割と皆恋愛してる
「ラームチキンとってぇ〜」
「ウィルフエスカルゴ食べれる?」
「レティちゃん!イッキイッキ!」
「えっ……えぇ……」
騒がしさはどんどん増してくる。
私は今、テストの打ち上げ、いわゆる飲み会に来ていた。
「オセさん追加で生ハム頼んで」
「後でまとめて注文しますから。まず次のドリンク決めてください。」
「だってさ。ウィルフ、追加で頼みたいものないの?」
アガリアに聞かれた私はメニュー表を見る。
フィッシュアンドチップス、生ハムにチチャロン。
前の世界にもあった食べ物もあれば、私は慣れているが、異世界にしかない食べ物もある。
「えっと、」
1つのメニューに目が行く。
「これ……「ステーキ」って」
「おっ、気づいちゃいましたか〜そう、「牛肉」、食べれるよ」
こんな居酒屋みたいなところに高級品があるなんて!
「……食べてぇ」
「頼んじゃいなよ〜今日は羽目外そ?」
今からでもよだれが止まらない。
何せ、15年ぶりの牛肉だ。
「じゃあ店員さん呼ぶから頼みたいもの言ってくださいね」 「はーい」
「ラーム何食べる?」
「ココナッツシュリンプ。てかオセさん!俺らも酒飲みたいんだけど!頼んで!」
「僕は未成年飲酒に加担するつもりはないよ。」
「じゃあエリン!頼んでくれ!」
「えー、もっと酔ったらね。」
店員さんが来た。
「ご注文お伺いします」
「えっと、飲み物は、ビール2杯と、赤ワインを1杯。あと、リンゴソーダ3杯とジンジャーエール5杯、レモンソーダ2杯で。」
「かしこまりました。」
「ココナッツシュリンプとシュニッツェルを2皿ずつと、あとは……」
「生ハム!」
1人だけ高いものを頼むと、なんだか申し訳無くなる。
「あと……ステーキ……いいですか?」
「1皿ずつでお間違いないですか?」
「大丈夫です」
ステーキ……ステーキ食べたい……
「ウィルフリードてめぇ高ぇもん頼みやがったなこんにゃろ」
「いいじゃーんウィルフは勝ったのに牛肉食べらんないんだから。先輩として奢ったりな。」
「たく……どうせ今日のクエストの分から出るんだろ?」
「ねぇネビロ?お酒飲まないのぉ?」
「飲むわけないでしょ。未成年に飲酒進めないで。」
「おいエリン……節度ってもんをな……」
アジロが悪ノリするエリンを静止する。
「いいじゃーん、なんなら口移しで飲ましたげよっかぁ?」
「……こんなやつとよくサシで飲みに行けるなアジロ」
「ホント毎回大変だよ……」
エリンはまだ1杯しか飲んでないのに悪酔いしている。
「ええ〜っ……」
「ネビロ……シュニッツェル好きなの?」
「うん。地元に揚げ物の美味い店があったんだ。」
「へぇ〜」
そんな話をしていると、飲み物が到着する。
「……エリン、2杯も飲むのか?1杯でこんなヒーヒー言ってるのに。」
「ヒーヒー言ってないもん!……それとも、アジロがヒーヒー言わせてくれるのかにゃ?」
「……今俺彼女いんだよ……まじ勘弁」
ネビロが飲んでいたジンジャーエールをブッと吹き出す。
「えっ!おま、彼女いんの!?」
「えっ知らなかったの?半年くらい前からいるけど。」
「へぇ〜……今度惚気聞かせてよ。」
ネビロが茶化す。
ネビロは到着したシュニッツェルを口に運ぶ。
「アジロは串焼き?」
「そう……こいつに唐辛子をぶっかけて食べるのが好きなんだ。」
「辛いの好きだね〜。アジロちょっと偏食の傾向あるよね」
アジロは串焼きに粉唐辛子をぶっかけながら答えた。
「辛いのと……毒しか喰わない。」
「あの毒、どういう理由で食えてんの?」
「腹の中で解毒魔法使ってる。なんて言うんだろ、あの人に食われる事を前提としてない、尖った味が好き。」
ネビロは、アジロがエリンと同じ、完全無詠唱魔術で解毒魔法を発動している事に気がついた。
エリンは、怪訝な顔で2人を交互に見ていた。
「ねぇ、なんで間におんにゃのこいるのに男二人でいちゃついてんの?」
