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ドクターヘリ救急救命  作者: 零
基本STORY
10/54

藍沢と田中 其の十

そして、5日後。


今日から藍沢がまたヘリに復帰する。

朝のカンファレンス



橘「今日から藍沢がヘリ番に復帰する」


藍沢「ご迷惑をおかけしました。今日からヘリに復帰するのでまたお願いします」


橘「それで、今日のヘリ番なんだが」


黒田「名取、田中、谷口だ」


そこにホットラインが鳴る


電話に出たのは名取だ。

名取「こちら翔南救命センター」


消防「市原消防です。2台の乗用車による交通事故で後部座席に乗っていた60代男性が意識不明で、運転していた40代男性が意識はあるんですが重症です」


名取が田中を見るとグーサインを送っていた。


名取「わかりました。向かいます」


そして、現場に向かった名取と田中、谷口はヘリで消防から現場の状況を聞いていた。


消防「あの、患者が4人に増えました。ぶつけられた方の車に乗ってた親子が増えました」


田中「わかりました」


そして、現場に着き、ヘリから降りた名取は現場の車を見て驚いた。


それは名取の父、名取将馬が愛用している車でナンバーまで同じなのだ。


まさかと思い患者を見ると、60代の患者とは名取将馬だった。40代の男性は将馬の秘書兼運転手だった。


名取「父さん…」


田中「えっ…」


田中は改めて患者の顔を見た。

その顔は何度も学会で見たことがある顔だった。


田中「じゃあ、名取先生はお父さんの治療と車の子ども診て。私は運転手とその子のお母さんを診るから」


名取「はい…」


そして、名取は父親を診察した。骨盤骨折だ。点滴の指示と骨盤の固定を谷口に頼み、未だに車の座席に挟まれている少年を診る。



すると…


名取「田中先生。この子ども、頭部外傷があります」


田中「わかった。脳外にコンサル(診療依頼)してみる」


名取「お願いします」


名取はそう言いながら未だ救出出来ない少年の脳以外の場所の治療をはじめた。


そして、田中がiPhoneで電話をかけた。


藍沢は今日、脳外のカンファレンスに出るから午前中は脳外にいると聞いていた。


お願い、出て…


藍沢「はい。脳外科医局です」


脳外の電話を取ったのは藍沢だった。

恐らく電話に今、一番敏感なのは集まってる脳外の医師の中では藍沢だったのだろう。


田中「藍沢先生!」


藍沢「田中か!どうした」


田中「頭部外傷で意識不明の少年がいるの…8歳ぐらい。座席の間に挟まれててまだ動かせない。救出まであと30分__」


藍沢「もういい。わかった…現場に向かう」


藍沢はその言葉と同時に脳外を出た。ヘリポートに直接行くのではなく、初療室に寄って機材を受け取り、横峯を連れてヘリポートに走る。


そして、2人がヘリにのるとヘリはすぐに離陸した。


梶「藍沢先生か。現場まで8分だ。」


藍沢「わかりました」


梶「前みたいだな」


藍沢「そうですね。前は祭りの山車に挟まれた少年でしたね」


梶「あぁ。今回も脳外から走ってきてたしな」


藍沢「前回と違うのは荷物だけを取りに初療室に行ったんじゃなくてちゃんと人も連れてきた事ですね」


梶「あぁ。患者は名取将馬、その運転手そして、その車にぶつけられた車に乗ってた母子だ。」


藍沢「わかりました」


そして、藍沢は現場の田中に無線で確認をはじめた。


藍沢「こちら翔南ドクターヘリ。患者の状況教えてください」


田中「藍沢先生?脳の患者は今のところ8歳ぐらいの少年1人。ショックで痙攣してる母親と骨盤骨折の運転手を私が診てる。名取先生が脳の子供と骨盤骨折の自分の親を診てる」


藍沢「わかった。俺が名取のところの脳の子どもを診る。横峯が今俺と同じヘリに乗ってるからお前のところの骨盤骨折を横峯に託せ。お前はショックの母親をどうにかする。これでいいか?」


