「では、早速場所の特定作業にかかれ。」
全員が声を揃え応えた。
「御意」
「王も、焦ってやがるな」
「やめろハーレー。ここは王宮だ、誰が聞いているかも分からん。」
先程の4人は、王宮の別室に来ていた。
ハーレー、そう呼ばれた白い長髪の女は、壁にもたれかかり自分の手にする古い型のリボルバーを弄る。
「団長も、もう少しリラックスしたら?鎧脱ぎなよ」
「気を抜くな、場所が分かればすぐにでも出発する。」
団長、もといアインは壁に映し出された映像魔法を凝視する。
「団長、今回の相手は魔族、しかもA級パーティを2つも完全壊滅、もうひとつのパーティも1人を除いて皆殺しにしてますよ。かなり手強いのでは?」
アインの後ろに立つ、銀髪でモノクルをかけた、いかにもインテリっぼい男は、半笑いでそう言った。
「そうだろうな。しかも、今回はロコ含め4人での戦闘。少なくとももう一人、プフェーアトでもいれば、話は違ったんだが。」
「まぁ、魔族もそんなすぐに見つかるものじゃ無いでしょう?ゆっくり待てばいいんですよ。座ってください。」
銀髪の男は椅子を差し出す。
「……すまんなフォルクス。」
アインは椅子に腰掛ける。
「ゆっくり、待てばいいんですよ。」
「ウィルフー、起きて」
外では小鳥がさえずり、暑い夏の太陽が照りつける。
昨日初めて寝たベッドから目を覚ます。
だが、まだ昨日のつかれがとれていない。
「うーん……今日休日じゃないっすかァ……」
「……ウィルフ寝覚め悪いタイプなんだ。」
下のベッドから降り、着替えをしているネビロが話しかけてくる。
嫌々私も起き上がる。
下からネビロが私の着替えを投げ渡してくる。
「ほら、早く着替えて。クエスト行くでしょ?」
手早く身支度をすませる。
シャツの上からヒンヤリする生地の上着、内ポケットにはいつものハーモニカをしのばせる。
ふたりで廊下に出ると、すでにアガリアとレティが待っていた。
「前から思ってたんですけど、2人とも早くないですか?」
「ウィルフは朝はのろまだよね。いっつも眠そうにしてる。」
自覚はない。
しかし、前の世界にいた時より、大体2時間ほど睡眠時間が減っているのは確かだ。
4人で外に出て歩き出す。
訓練所の許可は、平日の訓練時間以外は必要ない。
ふと、ある疑問が思い浮かぶ。
「というか、王都では魔族が出たって外出禁止じゃなかったっけ。」
「外出禁止ではないよ。うちの訓練所は警戒してるだけ。ただ、結構ガバガバだから大丈夫。」
それでも、討伐されるまでは、特にクエストなんかは自粛すべきでは?と思った。
これまで、上級以上の魔物に出会ったことが無い。
上級以上の魔物がいる場所いうのは、大抵かなりの危険地帯とされる山奥や、空気中の魔力が高濃度である場所かのどちらかである。
ましてや、魔物より高位の魔族が人里で発生するなど、まずありえない。
「……ホントに大丈夫?」
「大丈夫さ。なんてったって、あの「鬼殲騎士団」が対応に当たってるからね。」
「鬼殲騎士団だって!?」
鬼殲騎士団、キャリッジ。
それは私達の王国における最高戦力であり、あの、100年前にかの魔王を討伐した「一世紀騎士団」の遺志を継ぐ、国王の最も信頼するパーティだ。
「鬼殲騎士団って、あの「南の剣聖」の?」
「そう。「南の剣聖フォッカー・アインデッカー」をリーダーとした、7人の英傑達。この国唯一のS級パーティ。」
鬼殲騎士団のメンバーは、全員それぞれが名を馳せていて南の剣聖を筆頭に、「白撃のハーレー」「サンタ・ムエルテ・フォルクス」など、1人で誇張でなく通常の1000倍以上の成果を上げる者たちばかり。
そんな化け物達が対処しているのなら、案ずることはないだろう。
ギルドに到着する。
「受付さん、いつものクエスト頼める?」
「わかりましたよ。」
みんな準備が終わり、テレポーターに乗る。
テレポーターが動き出し、周りが光に包まれる。
……なんだろう、この拭いきれない嫌な予感は




