↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

198/202

第197話 利用価値

 丘の上で、白衣の男が月を眺めながら薄笑みを浮かべていた。


 男の指が眼鏡のレンズに触れる。それとほぼ同時に、足元の地面が低く揺れ始めた。


「戻りましたか」


 白衣の男が呟くと、地面の一部が大きく盛り上がった。


 土を押し退けながら姿を現したのは、節くれだった巨大なイモムシのような魔獣――グレートワーム。


 その巨体は、まるで天高く聳える月を目指すかのごとく伸び上がっていく。


 だが動きは途中で止まり、グレートワームは白衣の男を見下ろした。


「それで、目的の物は?」

『グェップ――』


 グレートワームがゲップのような音を発すると、その胴体の一部が不自然に膨れ上がった。


 浮かび上がった形は、まるで人間のようだ。


 人型の膨らみは、身体の中を這うように徐々に上へと移動していき――


『ゴボッ!』


 濁った音とともに、グレートワームの口から一人の女が吐き出された。


 地面へ投げ出された女には、右腕がない。


 先ほどまでリョウガと戦っていたネイラだった。


 もっとも、あれを戦いと呼べるかは怪しい。


 命を狙ったのはネイラだったが、相手であるリョウガの強さに圧倒され、ほとんど何もできないまま右腕を失ったのだから。


「目的の物は手に入りませんでしたか。まあ、構いません」


 倒れているネイラへ目を向けながら、白衣の男が顎を擦る。


「今はまだ、その時ではないということでしょう。必要になれば、改めて取りに行けばいい」


 男に焦りはなかった。


 むしろ今の状態では、手に入れても仕方がないと考えているような口ぶりだった。


「それよりも、今はこちらです」


 白衣の男がネイラの傍らへ歩み寄る。


「この女の怨嗟は使える」


 不敵な笑みが、その顔に浮かんだ。


「右腕を失ったようですが、そんなものはいくらでもつけて差し上げましょう」


 男の視線が、失われた右腕の付け根へ注がれる。


「さて、どんな腕が貴方には似合いますかね――」


 白衣の男の顔は、新しい玩具でも手に入れたかのように愉しげだった――。






◆◇◆


「兄貴はこのまま連れて行く」


 気絶したガロウを背負い、ウドンが言った。


「好きにしろ」


 別に俺に許可を求めたわけではないだろうが、なんとなく答えていた。


 一度は殺そうと思った相手だ。


 だが結局は気絶させた程度であり、今さらそれ以上どうこうする気にもなれなかった。


「――あんたがどう思ってるかは知らないが、あんたと出会ってからの兄貴は、すげぇ愉しそうだったんだ」


 ウドンは背負ったガロウへ一度目を向ける。


「まるで、大切なダチでも見つけたみたいにな」


 意味が分からない。


「気持ち悪いことを言うな」


 こんな戦闘狂とは、今後二度と関わりたくない。


「――それだけは覚えておいてくれよ」


 そう言い残し、ウドンはガロウを背負ったまま立ち去っていった。


「駄目ですよ、マリス! まだ動いちゃ!」

「でも、ネイラが――」


 クルスに止められているのはマリスだった。


 俺の貫手によって腹に風穴が開いたが、既にクルスの治療魔法が施され、その傷は塞がりつつある。


「それにしても、大した再生力ですね。普通なら、これほどの傷を魔法で治すのは難しいのですが……」


 クルスが感心したように呟く。

 幸い、致命傷となる臓器は外れていたらしい。


 それに治療魔法の効果は、治療を受ける人間の肉体的な強さにも左右されるようだ。


「リョウガ。あんたから何か言うことはないのかい?」


 イザベラが問いかけてきた。

 だが、何を言えばいいのかさっぱり思いつかない。


「何のことだ」

「何のことって……あんたが負わせた傷だろう? 女の子にあんな傷を負わせたんだからさぁ」

「俺が狙ったのはネイラだ。そいつが勝手に庇った結果だろう」

「いや、それにしたってさ」

「それともお前は、命を狙ってきた相手に何もせず、黙って殺されればよかったとでも言うのか?」

「そ、そうは言わないけどさ……」


 俺が答えると、イザベラが困ったように顔を引きつらせた。


「彼の言うとおりですよ」


 そこへモンドが話に加わってきた。


「ネイラがリョウガを狙ったのは事実です。命を狙ってきた相手を返り討ちにしたとしても、罪に問われることはありません。黙って殺されてやる理由などないでしょう」


 モンドの言うとおりだ。


 あの状況でネイラを庇ったマリスの行動の方が、俺には理解できない。


「――ですが、ネイラにも何か事情があったような気がします」


 そう口にしたエンデルの表情へ、暗い影が落ちる。


「事情があろうと、殺しに来ている相手に容赦なんてしていられない」

「そ、それは――」


 俺の言葉に、エンデルは返す言葉を失った。


 やがて、クルスの制止を振り切るようにマリスが立ち上がる。


「マリス、まだ安静にしていないと!」

「大丈夫。これぐらいなら、もう動けるから」


 そう答えたマリスが、ゆっくりと俺へ近づいてくる。


 その手には、ネイラが失った右腕と蛇腹剣が抱えられていた。


 その表情に怒りはなかった。


 悲しみとも違う。


 ただ、その瞳には確かな決意が宿っていた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。