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コズミック・ラビリンス(CHAPTER3:3)

 だが、俺は慌てる事無くポケットから古の印を取り出して、人面ネズミどもに突きつけた。効果はテキメンで、ネズミどもは一斉に悲鳴みたいなカン高い鳴き声を上げながら、石壁の隙間に我先に逃げて行った。思ったよりも効くな。まるで水戸黄門の印籠みたいだ(見たこと無いけど)。


 驚異が去った事を確認して、古の印をポケットに戻す。その後、ランタンで通路を照らしながら進む事、しばし。行く手の通路の床の中央が、やけに砂ぼこりが少ない事に気がついた。もしやと思って、比較的砂ぼこりが積もってる壁沿いを、壁に背を着けてカニ歩きでゆっくり進むと、予想通り大きな音と共に床が開いて、数メートル下に剣山の様な針の山と、不運な探検服姿の犠牲者の串刺し死体(規制のボカシ入り)が(あらわ)になった。


 思った通りだ。今更その手は食うかよ! 落とし穴を越えると、床は大きな音を立てながら元通りの状態に戻った。しかし、この手の遺跡探索系のゲームではお約束とも言えるトラップだが、このゲームではこのチャプターが初めてだ。セーブポイントと言い、ここに来て新要素が増えて来ている。多分、ここからが本番と言う事だろう。


 それにしても、このチャプター3に入ってからと言うもの、ロータスの効果か、俺の脳力の賜物かは判らないが、我ながら見事な手並みで順調に進んでいる。これをもし実況動画に出来たら、かなりの評判を呼べるとは思うが、今の動画サイトに課せられた規制の山を思えば、それも(はかな)い夢だ。


 何せ、今や動画の隅っこに既存の商業コンテンツのキャラが写り込んでたり、商業音楽のワンフレーズでもハミングしようモノなら、即刻BANされる御時世だ。大昔みたいなゲームの実況動画や攻略サイトなんかは、メーカーと契約した大物ネットタレントでも無い限り、うpしただけでも大火傷を負う事になるからな。


 だから、合法的なゲームやアニメ関連のネットコンテンツは、メーカーの意向を汲んだ提灯記事ならぬ提灯動画だらけだし、ましてそのコンテンツを批判的に取り上げる事は、そいつのネット社会に置ける死を意味する。


 現状、その他大勢の俺達みたいなクソ雑魚ネットユーザーなんかは、僅かにSteamのレビュー欄なんかで、ガス抜きとしてサイトの規約に触れない範囲での批判が許されてる位だ。だから、俺や……あの九玄太のバカみたいな物好きな奴等が、カスみたいな自己顕示欲を満たす為に、わざわざBANされるリスクを自ら背負(しょ)いながら、規制に触れるギリギリの範囲で“辛口レビュアー”をやって来たのだ。


 なぜ、そこまでして? と言われれば正直返答に詰まるが、きっと性分なんだろう。俺はメーカーや配信サイトの運営に与えられるままに、ゲームを楽しんでるだけじゃ無いんだぜ! みたいな……


 話を戻せば、動画サイトやブログに課せられた規制強化の反面で、ゲームやアニメのネタバレなんかは、昔に比べて格段に減ったし、気になるゲームは自前で購入して実際にプレイする……なんて気運も“コンテンツにカネ払ったら負け”なんて時代に比べれば、僅かながら高まっている。前にも言ったが、このディストピア世界では一つの規制を取っても、割りを食うヤツと利益を得るヤツが混在してるのだ。


 ……そんな事を考えていると、今度は壁の両側から鉄槍が飛び出して来た。あぶな! 反射的に伏せて、ギリギリ回避する。通路の奥に転がってるボカシと血に覆われた死体と、両側の壁に穿(うが)たれた直径五センチ大の複数の穴に気付かなければ、即刻ゲームオーバーだった。


 落ち着いて見てみると、槍は、だいたい十秒間隔で出たり引っ込んだりを繰り返している。引っ込んだタイミングでダッシュしてもよさそうだが、床から一メートル辺りの高さまでは槍の穴も無く、このまま這って進んでも良さそうだった。

 槍が出る穴は、壁面に沿って十メートルちょい程並んでいる。いくら身のこなしが良くなったとは言え、ダッシュで切り抜けるのはリスキーだと判断して、慣れない匍匐(ほふく)前進でゆっくり進む。


 えっちらおっちら時間を掛けて進むと、さっき見つけた死体の隣まで来た。規制のボカシに包まれてはいる物の、やはり気分の良いモノではない。目を背けてさっさと先に進もうと思ったが、死体の腰の辺りに他の死体には無い黒い物が見えた。あれはまさか……


 恐る恐る手を伸ばしてみると、その辺りだけボカシが消えて革製のホルスターが見えた。これか! アルベルトが言ってたのは! なるほど、ここをダッシュして切り抜けたり、死体を完全に無視してたら入手は出来なかったろうな。


 時間を掛けて、死体からホルスターを引き剥がす。ちなみに、こいつの拳銃は死体の右手に握られていたが、弾は一発も残っていなかった。一応、拳銃を失った時の事を考えて予備として頂いて行こう。弾の事は後に考える事にする。


 もう少し這って進んで、ようやく槍地帯を通過した。これでやっと立って進める。その前にホルスターを腰に装着して、バックパックに仕舞ってた拳銃を入れる(さっきの空の拳銃は代わりに仕舞い込む)。これで、ナイフや拳銃を状況に応じて好きに抜き差し出来る。

 落とし仔クラスの怪物や旧支配者みたいな邪神クラスならともかく、喰屍鬼やネズミ相手には有利に戦えるだろう。そう考えると、これだけの装備でも完全武装したかの様な安心感を覚え、俺は足取りも軽く通路の先へと進んで行った。

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