No.31 〜another story〜
No.31 〜another story〜
ーフェリー内の駐車スペースー
橘「凄いな…」
途中で赤タグ患者の治療をして遅れてこの場に到着した橘思わず口にした。
奥から藍沢の声が飛ぶ。
藍沢「緑は海ほたるまで消防隊の先導で自分で歩いてもらってます」
橘「黄色は」
今度は田中の声が聞こえてきた。
田中「応急処置をして消防隊に運んでもらってます」
橘「わかった」
そこに本部にいる三井から無線が入った。
三井「赤はどれくらい?」
藍沢「発見できてるだけで4人です。運べる1人は本部に運ぶところです。残りの3人はまだ車に挟まれてて動かせません。レスキューの救助と並行して治療中です。骨盤骨折が2人、大腿骨骨折が1人、今本部に運んでる1人は妊婦です。田中と自分が骨盤骨折を1人ずつ診てます」
三井「橘は?」
橘「俺は大腿骨骨折を診てる」
田中「そっちに妊婦が行きます。みたところ右足の骨折だけだと思います」
三井「わかった」
橘「橘だ。大腿骨骨折の患者、右足の変形が強かったから整復した」
三井「救出は?」
橘「もう少しで出せる。搬送は救急隊に任せる。あぁ、それから側にもう1人居た。出血性ショックで赤だ」
三井「3人ともそのまま続けて」
「了解」「わかりました」「はい」
三井はそう言って無線を切ると、翔南に電話を入れた。
西条「はい」
三井「三井です。負傷してる妊婦が4人いるんですけど、翔南で診れますか」
西条「大丈夫です。産科には連絡しておきます」
三井「順番に運びます」
西条「わかりました」
こちらはまだまだかかりそうだ。
ー成田空港ではー
藤川「骨盤骨折で赤だ」
大野「わかった。固定しとく」
藤川「頼む」
すると、黒田から無線が入った。
黒田「そっちに向かってる、詳細教えろ」
藤川「赤が分かってるだけで8人、骨盤骨折が5人、出血性ショックが1人、あと妊婦が2人です」
黒田「妊婦?わかった。こっちに翔南から緋山をまわしてもらう。お前はショックを診てるのか」
藤川「はい、冴島に比較的軽い骨盤骨折の固定をしてもらってます」
黒田「わかった。俺がそっちに行ったら妊婦2人をとりあえず診る。その後、骨盤骨折の固定をする」
藤川「お願いします」
黒田はすぐに翔南に連絡を入れた。
町田がすぐに初療室に伝える。
町田「緋山先生!成田空港でも妊婦がいるみたいで黒田先生が来れないかと」
緋山は思わず西条の顔を見た。
西条「行ってこい。ついでにそこの輸液も持って行ってくれ。さっき藤川から連絡があった」
緋山「わかりました」
町田「あと5分でヘリ戻ります」
緋山「わかった」
そして、緋山は小児用キットを2つ持ってヘリポートに走った。
どちらの現場でもみんなが走り回っていた。
ーフェリーの中、駐車スペースー
田中「まずい、ショックだ。救出お願いします!」
レスキュー「はい!」
そして、数分後
レスキュー「もうすぐ出せます!」
田中「わかりました」
藍沢「救出まであとどれくらいですか」
レスキュー「向こうが終わったらジャッキーで隙間を広げられるのでそうなれば15分ぐらいで」
藍沢「わかりました」
そう言いながら、考えた。
骨盤骨折のショックだ。
ショックの治療をしながら…。
レスキュー「救出出来ました!」
田中「上に運んでヘリポートへ」
レスキュー「はい!」
田中『三井先生!ヘリポートに骨盤骨折の患者が行きます。バイタルは安定してるのでレスキューに任せます』
トランシーバーで田中が報告してきた。だから同じように答える。
三井『わかった』
レスキュー「ジャッキーが来たので再開します」
藍沢「はい」
そして、藍沢が診ていた骨盤骨折の患者が運び出された。
橘の患者ももうすぐ運び出すことが出来る。
橘の患者は藍沢が診ていた患者とは真反対の場所だ。
その時…
レスキュー「おい、この車ガソリンが漏れてないか」
藍沢達がさっきまで診ていた患者の挟まれていた車の向こう側に立っているレスキュー隊員が隣にいたレスキュー隊員に言った。
藍沢はレスキューの言葉で自分の近くでガソリンが漏れている場所を見つけた。
その瞬間、視界の端で電源版から花火がちり、電線がガソリンに近づいていく!
