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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第191話 もう一つの戦い

 銀線が巨大な魔獣の急所を切り裂く。


 重苦しい音と共に魔獣が倒れると土埃が舞い、半壊していた建物も巻き込まれるように崩れ落ちた。


「このあたりは片付いたか」


 パトリエが静かに息を吐く。


 美しい銀髪は切り裂いた魔獣の返り血で汚れ、鎧にも血と土がこびり付いていた。


 手で前髪を掻き上げると、乾きかけた血が飛び散る。


 視線を巡らせた。

 あたりには魔獣の死体と人の死体が転がっている。


 逃げ遅れた一般人の亡骸もあれば、魔獣に挑み命を落とした冒険者たちの姿もあった。


 犠牲はあまりにも多い。


 パトリエは強い。

 だが、一人でできることには限界がある。


 魔獣と戦いながら救助を行うのは不可能だ。

 だからこそ仲間たちも奮闘してくれた。

 それでも全員を守ることはできなかった。


 恐怖に耐えきれず逃げ出した冒険者もいる。

 しかし、それを責める気にはなれなかった。


 これほどの数の魔獣が一斉に押し寄せるなど、誰も想定していなかったのだから。


 想定外の事態に陥った時、冒険者の取る行動は大きく二つに分かれる。


 留まって戦うか。

 自らの命を優先して逃げるか。


 そしてパトリエは迷うことなく前者だった。


「まだ魔獣は残っている」


 そう呟き、次の戦場へ向かおうとした――その時だった。


 巨大な瓦礫がパトリエ目掛けて飛来する。

 空気を引き裂きながら迫る瓦礫。


 だがパトリエは微動だにしない。

 剣を一閃。


 瓦礫は真っ二つに割れ、そのまま左右の建物へ激突した。


 衝撃で建物が崩れ落ちる。


「噂通りの腕前なようだな」


 低い声が響いた。

 瓦礫の向こうから現れた男を見て、パトリエは目を細める。


 獅子の鬣を思わせる長い髪。

 筋骨隆々の体躯。

 そして猛獣のような鋭い眼光。


「誰だお前は」

「俺はラオズ。【怒涛の獅子】の頭だ」


 パトリエの誰何に答えるラオズ。

 その双眸はギラつき、獲物を前にした飢えた肉食獣を思わせた。


「怒涛の獅子――盗賊か」


 何かを思い出したようにパトリエが呟く。


「魔獣を仕向けたのはお前か」

「そうだと言ったらどうする?」

「斬るだけだ」


 即答だった。

 ラオズは一瞬呆けた後、豪快に笑い始める。


「ハハハハハッ! いいな! そういう奴は嫌いじゃねぇ!」


 肩を震わせながら笑うラオズ。

 その様子はまるで獲物を見つけた肉食獣だ。


「だが本当に噂通りかどうか、もう少し見せてもらおうか」


 ラオズが指を鳴らした。

 直後、周囲の瓦礫の陰から複数の魔獣が姿を現す。

 

 巨大な牙を持つオーガ。

 毒尾を持つマンティコア。

 そして上空には翼を広げるワイバーン。


 どれも一流の冒険者でも油断できない危険種ばかりだ。


「行け」


 ラオズの命令と共に魔獣たちが襲いかかる。


 だが――パトリエは冷静だった。


 まず急降下してきたワイバーン。

 雷を纏った剣が閃く。


 翼の付け根。


 飛行を支える急所を正確に貫かれたワイバーンは悲鳴を上げる暇もなく地面へ墜落した。


 続いてオーガ。

 振り下ろされた棍棒を最小限の動きで躱す。


 一歩踏み込み。

 剣が眼窩から脳へ到達した。

 オーガがその場に崩れ落ちる。


 最後のマンティコア。

 毒針を放とうとした瞬間には既に遅かった。


 尾の付け根を切断。

 返す刃で首を落とす。


 三体――全て一撃。

 それも無駄な動きは一切ない。


「ほぉ……」


 ラオズの口元が吊り上がる。

 興奮を隠しきれていない。


「なるほどな」


 更に周囲から現れた魔獣たちも、パトリエは次々と切り伏せていく。


 一撃。

 また一撃。


 急所を見抜き、最短の動きで命を刈り取る。

 その姿は戦士というより処刑人に近かった。


 やがて最後の魔獣が倒れる。

 静寂。


 パトリエは剣に付着した血を払った。


「終わりか?」

「ハハハハハッ!」


 ラオズが腹を抱えて笑った。


「最高だ!」


 歓喜の声だった。


「やっぱり噂は本当だったか!」


 ギラリと瞳が輝く。


「トルネイル最強の冒険者!」


 ラオズの全身から圧力が溢れ出す。


「そんな奴が護衛についてるって聞いた時からよぉ!」


 骨が軋む音が鳴った。

 ゴキリ。


 ゴキゴキゴキッ。

 ラオズの腕が膨張する。


 爪が伸びる。

 皮膚を突き破るように黄金色の毛並みが生え始めた。


「ずっと狩りたかったんだよ!」


 獣の腕。

 獣の脚。


 猛獣の筋肉が全身を覆っていく。


 人の姿が獣へと変貌していく様を見ながらも、パトリエは静かに剣を構えた。


「さぁ――」


 ラオズの口元が裂けるように吊り上がる。


「狩りの時間だ」


 黄金色の瞳がパトリエを捉えた――。

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