ステーキ美味しかった
「大丈夫?ネビロ?」
ネビロに肩を貸して、私はそう言った。
「くそ……まだふらつく」
店の裏にくると、ベンチがあった。
そこに二人で腰を下ろして、ネビロを落ち着かせる。
「災難だったね」
「あぁ、まじでな。」
ネビロの背中をさする。
触ってみて初めて気がついたが、ネビロは身体をかなり鍛えてるようだ。
「……ウィルフ、酔っ払いの戯言として聞き流してもらってもいいんだが、一つ質問いいか?」
「何?」
「……俺たちといて楽しいか?」
耳に入った時、一瞬体が硬直した。
こんなことを言われるなんて、想像もしていなかった。
「どうも俺には、ウィルフはいつも他人行儀でいる様に見えてしまう。」
言葉が詰まる。
ただでさえ、親友のシア以外の友達関係には慣れていないのだ。
ここは、思ってる事を率直に伝えるべきだ。
「……楽しくない訳じゃないよ。ただ、僕あんま友達いなかったから、慣れてないだけだよ。それに、ネビロは一応先輩だからさ。」
「……そっか」
微妙な空気感だ。
返答を間違えただろうか……ここは、相手に対しての真剣な質問で話題をそらそう。
神経な質問なら、話を逸らしていると悟られない……と思う。
「……僕もネビロに聞きたかった事があるんだ。」
「おぉ、何?」
「……父親が嫌いなの?」
初めてチームの皆でクエストに行った時、蝶々の魔物の鱗粉でネビロ錯乱して、口走った事を覚えている。
「……いつボロ出したっけ」
「初めて皆でクエスト受けた時にちょっとね。」
私も、両親に対して、前の世界でもいい思い出は無い。
その点では、シンパシーもある。
「……俺の親父は神父だったんだ。」
重苦しい口調で話し始める。
「とは言っても、とても信心深いとはいえない、ただそれに向いてたスキルだったからなっただけ神父。そんなでも、居た教会では一番偉くて、それなりに立場もあった。」
ネビロは、ぐらぐらする頭をグッと手で抑えながら続けた。
「俺が14歳の頃だった。教会に毎日通っていた信心深い信者が、ある日を境にぱたりと来なくなった。俺は父に尋ねた。なぜ来なくなったか。」
「……なんでだったんですか?」
「自殺だよ。」
「?!」
自殺、前の世界じゃ聞き馴染みのある言葉だったが、こっちに来てからは一度も聞いていなかった。
「自分で自分を殺すこと。自殺をするのは哲学者だけ、という言葉もあるくらい、一般人にとっては滅多にないことだ。」
「……理由はなんだったんですか?」
「そこが問題だった。俺はある日、教会に務めている他の人達の話を聞いてしまった。「シリアンが自殺した。遂に自殺しちまった。」「これでもうやつからのお布施は無くなる。次の相手を探さねば。」」
この2度目の人生で、初めて聞いた自殺という言葉。
凄く嫌な予感がする。
「父を問い詰めたよ。そうしたら、ヤツが信者からお布施と言って金を巻き上げて、自殺にまで追い込んだ事が分かった。」
「……」
「俺は家を飛び出したよ。そこから3ヶ月は母方の祖父母の家に転がり込んで、ここの訓練所に入るまでは痛苦の生活を送ってた。」
思っていたよりずっとヘビーな話が飛んできた。
空気がさらに暗くなる。
「……僕もあまり両親は好きじゃない。もう両方死んじゃってるけど。」
「そうなのか?ウィルフの話も聞かせてよ。」
「うーん、大人になったらね。ここはちょっと空気が暗すぎる。」
「確かに。」
私はベンチから立ち上がる。
ネビロに手を差し出す。
「ほら、戻ろう。酔いは覚めたでしょ?」
「……あぁ。」
「おお!ウィルフさんとネビロさんが戻ってきたッスよ!」
シャックが元気よさそうにはしゃぎながら言った。
「ほら!ネビロさんいつもの一発ギャグお願いしますよ!」
「えぇ〜しゃーなしだぞ?」
ネビロって飲み会じゃそういうキャラだったのか、と思った。
「いくぞ〜……はい!ひょっこりはん!」
「ギャハハ!!」
一同大爆笑。
というかひょっこりはんそのまんまだ。
まさか私以外にも転生者が?!
それとも、収斂進化と言うやつだろうか……
「ほらウィルフ!飲みな!」
「あーっ、炭酸きちーwアルコールより炭酸がきちーわw」
「まぁそれアルコール入ってないからね。てかウィルフそんな事言うキャラじゃないでしょ。」
どんちゃん騒ぎは朝まで続いた。
「……ウィルフ、起きてる?」
「んーっ、起きてる。」
もう夜が明けて、起きているのはネビロとオセさんだけになった。
「あ、僕お会計済ませてきますので、2人は他の人達起こしてあげて下さい。」
「あ、はい。」
「ほんじゃウィルフ、また……明日か。」
「うん。じゃあ皆さんまた明日ー。」
竜車に乗り込む私をみんなで見送ってくれた。
「いやー、遊び人の真逆みたいなウィルフが朝帰りとは。」
シアは、朝ごはんの卵焼きみたいな料理を頬張りながら、そう言った。
「……なんか最近お前と話してる時ずっとなんか食ってる気がする。」
「そりゃお前、この施設でやること、夜帰ってきて飯食って、風呂はいって寝て、朝ごはん食って出発だろ?俺もあんま変わんねぇけどよ。」
まぁ、忙しくはあるがこの生活も楽しい。
あー、ステーキ美味しかったな