藍沢は思わず大きな声で言った。
『引火するぞ!離れろ!!』
藍沢の言葉に周りにいたレスキューも藍沢自身も走って、車から離れた。
だが、爆風は駐車スペース内に広がった。
幸いなことに橘と患者がいた場所は藍沢の場所からは遠かったので爆発の被害はほとんどなかった。
田中も橘のフォローに入っていた為、どこも怪我していない。
橘「爆発?」
レスキュー「消火しろ!」
レスキュー「先生!しっかりしてください!先生!」
橘「田中」
田中「はい!」
田中がレスキューの元に走る。そこには、爆発に巻き込まれ、横たわり、車の間に挟まれた藍沢がいた。
田中「救出お願いします!」
その場にいたレスキューによってすぐに救出された。
田中「とりあえず、向こう側に移動しましょう。手伝ってください」
そして、橘の隣で藍沢の処置を始めた。
すると1人のレスキューが走ってきた。
レスキュー「さっきの爆発でこの場所から出れません!」
橘「何だって?他の道は?」
レスキュー「いま、そっちの非常階段から上に行けるように車を動かしています」
橘「できるだけ急いでください」
レスキュー「はい!」
そこにトランシーバーから三井の声が聞こえた。
『橘、田中、藍沢!聞こえたら応答ください』
橘「俺だ」
三井『よかった…。2人は?』
田中「私も無事です」
三井『藍沢は?』
橘「爆風に巻き込まれたが外傷は頭からの血だけだ。だが…」
三井『多臓器損傷?』
橘「おそらく。田中、どうだ?藍沢は」
田中「心音はしっかりしてます。ただ、多臓器損傷だと思われます」
橘「そうか、あとは頭部外傷か」
田中「はい」
橘「三井」
三井『脳外にコンサルする。こっちに来てもらえないか』
橘「頼む」
*****
三井はすぐに翔南に連絡を入れた。
西条『西条です』
三井「三井です。脳外で一番腕が良いのをこっちに回して!」
西条『どうしました?』
三井「フェリーの駐車スペースで爆発があった」
西条『えっ?スタッフは!?』
三井「橘と田中は何ともない。ただ、藍沢が爆発に巻き込まれて頭部外傷とあと多分、多臓器損傷」
*****
田中はその場で藍沢の腹を開けた。
やっぱり…
多臓器損傷だ
橘「どうする?」
自分の患者の換気をしながら、片手でフォローしてくれている橘が尋ねてきた。
田中「…ガーゼあるだけください」
橘「わかった」
そして、田中と橘は藍沢にガーゼパッキングをした。
橘「あとどれくらいですか?」
レスキュー「あと20分、いや15分で終わらせます!」
橘「お願いします」
*****
三井がスマホで西条と話しているとトランシーバーで田中から報告があった。
田中『三井先生、田中です』
三井「どうした?」
田中『やっぱり、藍沢先生は多臓器損傷でした。ガーゼパッキングしてあります。脳外は来てもらえそうですか?』
三井「今、翔南と連絡とってる。分かったらすぐに連絡する」
田中『お願いします』
再び、西条との話に戻る。
三井『多分じゃなかった。ホントに多臓器損傷と頭部外傷』
西条は初療室を見回した。
西条「新海を行かせます。あいつなら藍沢と同じレベルですから」
三井『お願いします』
西条「わかりました」
三井は電話を切った。
そして消防隊長に声をかける。
三井「消防隊長!」
消防隊長「はい!」
三井「フェリーの駐車スペースに爆発に巻き込まれて頭部外傷と多臓器損傷の医師がいる。できるだけ早く救出してください」
消防隊長「はい!」
*****
翔南の初療室では…
西条「フェリー内部の駐車スペースでガソリンに引火して爆発が起きた。小規模だが、黄色が増えるだろう」
周りのスタッフは不安が隠せなさそうだった。
今井「先生方は?」
西条「橘と田中は大きな外傷はないらしい。ただ…」
今井「ただ?」
西条「新海!」
新海「はい」
西条「現場に行け」
