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ドクターヘリ救急救命  作者: 零
Another story
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No.30 〜another story〜

No.30 〜another story〜


4月1日

朝のカンファレンスの直前に4人が到着し、院長への挨拶だけを済ませて、そのままの服で4人もカンファレンスに加わることになった。


橘「今日からこの4人が加わる。半年のレジデントだ」


黒田「今日のヘリ担は田中、名取、谷口だな」


田中「はい」


黒田「なら、4人への説明は藍沢頼めるか」


藍沢「わかりました」



そして、カンファレンスが終わり、皆が持ち場へと戻っていく。


藍沢「じゃあ、始めようか」


4人を見ながら藍沢が言った。


そこに、4人分のスクラブとフライトスーツ、フライトジャケットを入れた箱を持った横峯が現れた。



横峯「藍沢先生、田中先生からです」


藍沢「あ、すまない。もらう」


横峯「では」


藍沢「横峯」


後ろを向いてドアへと歩いていた横峯が振り返った。


横峯「はい」


藍沢「ありがとう、助かった」


横峯「いえ、田中先生に言われただけですから」


藍沢「亜依にも礼を言っていたと伝えておいてくれ」


横峯「わかりました」



そして、横峯が部屋を出ていく。

藍沢「これが服だ。スクラブ、フライトスーツ、フライトジャケットだ」


海棠「名前入ってる!」


藍沢「あぁ…名前入りを用意しておいた。レジデントが終わったら持って帰ってくれ」


海棠「ありがとう」


藍沢「さて、これを渡すだけで確か良かったよなヘリは明後日からだ」


4人「了解」



そして、4人が着替えてスタッフルームにちょうど来た頃。



ホットラインが鳴り響いた。

田中「翔南救命センター」


消防「東京湾を運航するフェリーが濃霧のため海ほたるに衝突、怪我人多数です」


藍沢がすぐにCSに確認を取ってグーサインを出している…


それに反応して田中、名取、谷口がバッグを持つ。


黒田「名取!藍沢と変われ」


その言葉を聞いてスクラブ姿だった藍沢がフライトジャケットを手にして、名取から渡されたバックを受け取り田中と谷口を追う。



そして、離陸する直前。


初療室に移動したスタッフの元に再びホットラインが鳴り響く。


藤川がホットラインを取って内容を聞く。


黒田「2件目?」


藤川が初療室全体に聞こえる声で言った。


藤川「成田空港消防司令室よりドクターヘリ要請です」


黒田「橘」


橘「ヘリに伝えます。3人を降ろしたら、1回戻ってもらいます」


黒田「頼む」


橘がCS室に走っていく。


黒田「藤川、大野行けるか?」


2人は顔を見合わせて小さく頷くと2人で答えた。


2人「行けます!」


黒田「よし、名取、藤川、大野3人は戻ってきたヘリで成田に行ってくれ、人が足りなければすぐに連絡しろ」


藤川「はい」



すぐに翔南での決定事項をCSの町田がヘリに伝えた。



ーヘリの中ではー


田中「どれくらい勝算ある?」


田中が思わず藍沢に言った。

藍沢も1点を見つめながら答えた。


藍沢「全くわからない。なにせ経験がない」



ー翔南ではー


藤川「行こう!」


藤川と大野が走っていく。




その後ろ姿を見て橘、黒田が難しい表情をしていた。


海棠「ねぇ」


黒田「どうした?」


海棠「もう1人ドクターがいたわよね」


橘「三井のことか?あいつは今日一応、オフなんだ」


海棠「院内にいるの?」


橘「小児病棟にいる」


黒田「呼べるか?」


