第198話 護衛依頼の終わり
「――この腕と剣は持ち帰る。ギルドにも報告しないといけないし」
「そうか」
「――リョウガは何も思わないんだね」
マリスが悲しそうな目で俺を見た。
その意味は俺には分からない。
「お前の好きにすればいい」
俺はそれ以上何も言わず、マリスも答えることはなかった。
その後も護衛を続け、ある程度移動したところで野営をし、翌朝には再び出発した。
途中で魔物に襲われることもあったが、トルネイルを襲った魔獣たちに比べれば遥かに弱い。
問題なく対処しながら進み――
数日後、俺たちは無事アイランの町へ戻ってくることができた。
「君たちのおかげで我々は無事戻って来ることができた。本当に感謝しているよ」
モンドが俺を含めた護衛の冒険者たちへ礼を述べる。
俺としては仕事をこなしただけだがな。
「犠牲は決して少なくなかった。残念ながら命を落とした二人が戻らないことは、私としても悔やんでいる。だが彼らが最後まで務めを果たしてくれたからこそ、こうして我々は戻って来られた。その働きを決して忘れるつもりはない。二人の分も含め、報酬についてはギルドを通して必ず支払わせてもらう」
イザベラとクルスは静かに目を伏せた。
マリスも布に包んだネイラの右腕を抱えたまま俯いている。
「……ありがとう、ございます」
マリスが絞り出すような声で礼を口にした。
その後、モンドは依頼完了の用紙を俺を含めた全員へ手渡した。
「――皆様、父や私たちをお守りいただき、本当にありがとうございました」
エンデルからも礼を告げられる。
その視線が俺へ向けられた。
「その……リョウガ様とマリス様は、お似合いのコンビだと思ってます。またどこかでお二人に会えることを祈っています」
そう言ってエンデルが微笑んだ。
だが、きっと二人揃って会うことはもうないだろう。
「アルを助けていただき、本当にありがとうございました。妻については残念な結果になりましたが……それでも私たちが生き延びられたこと自体が奇跡のようなものです。感謝してもしきれません」
アルの父親も深々と頭を下げた。
アルもぺこりと頭を下げる。
肩に乗った子猿まで真似をするように頭を下げていた。
これで仕事は完了だ。
モンドたちと別れ、俺たちはその場を後にした。
「私は少し休んでからギルドへ戻るよ。あんたらはどうするんだい?」
「私は教会で祈りを捧げたいと思っています」
イザベラの問いかけにクルスが答える。
教会か。
俺とは縁のない場所だな。
いや、教会の世話になる人間を作ってきたと考えれば、むしろ縁があるとも言えるのか。
「俺はこのままガラルドへ戻る」
「そうかい。それじゃあこれでお別れだね。まぁ、冒険者をやってればまたどこかで会うこともあるだろうさ。じゃあね」
イザベラとクルスはそれぞれ別の方向へ歩いていく。
俺もガラルドへ向けて歩き始めた。
だが――
マリスは俺についてきていた。
「お前も来るのか?」
「行くよ」
一拍置き、マリスが続ける。
「一緒に依頼を受けたんだし」
「――そうか」
俺はそれ以上何も言わなかった。
そして俺たちはアイランの町を後にし、ガラルドの町へ向かった――。