新海「自分がですか?」
西条「藍沢が爆発に巻き込まれて頭部外傷と多臓器損傷だ」
今井「えっ?!」
西条「ガーゼパッキングで多臓器損傷の方は止血したらしいが、脳を診てほしいと」
新海「わかりました」
町田「あと6分でヘリ戻ります!」
西条「RCC20単位とアルブミンあるだけ持って行け!藍沢、頼んだぞ」
新海「はい!」
そして、深海は脳外の外傷キットを持ってヘリポートに走った。
新海と入れ違いで初療室に白車で黒田が戻ってきた。
西条「黒田先生!」
黒田「向こうはもう大丈夫だ」
西条「深海と海ほたるに行ってください!」
黒田「まだ終わってないのか、向こうは」
西条「はい」
町田「ヘリ3分で戻ります」
黒田「バッグ取ってくれ!」
今井がすぐに脳外の外傷バッグと縫合セットを渡した。
黒田は今井に助かる、と一言走っていった。
*****
ヘリに乗り込んだ新海は隣に黒田まで乗ってきて驚いた。
新海「黒田先生?」
黒田「海ほたるに俺も行けって西条に言われてな。何が起こった」
新海「フェリー内部の駐車スペースで引火による爆発が起こったらしくて、藍沢が爆風で頭部外傷と多臓器損傷だと」
黒田「藍沢が?」
新海「はい」
黒田はすぐに現場の本部に無線を入れる。
黒田「こちら翔南ドクターヘリ、詳細教えてください」
三井「黒田先生!」
黒田「あぁ、新海もいる」
三井「フェリー内部の駐車スペースでガソリンに電源版からの花火が引火して爆発が起きて、一番近くにいた藍沢先生が頭部外傷と多臓器損傷です。あとは、藍沢先生の咄嗟の声掛けで黄色と緑です」
黒田「わかった。中には入れるのか?」
三井「そろそろ人が1人入れそうです」
黒田「わかった。着いたら新海とそこに行く。お前はそのままそこで指揮をとれ」
三井「はい」
*****
田中に藍沢のバイタル管理と自分が診ていた患者の換気を任せて、橘は黄色と緑のレスキューの処置をしていた。
レスキュー「人が1人通れるようになりました!」
橘「じゃあ、輸液を貰ってきてください!RCC…」
黒田「その必要はない」
橘は思わず大きな声で名前を呼んだ。
橘「黒田先生?!」
なぜなら、その人物は成田にいたはずだから。
黒田「ちゃんと新海も連れてきた」
新海「藍沢は?」
橘「こっちだ」
黒田と新海は橘とともに藍沢のもとに駆けつけた。
新海「か…」
新海がすぐに処置をしていく。
レスキュー「開きました!運べます!」
新海「終わった」
田中は心配そうな顔で新海を見た。
新海「大丈夫。これだけやれば、病院までもつ。あとは病院の手術室で」
田中「はい」
橘「藍沢を先に運んでくれ、こっちはその後だ」
田中「はい」
橘「よし、全員本部前に運ぼう」
赤タグと黄色タグをどんどんと運んでいく。
三井「これで全部?」
橘「駐車スペースの中は」
三井「それなら全員、避難が済んだことになる。他のブロックはすべて確認済み」
橘「そうか」
三井「次のヘリで藍沢を運んで」
田中「はい」
新海「わかりました」
三井「その次は貴方のところの骨盤骨折」
橘「わかった」
三井「黄色はあと2人、白車で運ぶ。横峯、片方に同乗して」
横峯「はい」
そこに消防隊長が現れた。
消防隊長「三井先生!緑タグの搬送はこれが最後になります」
三井「お願いします」
消防隊長「はい!」
救急隊「白車2台来ました!」
黒田「俺が1台は同乗しよう」
三井「すみません」
黒田「お前はヘリで翔南に帰れ」
三井「はい」
消防隊員「ヘリが戻ります!」
田中「向かいます!」
ドクターヘリに藍沢をのせて、田中と新海が乗り込む。
田中「こちら翔南ドクターヘリ、患者情報伝えます。30代男性、脳ヘルニアと多臓器損傷を合併してます」
西条「脳外が先か?」
田中「はい」
西条「CTとMRI、手術室は確保しておく」
田中「お願いします」