橘「まぁ、ただ優輔の」


黒田「1人になってしまうな。勉強を教える人物もいなくなる」


増本「でしたら、私が代わりに」


橘「えっ?」


増本「私が代わります。三井先生の方が私よりも経験も多い」


黒田「どうする?橘」



橘がすぐに電話をかけ始めた。

その相手は…



小児科の病室で優輔に勉強を教えていた三井。


優輔「お母さん、電話」


三井「ありがとう。はい」


橘「俺だ」


橘のその声はいつもよりも緊張感が増していた。癖でスピーカーにしていたせいで優輔にも聞こえてしまった。


優輔「お父さん?」


橘は三井がスピーカーにしていることにすぐに気がついた。だが、一刻を争う。今は、指摘せずにそのまま続ける。



三井「どうした?」


橘「海ほたると成田空港からドクターヘリ要請だ。まだ規模を把握出来てないが赤が増えそうなんだ」


橘が言いたいことはわかった。


一言で言えば『人が足りない。こっちに来れるか?』だ。だから、それがわかったということで、話を進める。


三井「代わりにこっちに来れる人いる?」


橘もすぐに、三井が自分の言おうとしたことを理解したのがわかった。


橘「増本が行ってくれる」


三井「わかった。こっちに増本さん来たらすぐに行く」


橘「悪い」


だが、すぐに電話を切らずにその場にいる優輔にこの会話がスピーカーモードにより全部筒抜けであることを思い出した。


だから橘はつけたした。



橘「優輔。お母さん借りるな」


優輔は一瞬驚いた。だが、すぐに答えた。



優輔「貸し1つね」


橘「わかった」



すぐに電話が切れた。




その頃、翔南のヘリポートでは田中が患者を連れてきた。

比較的まだいい方の患者を連れてきたと言っていた。


田中が乗ってきたのとは別のもう1機のヘリがもうひとつのヘリポートでエンジンを回し始めていた。



初療室では、田中が引き継ぎを終えて現場に戻ろうとする。


黒田「田中、横峯も連れてけ」


田中「はい。行こう」


横峯「はい」



その頃、小児科病棟


三井が優輔の棚に置いていた自分のスクラブに上だけ着替える。


優輔「やっぱり、お母さんとお父さんはスクラブが似合う」


三井「それって褒めてる?」


優輔「とっても」


三井「ホントにごめんね」


優輔「なんで謝るの?患者さん救ってきて。大変なことが起きてるのはお父さんの声でなんとなく分かった」


三井「優輔…」


優輔「無理をしないでっていってもしないと乗り越えられない場面もあるだろうから言わない。場合によっては怪我もありえる。だから、取り敢えず、生きて帰ってきて」


三井「わかった」


優輔「お父さんにも言っておいてね」


三井「うん」


優輔「そろそろ、増本さん来るかな?足音がする」


三井「そうね」


優輔「行ってらっしゃい」


優輔が笑顔で言ってくれた。

三井は思わず優輔の額にKissをした。


三井「行ってきます」



その直後、増本が病室に現れた。


増本「三井先生、お休みの日にすみません」


三井「ううん。優輔お願いね」


増本「はい」


三井「優輔、絶対お母さんがまた勉強教えるから」


優輔「当たり前でしょ?」


三井「行ってくる」



そして、三井は走っていった。



数分後の初療室…


橘、黒田、緋山、横峯、今井、海棠、島、神城とナースが受け入れの準備をしていた。

そこに初療室のドアが開いて三井が入ってきた。


三井は上下スクラブ姿だ。



三井「さっきのどういう意味?」


三井は橘を見て言った。


橘「そのままだ。海ほたるにフェリーがぶつかったのと成田空港のドクターヘリ要請が重なった。今、どっちも現場にうちの医師が着いてトリアージを確認してるところだ。そのうち連絡が入るだろう」


