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ドクターヘリ救急救命  作者: 零
Another story
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No.37 〜another story〜

No.37 〜another story〜



3月1日

今日は脳外科と救命の間に『翔華大学附属向日葵保育園』が開園する。



そう、今日は娘の初登園!

そして、来週から私、田中亜依改め、藍沢亜依は救命にフライトドクターとして復帰する。

とはいうものの、3月4日から内勤で復帰するから書類上は3月4日で育休終了ということになるんですが…。


まぁ、名前は以前のまま『田中亜依』で通すんだけどね(笑)

あ、違うわ。読み方は今まで通り『たなかあい』でも名札は『田中(藍沢)亜依』これは、結婚したんだし子供もいるんだから当たり前ってみんなに言われたんだよね。


私が復帰しても慣れるまで1ヶ月間は耕作がスタッフリーダー代理をしてくれるらしい。




あ、でもここだけの話、救命のみんなにはまだ私がいつから復帰するのか言ってないんだよね(笑)



さあ、耕作を起こして3人で病院に行かなくちゃね?



亜依「耕作、おはよう」


耕作「亜依、おはよう」



耕作は服を着替え始める。

もちろんスーツに…。

だって今日は入園式だもの。


耕作「入園式か…早かったか?育休は」


亜依「そうね。でも、貴方と一緒に早く仕事もしたかったから」


耕作「そうか」




そして、2人は星華の入園式に臨んだのであった。




今日は救命も白車が2台だけで耕作は定時で帰ってきてくれた。


耕作「ただいま」


亜依「おかえり」


耕作「星華は?」


亜依「寝てるよ」


耕作「そうか。なら、俺は亜依のことを独り占めできるな」


亜依「フフッ。でもその前にご飯にしよ?」


耕作「あぁ」




こんな日々が続けばいいのに…。




2人は心のどこかで思っていた。













3月4日


昨日は初めて3人でひな祭りをした。

そんな日の翌日。



耕作は亜依が育休に入ってからスタッフリーダー代理を務めているので前よりも少し早めに出勤して行っていた。私は09:30ぐらいに医局に出勤予定。



私もすぐに家事を始める。

今は8:30a.m.


あと1時間ぐらいしたら星華を預けに行く。だが、私はその前に掃除、洗濯を終えることにしている。


ちょうど終わった9:00a.m.