「いちゃついてないしお前は女じゃない。女なら俺の彼女が二人で飲みに行くことを許可しない。」
「……ねぇ、さすがに女ではあるとおもうんだけど……」
エリンはジト目でビールを煽った。
「んー……えいっ」
エリンはネビロの口にビールの飲み口を押し付け、傾けた。
「んっ!」
「あっ!お前やりやがった!」
「えへへ〜、飲め飲め」
ネビロの喉にゴポゴポとビールが流れ込んでくる。
「ちょっとエリン!なにやってんの!」
アガリアが気づき、止めに入る。
結局ネビロは、まるまる1杯飲んでしまった。
「何し……エリン先輩、まじでダメなやつだよコレ……」
その時私は到着したステーキに夢中だった。
「お、美味しい……」
その肉は、前の世界の日本でもなかなか食べられないくらいの、超良いヤツだった。
「和牛……は、前の世界でも食べたことなかったけど、コレ絶対アレだ、アメリカのBBQとかの、美味そうなヤツだ。」
横でネビロが酔っ払ってるとも知らずに、私はこの「美味しさの塊」を頬張るのに夢中になっていた。
「あっという間に最後の一口……」
ぱくり。
ああ、終わってしまった。
いや、まだ終わりじゃない。
今日はコレでおなかいっぱいにする。そう決めた。
「お、オセさん……す、ステーキをもういっこ……」
「……ウィルフ君ですよね?なんか目がおかしいです。大丈夫ですか?」
そんなことはお構い無し。
今はステーキが食べたい。
「す、ステーキ……」
「……落ち着いて?深呼吸。」
深く息を吸う。
10秒ほどかけて息を吐く。
スゥーーーっ
「やっぱりステーキが食べたい!!」
「落ち着けぃ!」
「……落ち着きましたか?」
「……はい」
「……大丈夫ッスか?」
ステーキとは恐ろしい食べ物だ。
いつも我ながら冷静沈着な私をあそこまで執着させるとは。
気がつくと、知らない人達に囲まれていた。
「えっと、オセさんと……そちらの方は?」
「フォルネチームの「シャック」ッス!1年目なんで敬語は大丈夫ッスよ」
金髪の、ピアスだらけでまさにラームの仲間って感じの人だ。
「ゆっくり飲みましょ。ココナッツシュリンプ、食べますか?」
「あっ、いただきます。というか、オセさんってフォルネチームなんですか?」
オセは、脇からぴょこっと出ているシャックを撫でながらこういった。
「そうですよ。知りませんでした?」
「いやっ……なんというか、1人だけ毛色が違かったので。」
「あはは。確かに。」
「なんというか、すごくまともで。チームリーダーじゃないんですか?」
「1年前までは、僕がリーダーでした。ホント、僕が卒業したら、他メンバーはどうするつもりなんでしょうね?」
口ぶりから、オセが4年目であることが分かる。
一人称が僕。私とは違う、語尾が上がるタイプの僕だ。
親近感がある。
「……僕気になってたことがあるんですけど」
「なんでしょう?」
「……フォルネ先輩とラーム先輩って付き合ってるんですか?」
私はテストまで、共に訓練する仲間たちのことをほとんど知らなかった。
恋愛事情なんて、全く知らない。
「おっ、それ聞いちゃいます?」
「ええ、付き合ってますよ。かなり前から。」
おおっ!と思った。
恋愛の事に興味が無い男など、居ないだろう。
「お似合いですもんね。僕、人の恋愛事情とかなにも知らなくて……」
「あの2人はかなりロマンチックな関係ですよ。あの訓練所でもかなり有名な話です。」
実質30歳とはいえど、二度とも15歳までしか生きていないのだ。
マセガキにとって、ヤンキーカップルの話は聞いていて面白い。
と、ここでアガリアに話しかけられる。
「ちょっとウィルフ、ネビロの酔い覚ましに付き合って上げてくんない?」
「酔い覚まし?」
「エリンがネビロにビール飲ませちゃったんだよね。」
なにやってんだ……という気持ちは口には出さなかった。
「分かりました」
「この店の裏に座れる場所あるからさ、ちょっと休ませてあげて」
私はネビロを連れて一旦店を出た。