三井「そう。わかった。着替えてくる」


橘「環奈?」


三井「スクラブじゃ寒いでしょ?薄いし」


橘は三井の言おうとしていることがわかった。『現場の人が足りなくなるなら、自分が行く』という意味だ。


橘「黒田先生、自分も着替えてきます」


黒田「わかった」


黒田は2人のやり取りを理解し短く返事をした。



仮眠室に2人が着替えに行く。


三井「別にあなたまで着替えなくても良かったのに」


橘「お前だけ行かせるわけないだろ」


三井「優輔のためにもどっちかが残るべきじゃない?」


橘「そうかもな、親としてはそうだ。だが、自分が愛してる女が死ぬほうが俺は辛いんでね」


三井「そっちこそ、死なないでよね」


橘「あぁ」


そして、お互い着替え終わった。


三井「行こう」


橘「待て」


橘が三井の腕を引っ張って引き寄せ、深いKissをした。


橘「一応」


三井は少し困った顔をして、今度は三井からKissをした。


橘は一瞬、目を丸くした。


三井「お返し」


橘「フフッ。行くか」


三井「そうね」



そして、2人が初療室に戻ると…


黒田「西条先生にこっちに来てもらうことにした。俺は成田に行く。お前達2人は海ほたるに飛んでくれ」


三井「はい」

橘「はい」


黒田「緋山、今井、海棠、神城、島はこっちでの処置を担当してくれ」


3人「はい」



数分後…

ヘリポートに着陸したヘリで黒田先生が成田へと行った。


その頃、初療室で三井と橘がバッグを準備している。


そこに西条先生がやってきた。


西条「橘、三井」


三井「西条先生」


橘「すみません、こっちに来ていただいて」


西条「簡単に現状を説明してくれ。黒田先生は人が足りないとしか言ってくれなかったから」


橘「海ほたるにフェリーがぶつかったのと成田空港のドクターヘリ要請が重なったんです」


三井「どっちも赤が多くて」


西条「わかった」


そこに現場の田中から同時に電話が入った。


三井「どうした?」


田中「人も輸液も機材も何もかもが足りません…。まだまだ赤が出そうです」


三井「わかった。ヘリが戻ってきたら私と橘がそっちに行く」


田中「わかりました」


CS「あと5分でヘリ戻ります!」


三井「わかりました」


三井は橘に目配せした。


三井「行きましょう」


橘「あぁ」


西条「三井、橘!」


2人「はい!」


西条「救命に今あるRCC20単位、アルブミンあるだけ持って現場に行け」


橘「えっ?!」


三井「こっちで使う分は?」


西条「心配要らない、早急に脳外から持ってこさせる。その後は他の科から最低限を残して救命に集めておく」


三井「わかりました」


橘「こっちお願いします」


西条「あぁ、人や輸液が足りなかったらまた連絡してこい」


橘「はい」




そして、ありったけの輸液を持って橘と三井がヘリに乗る。



三井「どれくらい勝算ある?」


橘「わからない。俺もこんなに酷い現場が2箇所なのは経験がない」


橘が三井に目配せした。『お前は?』と言いたげに。


三井「あなたが経験ないことを私が経験してるわけないでしょ?あぁ、でも。妊婦が一気に5人、分娩室に入ったのを全部私が診たことはある」


橘「幸せな忙しさだな」


三井「そうね。今の状況とは正反対ね」


橘「あぁ」


するとパイロットの梶が話しかけてきた。


梶「あと5分だ」


橘「はい」




徐々に現場の海ほたるが見えてきた。


橘「思っていたより酷いな」


三井「そうね。生きて帰らなきゃね」


橘「死ぬなよ」


三井「そっちもね」


橘「倒れてでも生きて帰らないとな」


三井「そうね」


橘「なんかあったら頼むぞ」


三井「私のこともよろしくね」


橘「あぁ」



そして、着陸する。

入れ違いで横峯が乗ってきた。


横峯「赤タグはフェリーの中に多いです。今、田中先生と藍沢先生が診てます」


2人「わかった」


橘「お前は翔南に戻ったらタッチアンドゴーで戻ってきて軽傷者を頼む。俺と三井は赤を診る」


横峯「はい」



橘と三井の元に消防隊が来る。



消防隊「こちらです!お願いします!」


三井と橘は駆け出した。



そして、橘と三井は海ほたるの対策本部に来た。


そこには、ちょうど赤を1人診終わって対策本部で指揮をとる田中の姿があった。


三井「田中」


田中「橘先生、三井先生!」


橘「状況は」


田中「フェリー内の安全確認は一応取れてます。まもなく、フェリーの中の駐車スペースにも入れるようになります」


橘「わかった」


橘が三井と目配せする。


橘「横峯がタッチアンドゴーでこっちに戻ってくる。軽傷者は任せていい」


田中「はい」


三井「妊婦はいた?」


田中「はい。3人」


三井「どこにいる?私が診る」


田中「そちらのテントの中のベットに」


三井「わかった」


橘「なら、環奈はこのまま、ここで妊婦と指揮を頼めるか」


三井「わかった」


橘「田中、お前は俺と藍沢と赤タグを頼む」


田中「わかりました」



そして、そこに藍沢が脳の治療をして、ヘリで運ぶために対策本部近くに来ていた。


処置はしたので戻ってきたヘリに乗っていた脳外の医師にそのまま頼んだ。


橘「藍沢!」


藍沢「はい」


橘「安全確認とれたら駐車スペースに行く」


藍沢「わかりました。トリアージは俺がやります」


橘「頼む」


消防隊長「フェリー内の駐車スペースの安全確認がとれました!」


田中「わかりました。私も現場に向かうので、ここからの指揮はこちらの三井環奈先生がとります。そこの妊婦を診ながら指揮をお願いしてあります」


消防隊長「わかりました」


田中「行きましょう」


橘、藍沢、消防隊長は頷いた。


消防隊長「こちらです」


橘と三井はお互いの身を案じるように1度目を見合わせると軽く頷いてそれぞれの持ち場へと走っていった。

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