No.1 〜another story〜
ドクターヘリ緊急救命No.1
〜another story〜
「藍沢が田中と婚約を結ばずにトロントのレジデントに行くことを決めていたら」一体どんな話になっただろう。
ヘリポートに1人たたずむ人物がいた。トロント大のレジデントを決めた藍沢だった。
ドクターヘリに手を触れるその横顔はどこか悲しそうだった。
まるで、別れを惜しんでいるかのように…
田中「レジデント、決めてくれて良かった」
藍沢「お前はこれで良かったのか」
藍沢はこの時レジデントはどちらでも良いと思っていた。田中が救命にいてくれと言うならそれでいい。レジデントに行ってきていいと言うならレジデントとしてトロント大で学んでそれを救命に活かせばいいと思っていた。
しばらく沈黙して田中が応えた。
田中「行ってきなよ」
藍沢「ホントに良いのか?」
藍沢のその言葉は自分を心配している事だとすぐにわかった。
田中「いい。橘先生や三井先生、黒田先生、藤川先生、緋山先生。みんなで頑張るから」
藍沢「そうか」
田中「いつから行くの?」
藍沢「年明けには」
田中「そう」
藍沢「9年前、俺がここに来たのは難しい症例が多く集まるからだった。あの頃の俺は自分の為に医師をしてた」
田中「そうね」
藍沢「でも今は誰かの為に医師であろうと思う。それを俺はここでお前達から教わった。」
田中「!……」
藍沢「俺は出会いに恵まれた。お前との出会いも含めて」
思わず感傷的に発言してしまい、田中が戸惑っていることがわかった藍沢はすぐに話をずらした。
藍沢「黒田先生がスタッフリーダーだった時の救命を超えれそうか?」
田中「無理ね。超えられない。でも、いちいち落ち込まないことにした。」
藍沢「そうか」
田中「今井先生が教えてくれた。こんな私でもできる医者に見えるって…迷いながら9年。ここでやってきたら後輩からそんなこと言われた。」
藍沢「……」
田中「それなりに役にたってるって事だよね」
藍沢「もちろんだ」
田中「私は私なりの救命を作っていくしかないんだってわかった。強いリーダーシップも無い。すぐへこむ。いつも迷ってばかり。そんなリーダーがつくる救命を精一杯やっていくしかないんだって」
藍沢「そうか。なるべく早く見せてくれ」
そして、藍沢と田中はヘリポートを後にした。




