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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第190話 25パーセント

 ガロウはどうやら俺が死んだと思ったらしい。失礼な奴だ。

 俺は殺されるより、殺すほうが専門なんだがな。


 そういえば、こいつをまだ殺してなかったか。まぁ今は後回しでいい。


「おい。余裕ぶってる場合じゃねぇぞ」


 ガロウが忠告めいたことを口にする。

 改めて視線を向けると、ジャキがゆっくりと立ち上がっていた。


「グルルルルゥウウ……」


 唸り声を漏らしながら、濁った双眸で俺を睨みつけてくる。首を吹き飛ばされ、全身を刻まれてもまだ動ける程だ。そこそこしぶとい。


「リョウガ……あんたの体、一体どうなってるんだい?」


 イザベラが怪訝そうに聞いてきた。


「これも俺の力だ」

「力……スキルって事ですか? いや、しかしリョウガさんにスキルは無いはず。それなら魔法ですか!」


 クルスが一人で納得したように頷いている。

 別に肯定も否定もしない。勝手に勘違いしてくれるならその方が都合がいい。


「大体の力はわかったからな――これで25パーセントってところだ」

「すごいね……そんな魔法まであるんだ」


 イザベラが感心したように呟く。


 魔法やスキルが当たり前の世界だからこそ、こういう誤解が自然に成立する。余計な説明をしなくて済むのはありがたい。


「お前……俺とやった時も力隠してたってことかよ」

「さぁな」


 ガロウの不機嫌そうな声を軽く流しつつ、降り注いだ落雷をステップで躱した。


 雷光が地面を焼き、爆ぜた石片が周囲へ飛び散る。


「これを避けますか」

「お前は理解してないかもしれないが、狙いがわかりやすすぎるんだよ」


 白衣の男の顔から、初めて笑みが消えた。


「あの男は厄介ですね……片付けなさい、ジャキ」


 ジャキの口が大きく開く。

 内部で黒いエネルギーが収束し、漆黒の球体へと変化していく。


「おい! 今までで一番デカいぞ!」

「そうだな」


 黒球が放たれた。空気を灼きながら迫る漆黒の塊。周囲の景色が歪み、地面が触れただけで抉れていく。


 だが――俺は右手を振り抜いた。


 轟ッ、と衝撃音。

 黒球は真正面から弾き飛ばされ、そのまま上空へ打ち上がる。


 直後、夜空で黒い太陽のように炸裂した。

 爆音と熱風が吹き荒れ、雲が吹き飛ぶ。


「いくらデカくても、当たらないなら意味がないな」

「おま……マジかよ……」


 ガロウが呆然と呟く。

 こいつでも斬れた程度の代物だ。多少大きくなったところで、今の俺なら問題にならない。


「――ジャキ」


 白衣の男が静かに呼びかける。

 するとジャキが、自らの右腕を引き千切った。

 肉が裂け、骨が砕ける音が響く。


「何だ? どういうつもりだ?」


 ガロウが怪訝そうに眉を顰める。

 次の瞬間――地面へ投げ捨てられた腕が蠢いた。


 肉が膨れ、骨が伸び、小型のジャキへと変形していく。


「自分の分身を生んだってことかよ!」


 咆哮を上げながら、小型のジャキが突撃してきた。

 だがガロウが前に出る。


「こいつは引き受ける! お前はさっさと本体をやれ!」

「別に頼んでないんだがな」


 まぁ、勝手にやる分には止めない。


 俺はそのままジャキ本体へ向かって疾駆した。

 既に右腕は再生し始めている。


 だが――関係ない。


 ジャキが左腕で薙ぎ払おうとしてきた瞬間、俺の拳が先に叩き込まれた。


 轟音――左腕が肩口から粉砕され、黒い肉片が周囲へ飛び散る。


「グルゥウッ!?」

「お前、痛みに鈍感そうだな」


 言いながら、今度は手刀を振るう。

 斬撃一閃。

 ジャキの左脚が根元から切断され、巨体が大きく傾いた。


 片腕と片脚を失いながらも、ジャキは残った腕で身体を支える。


「無駄ですよ。ジャキは再生できます」

「みたいだな」


 今さらな情報だ。

 自慢の再生能力らしいが――


「ちょ、リョウガ速すぎない!?」


 イザベラの声を背後に聞きながら、俺はさらに加速した。


 地面を蹴る。

 空中を蹴る。


 ジャキの周囲を縦横無尽に駆け回りながら、その肉体を刻み続けた。


 肩。腹。喉。膝。


 再生した端から切断し、繋がる前に再び断ち切る。


「グォッ!? グルァアアアアアッ!」


 ジャキの表情が変わる。

 ようやく痛みを認識し始めたか。

 だが遅い。


 再生能力とは便利な力だ。だが絶対ではない。

 再生速度を上回る速度で破壊され続ければ、修復は追いつかない。


 俺の斬撃は止まらない。


 肉が削げる。

 骨が砕ける。


 再生する端から、さらに細かく刻まれていく。

 やがて巨体だったジャキは徐々に縮み始めた。


 再生する肉より、失われる肉の方が多くなったからだ。黒い肉片が雨のように飛び散る。


 絶叫が響く。

 それでも俺は止まらない。


 ついには原型すら維持できなくなり、ジャキは蠢く肉塊へと成り果てた。


「……ここが限界か」


 俺は大きく息を吸い込む。

 肺の内部で体内成分を変質。


 圧縮。

 発火。


 次の瞬間――轟ッッ!!


 俺の口から、灼熱の炎が吐き出された。

 それはただの火ではない。


 粘性を帯びた灼熱が肉塊へまとわりつき、燃え移り、逃げ場なく焼き尽くしていく。


 地面が融解し、周囲の空気すら歪む。

 再生しようと肉が蠢くたび、その再生ごと焼却されていった。


 黒煙が上がり、焦げた臭気が漂う。


 そして――最後には灰すら残らなかった。

 完全消滅だ。


 決着がつき、俺はゆっくりと上空へ視線を向けた。

 そこには、俺たちを俯瞰する白衣の男の姿。


「どうやら今回は諦めた方が良さそうですね。まぁいいでしょう。見たところ、まだ“目覚めて”いないようですからね――その時まで、お預けにしておきますよ」


 男の姿が霧のように薄れていく。

 本体側から投影を解除した――そんなところか。


 どちらにせよ。


「……これで護衛任務は達成だな」


 俺は小さく息を吐いた。

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