最後はただの鬱憤晴らし
テスト開始から1時間20分───
「おい!起きろアジロ!」
「……ん?」
アジロが目を覚ますと、目の前には顔面血まみれのエリンがいた。
「……エリン、今どうなってる?」
「ウィルフって子に一杯食わされてさ、見りゃわかると思うけど、辺り一面火の海。」
アジロの意識が段々しっかりしてくる。
アジロはネビロに負けた事を思い出した。
「……ネビロめ……そうだあの後、質問攻めしてきやがったから、だんまり決め込んでたら半殺しにされて木から吊るされたんだった……」
「ネビロってそんなことするタイプじゃないでしょ」
「酷いぜアイツ、ツタで鞭打ちにしてくるんだ。てかエリン、早く拘束解いてくれ。」
エリンの魔法が発動し、葉っぱが召喚される。
葉っぱがアジロを拘束するツタを切り裂き、ぼすん、と落っこちる。
「アジロ、ナシメとメジーネは?」
ナシメとメジーネは、エリンチームの残りの2人だ。
「さぁ、俺が助け出されて無かった以上……逃げ仰せたって訳じゃなさそうだな……」
「えー……じゃあ探さなきゃじゃん……」
エリンとアジロは二手に別れる。
「アジロ!見つかったか?」
「いねぇ……」
アジロがそう呟くと、背後から物音がする。
「誰だ!」
後ろから現れたのは、ラームとそのチームリーダーのフォルネだった。
「フォルネ!言っておくけど今は争ってる暇じゃないぞ!このままじゃ私のかわいい後輩がやけ死んじゃう!」
「それについて話がある。」
ラームは話し出す。
「さっきフォルネが、気絶してる他勢力のメンバーを回収してるネビロを見た。多分森が火の海になるのはアイツらの作戦通りなんだ。だから、アンタの仲間ももう回収されたんだと思う。」
「ふーん……なら協力する?」
エリンは少し挑発的な態度でそういった。
「……つくづく嫌味な女だよ君は。でも、どの道策がいる。」
ここでアジロが手を挙げる。
「簡単な作戦ならある。アイツらに通じるからどうかは分からないけど……」
「……聞こうか。」
テスト開始から1時間40分───
「こいつで最後だよね?」
「人数的にも、そうだと思うけど。」
私は、山の北部でネビロと落ち合っていた。
「これで全員の籠を破壊した。」
「……まさか、エリンのもか?」
「もちろん。ただ、ラームのヤツが壊れたか確認してないし、ラームのチームリーダーのフォルネって人のも残ってるかな。」
だが、こっちにはアガリアが集めた分の薬草が残っている。
……念の為。
「ネビロは、アガリア達の所に戻って、2人を守ってくれ。」
「……ウィルフ」
「分かってる。」
ネビロにこの……名前は分からないが気絶してるこの人を移動させてもらう。
私は、少し南へ移動する。
正確な時間は分からないが、恐らく残り30分は切っているはずだ。時間稼ぎに徹する。
「今回の敗因は、ネビロを甘く見たことかな。」
エリンは飄々と話す。
「最初に私がネビロの相手をしてたら……勝機はあった。その点で言えば、敗因は「勝ちに行ったこと」かな。アジロを狩りに行かせて、同じ目的で来た君とバッティングするのを危惧したんだ、ウィルフ君。」
「アジロさんの事も甘く見てたんだ。」
私の前に立つエリンの目付きが鋭くなる。
「ウィルフくぅん……俺はずっとお前だけを狙ってるぜ?だけどこの女がよ、「私が先にやる!」って引かなくてよ。」
左後ろに立つラームは、満身創痍そうな格好でそう言った。
「ラーム先輩……あの木から脱出するのに随分体力を使いましたね。」
「このクソ女が手伝ってくれればもっとラクだったかな。」
「ねぇ、今は皆協力してんの。嫌味はヤメテ。」
右後ろに立つフォルネは、悪態をついた。
「……こんな総出で僕一人に何の用?アジロさん……だよね?貴方に聞いたら答えてくれますか?」
「まぁ……なんというか……俺は別にどうでもいいんだ……籠は破壊され、薬草は全焼……もう負けは決まったようなもんだからな。でもな、ウチのボスがお前にお怒りなんだと……」
「ああ、悪いねウィルフ君。今日は不運続きでさ。決着、付けさせてもらうよ?」
両者、魔法の構えをとる。
「〈穿爆砲〉!!」
私の中で最速の魔法。
それをエリンはひらりと躱す。
エリンの背中から二本のツタが伸びる。
「言っとくけど私のツタは」
「よく燃えるよ」
二本のツタは私をキツく縛り付ける。
「そうだね、ここは思いっきり!火炎魔法!」
エリンが火炎魔法を発動する。
「〈火炎球〉!!」
突如、火炎が巻き上がり、私の体を包み込む。
「グッ!グワァぁぁッ!!」
周囲の炎と同化し、更に火力が高くなっていく。
……あれ?
これ……私死ぬのでは……
「おい!こいつ鎧ん中でなんか燃えてんぞ!」
「えぇ?!知らなかったもんそんな事!」
「死んだら洒落になんねぇぞ!」
「とりあえず鎧脱がせて!」
現場は大慌て。
鎧の中で育ててた薬草に引火して全身大やけどは免れない。
そんな中……
ピィィィーーーーーーーーッ!!
テスト終了のホイッスルが鳴った。
辺り一面がワープの光に包まれる。
「よーし、戻ってきたね。」
目の前にいたのは、騎士のアルカンだった。
「いやー映像の魔法で見てたよぉ〜。今回は盛り上がったね!」
「アホですかアルカンさん!早くウィルフに応急処置を!
「えぇっ!最後の最後に何があったの?!最後の所見れてないのよ!」」
ウィルフは担架で運ばれていった。
閑話休題
─── アジロの提案 ───
ア「簡単な作戦ならある。アイツらに通じるからどうかは分からないけど……」
エ「……聞こうか。」
ア「俺には毒霧の魔法がある。毒霧は炎に引火すると、大爆発を起こす。だから、俺が捨て身でウィルフを道連れにするから、3人は探知に全力を出して、ネビロを探して欲しい。」
エ「……」
ア「そうすれば……可能性は低いけど、勝機はある。」
エ「……いや、ダメだ。」
ア「……何故?」
エ「私の気が済まない。」
ア「……は?」
エ「今日結局ネビロと戦えてないし!ウィルフにも油断しちゃうし!もうウィルフぶっ飛ばさないと気が済まないの!」
ア「はぁ……じゃあウィルフを倒すのはエリンでいいから、俺たち3人でネビロを探そう。」
ラ「いや、俺もウィルフをぶっ飛ばしたい。」
ア「……?」
ラ「エリン、お前がやられたら次は俺だ。仕留め損なうかもしれねぇ。これは絶対だ。」
ア「……あぁ、クソ。じゃあ、フォルネさん……でしたっけ?貴方に探知とか出来ます?」
フォ「出来ないし私はラームと一緒にいたい。」
ア「……その気持ちをグッと堪えて!」
フォ「むり」
ア「……まじでバカしかいねぇじゃん」
エ「やっぱ作戦ってクソだわ」