テレビつけると、情報番組の時間だ。

天気だけ確認すると、私は星華をのせて病院へと向かった。家から病院までは5分ほど。


私が運転をしているとスマートフォンが鳴った。すぐにスピーカーモードにする。


亜依「もしもし?」


藍沢『亜依?』


亜依「どうしたの?」


藍沢『京葉道路でトラック、乗用車が絡む多重事故が発生した』


亜依「まずいね…」


藍沢『あぁ』


亜依「もう駐車場に着いた」


藍沢『緋山、藤川、大野を先に行かせた。トリアージは頼んである』


亜依「うん。わかった、星華預けてすぐに初療室行く」


藍沢『頼む』



そして、星華を預けて亜依は初療室に走った。




***



朝のカンファが終わるとホットラインが鳴り響いた。


橘「翔南救命センターです」


『京葉道路市川IC付近でトラック、乗用車あわせて15台ほど含む多重事故です』


CSはグッドサインを出してきている。


橘「藍沢」


今日のヘリ担当は藤川、大野、横峯の予定だ。


藍沢「緋山、横峯とかわって先に行ってトリアージ開始してくれ」


緋山「わかった」


藍沢「およそ状況把握出来たらすぐに報告してくれ」


2人「了解」


藤川「行こう!」



そして、3人が走っていく。


橘「お前達、準備しろ!」


全員「はい!」


藍沢「赤が多そうですね」


橘「多重事故か…」



すると、藍沢は何かを思い出したように電話をかけ始めた。


その相手は救命のスタッフリーダー、そして自らの妻の亜依だ。



***



亜依「ごめん!待たせた!」


藍沢「今、緋山から連絡が来た…


事故は15台だと最初言われていたが通報の後に事故が原因で渋滞していた場所にも多重事故が発生して、結果的に全部で25台ぐらいが絡む大規模な多重事故だ。


現段階で


赤が8人

うち5人は頭部外傷がみられる。


黄色が50人


緑が60人



ぐらいらしい…まだトリアージの途中だ」


田中「わかった。横峯さん脳外にコンサルお願いして、出来れば現場派遣も要請して」


横峯「はい!」


田中「藍沢先生、黒田先生はヘリが戻ってきたら現場に飛んでください」


2人「了解」


そこに新海と西条が現れた。


藍沢「西条先生、ここで脳の患者お願いします」


西条「わかった」


田中「新海先生は現場にお願いできますか?」


新海「わかりました」


田中「名取先生、横峯先生、谷口さんは現場の医師が足りなかったらその次ので行って」


3人「はい!」



そこに藤川から連絡が入る。


藤川『藤川です。大規模事故で現場がだいぶ混乱してます。誰か指揮官お願いできませんか』


緋山『こちら緋山。藍沢、妊婦が赤タグだからそっちにつく、あんた現場指揮できる?』


その言葉に藍沢がさりげなく田中の方を見る。田中も藍沢の方を見て小さく頷く。


そして…



田中「橘先生!」


橘「どうした」


田中「私に行かせてください」


橘「…」


橘は思わず黙ってしまう。

そこに黒田の声が響く。


黒田「ヘリ、あと何分だ?」


町田「5分です!」

CSの町田がすぐに答える。


黒田「田中、着替えてこい」


田中「えっ?」


黒田の言葉に橘も声を発した。


橘「書類上は今日から復帰だから問題ない。ただ、最低でもスクラブは着て行け」


田中はようやく言葉の意味を理解したようだ。



田中「はい!」


そして、無線で呼びかける。


田中『藤川先生、緋山先生!私が指揮官になるからそっちに着くまでお願い』



そして、田中は急いで着替えて戻ってくるとスクラブで現れた。



黒田「よし、俺のかわりにヘリで先に飛べ」


田中「はい!」


CS町田「ヘリあと3分で戻ります!」


藍沢「行くぞ」


田中「うん」

新海「あぁ」



そして3人が走り出す。


ヘリにブランクがまるで無いように乗り込むとヘッドセットをつけた。


すぐにヘリが離陸する。



藍沢「大丈夫か?」


田中「平気よ、貴方が同じ現場にいるから」


藍沢「あぁ、何かあったらすぐに言ってくれ」


田中「わかった」


新海「脳外は5人だったな」


藍沢「あぁ、最低限の処置をして翔南に運ぶ」


新海「あぁ」


そこに梶の声が聞こえてきた。


梶「田中先生か久しぶりだな」


田中「お久しぶりです」


梶「良かったな、藍沢先生」


藍沢「えぇ」


田中「何があったの?」


藍沢「…」


梶「今日は田中先生がいるだろ?」


田中「はい」


新海「藍沢はその状況がいいんですよ」


田中「あ、この前の!」


藍沢「あぁ。指揮官よりも俺自身が患者の治療をする方が自分にはあってるからな」


田中「しっかり指示出すわ。私の分まで治療してね」


藍沢「わかった」


梶「あと2分で着くぞ」


3人「はい!」



徐々に現場が見えてくる。

だいぶ混乱している事は上からでもわかる。



新海「凄いな…」


藍沢「赤が増えそうだな」


田中は少し考えるとヘリの無線で翔南に連絡を入れた。


田中「こちら翔南ドクターヘリ。次のヘリで谷口さんと黒田先生お願いできますか?それから、輸液と機材もお願いします」


黒田『わかった、対策本部は1つか?』


田中「中心に1つと思われます。ただ、範囲が広すぎてまわってません」


黒田『お前が現場指揮をとれ、お前の指示ならみんな従う』


田中「えっ…」


黒田『俺も含めてな』


新海と藍沢はその言葉を聞いて田中と目を合わせると頷いた。

田中もそれを見て返事をした。


田中「わかりました」


黒田「こっちもあと2分で離陸する、トリアージは終わってるか?」


黒田に問われると藍沢が電話を受けていた。藍沢は田中の視線に気がつくと、グーサインとともに口パクで『終わった』と伝えてきた。


田中「終わりました」


黒田「状況は」


電話を受けている藍沢か素早くボードに書き込んでいく。


r15(脳8)


y50(妊3)


g60



そのボードをみて田中が黒田に報告する。



田中「赤が15内8が脳外の処置が必要です。黄色が50いて妊婦が3、緑は60います」


黒田「わかった。妊婦の3人は緋山1人で大丈夫か?」


田中「名取先生寄越してください」


黒田「わかった」



***




ヘリと連絡をとった黒田はすぐに初療室全体に声をかける。



黒田「名取、お前も来い。現場で緋山のフォロー入れ」


名取「はい!」


黒田「状況はここに書いた。輸液とベット用意しとけ」


全員『はい!!』





***





現場での処置が終わり、翔南に帰ってきたのは、16:00をまわる頃だった。



それから、患者の家族への説明やカルテの整理なんかをして気がつけば20:00をまわる頃だった。


田中「ちーかーれーたー」


田中が医局のソファーに深く座って、そうボヤいている。


藍沢「すまないな…復帰早々に指揮官任せて」


田中「ううん。謝らないで」


藍沢「…ありがとう、助かった」


田中「私ね、凄く嬉しかった。貴方が電話してきてくれた時」


藍沢「…」


田中「それで、指揮官が必要って言われた時に耕作が私を見てくれたことも」


藍沢「…」


田中「救命はチームでしょ?貴方の脳外のスキルで救われた患者がいる。もし、貴方が指揮官をしてたら助からなかったかもしれない。私は助けられて良かったと思ってる」


藍沢「俺は、正直…お前が今日から復帰で嬉しかった。こんな大規模事故が起きるとは思ってなかったけどお前の指示で動きたいと思っていたから。今日は凄く自分らしく処置が出来た。…ありがとう」


田中「私も貴方と一緒に働けてよかった」


藍沢「そうか」


田中「うん」



そこに当直の橘先生と非番のはずの三井が現れた。


藍沢と田中『『お疲れ様です』』


橘「お疲れ」

三井「お疲れ様」


田中「どうして三井先生が?」


三井「??今日は私達が当直だけど?」


田中「えっ?!」


田中は慌ててシフト表を確認する


すると、今日のシフトが変更されていた。


田中「なんで?私が当直のはずだったのに」


三井「フフッ。2人で行きな」


2人「??」


田中「書類終わってから帰ろうと思うのですが」


三井「?」


藍沢「自分もカルテが終わってないので…」


橘「藍沢、田中」


2人「「はい」」


橘「2人とも書類を仕上げてから帰るのでもいい。だが、子供を迎えに行ってからここで子供と一緒にやれ」


2人「「あっ」」


三井「忘れてたわね〜」


藍沢「そういう訳では…」


田中「今何時!」


橘「20:20だ」


藍沢「行こう」


田中「うん」




走って院内保育園に愛娘を迎えに行く2人の背中を先輩パパママは優しい眼差しで見送った。


橘「あいつら忘れてたな」


三井「そうね、でも預け出してしばらくはこんなものじゃない?」


橘「そうだな」


三井「フフッ。2人とも可愛いわね」


橘「あぁ。それより、良かったのか?非番だろ?お前」


三井「あぁ、しょうがないじゃない」


橘「休んでこいよ仮眠室で、俺がここにいるから」


三井「…私も、ここに居たい」


それを聞いて橘は医局のソファーに腰掛けると…


橘「来いよ」


三井が隣に座ると橘は三井を抱きしめた。


橘「ありがとう、後輩の為に非番を代わってくれて」


三井「別に…問題ないわよ」


そう言う三井のことを抱きしめた橘はそのままの姿勢で言った。


橘「寝ろ、明日は日勤だろ?」


三井「わかった」


2人は眠れなかった。だが、目は閉じておく。これが2人の間の約束だ。



***





保育園に2人が着くと、星華がまだ起きていた。


藍沢「すみません、遅くなりました」


保育士「いえ、お疲れ様です」


そう言いながら保育士は荷物と一緒に星華を連れてきてくれた。


田中「星華!」


藍沢は星華を保育士から受け取った。



田中「おかえり、お迎え遅くなってごめんね。星華」


藍沢「星華、いい子で待っていてくれてありがとう」


保育士「あの、出来れば近いうちにお昼寝用のお布団を持ってきていただけませんか?」


藍沢「ベットじゃないのか?」


田中「小児科にあったよね?」


保育士「あ、小児科のベットで星華ちゃんは寝れますか?」


藍沢「大丈夫なはずだ」


保育士「お子さんの中には特定の布団じゃないと寝れない子もいるので」


藍沢「まぁ、みんな持ってくるならそれなりのものを用意しておく」


保育士「お願いします」


田中「わかりました。他に必要なものはありますか?」


保育士「いえ、今のところは」


田中「そうですか。明日は非番なので明後日お願いします」


保育士「はい」




そして2人は星華を連れて医局に戻った。



そこでは橘と三井が寄り添って寝ていた。



藍沢と田中は星華をベビーベットに寝かせると、書類仕事をはじめた。


明日は2人とも非番だ。

書類を片付けて、非番を楽しもうとしているのだ。




2人が星華を迎えに行って書類と向き合い始めておよそ5時間。


01:30a.m.



田中「耕作、終わった?」


藍沢「あぁ。お前は?」


田中「終わったよ」


藍沢「帰るか」


田中「うん」


藍沢が星華を優しく抱っこした。


藍沢「亜依、仮眠室のブランケット1つ持ってこれるか?」


田中「これでいい?」


藍沢「あぁ。橘先生と三井先生の膝に起こさないようにかけてくれ」


田中「うん」



田中は慎重に2人にブランケットをかけた。



藍沢「それから、俺のパーカーとコートも」


田中「着る?」


藍沢「コートはお前が着ろ、パーカーで星華をくるむ」


田中「わかった。でも、いいの?貴方のコート着ちゃって」


藍沢「大事な奥さんとスタッフリーダーに風邪をひかれるのは困るんでね」


田中「ありがとう、行こうか?」


藍沢「そうだな」


田中「お疲れ様でした。あとお願いします」


藍沢「お疲れ様でした」


2人は小さい声でそう言うと医局を出ていった。



橘「起きてるんだろ?」


三井「貴方だって」


橘「フフッ。まぁな」


三井「いい感じね、2人とも」


橘「3人だろ?」


三井「そうね」


橘「星華ちゃん、か。まだまだ増えそうだな。あいつらのところは子供が」


三井「そうね。それより…」


橘「ん?今度こそホントに寝ていい?」


三井「いいよ。おいで」


橘と三井は朝、名取が出勤するまで寄り添って寝ていたとか






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