田中「横峯さんもいるならそれでいいいと思う。それでいく」


藍沢「わかった」


横峯「わかりました」


そして、現場に着いた。


藍沢と横峯はお互いが診るべき患者のところに走った。


藍沢は名取の診ている患者のところにきた。


藍沢「名取、レベルが下がったのは何分前だ。」


名取「藍沢先生!5分前に100から300に落ちました。」


藍沢「脳ヘルニアを起こしてるな。俺が代わる。」


名取「病院までもちますか」


藍沢「無理だな。ここで穿頭する」


藍沢はすぐに脳外科キットを開けて準備を始めた。そこに谷口がやって来た。


谷口「名取先生、将馬さんの骨盤の固定終わりました。こっちに入ります」


名取「ありがとう」


藍沢「お前は自分の親を診てこい」


名取「えっ。」


藍沢「親も医者かもしれないが今は骨盤骨折でお前の患者だ。心配いらない。こっちの少年は必ず助ける」


名取「はい!」


名取は藍沢に少年を任せ、自分の親の元へ走った。



藍沢「田中の方は?」


谷口「骨盤骨折の固定を終えた横峯先生がフォローに入ってます」


藍沢「そうか。こっちは脳ヘルニアだ。ここで穿頭する」


谷口「はい」


そこに田中から連絡が入った。


田中「藍沢先生?」


藍沢「なんだ」


田中「サンテスキー余ってない?」


藍沢「悪い、脳とその他で全部使ってる」


田中「こっちのショックの患者さん、出血点は見つかったんだけど、サンテスキーが足りない」


藍沢「出血点は?」


田中「肺門部を遮断しようと思ってる」


藍沢「なら…昔、俺達がやった処置をすれば止まるんじゃないか?」


田中「まさか…」


藍沢「それしか俺は思いつかない」


田中「…」


藍沢「ハイラーツイストしろ」


田中「わかった…」


藍沢は田中のその返事に不安が含まれていることがわかった。

自分が処置をした時は隣に信頼できるフェローの仲間…そう。田中がいた。

今の田中には隣に自分が、いや、自分たちが育てたフェローがいる。だが、やはり同期や先輩の医師がいない事に不安を覚えているのだろう。


田中「…ねぇ……」


藍沢「…どうした」


田中「…こっちに来れる?」


やっぱり。藍沢は思った。出来ればこっちに来てくれ。田中はそう思ってる。あの時自分の隣に田中がいたように今、俺に隣にいて欲しいんだろう。だが、藍沢も行ってやりたいが自分の患者を放っておくことは出来ない。


そして、藍沢は田中に応えた。



藍沢「こっちもまだ手が離せない。お前がやれ」



やっぱり。田中は思った。

まだ、脳ヘルニアの少年のそばを藍沢は離れられないのだ。




しかし、藍沢の言葉は続いた。



藍沢「……だが…処置の指示なら、俺が出す」


田中は藍沢のこの気遣いがとても嬉しく思えた。自分はその場に行けない。だから1人で頑張れではなく、ちゃんと助けてくれる。


そんな藍沢の心遣いが嬉しく思えた。


田中「うん。お願い」


その田中の返事にさっきのような不安は無かった。あったのは藍沢に対する信頼だ。


そして、藍沢は患者の処置をしながら田中に指示を出していく。


田中「準備できた…指示ちょうだい」


藍沢「肺が癒着してるところをゆっくりとるんだ。もし失敗すれば他の臓器からも出血する」


田中「わかった…」


藍沢「ゆっくり、とれよ」


田中「うん」


しばらくして藍沢は田中に声をかけた


藍沢「全部とれたか?」


田中「うん…」


藍沢「じゃあ、肺をねじって止血しろ」


田中「わかった…」



田中の返事を聞いてすぐに藍沢は田中の気持ちがわかった。


この処置の中でこの作業が一番不安要素が多いことを藍沢が良く知っていた。

だからこそ藍沢は田中に声をかけた。


藍沢「こっちも2、3分で俺のスキルが必要な処置は終わる。お前の患者の心臓がもし止まったらこっちは名取に任せて俺がそっちに行ってすぐに心マするからとりあえずやれ」


藍沢は以前フェローのときに同じ処置を患者にした時に隣にいた田中が言ったことをそのまま発した。


田中「わかった」


そして、田中が肺をねじって出血を止めた。


田中「できた…」


藍沢「その患者を先に運んでくれ。こっちはそっちよりもつ」


田中「わかった。」


そして、藍沢と田中の夫婦によってこの母子は助けられた。




2日後






藍沢と田中はICUにいた。


この前の事故の母子、風間 美帆と風間 俊介のもとを訪れていた。


藍沢は俊介のバイタルを確認していた


隣では、田中が美帆のバイタルを確認している。


美帆「この前はありがとうございました」


田中「助けられて良かったです」


すると、藍沢の横にいた俊介が藍沢に尋ねた。


俊介「藍沢先生はずっとヘリに乗ってるの?」


藍沢「いや、俺は最初、別の病院の救命センターにいたんだ。だが、この病院でドクターヘリのフライトドクタ-になるための研修があると聞いて、この病院に来たんだ。そして、研修を終えてフライトドクターの認定証を貰った。その後、俺は脳外科に移った。そこで脳の患者の処置の仕方を学んだ」


俊介「そうなの?」


藍沢「あぁ、それで今年。信頼してる同期と自分が研修生だった頃の指導医に頼まれて俺は救命に戻ってきた」


俊介「そうなんだ。先生が救命に戻ってきてくれてて良かった」


藍沢「何故?」


俊介「だから俺、助かったんでしょ?」


藍沢「…」


俊介「聞いたよ。フェローの名取先生から。藍沢先生の脳外の技術があったから俺は助かったって」


藍沢「そうか。だが、フェローの名取がいなければ、お前は助からなかったかもしれない。もし、田中とフライトナースだけで行ったとしたら助けえても3人が限度だ。名取がすぐにお前の診断をして脳外が必要だと判断したから俺がすぐに行って処置が出来たんだ。アイツに感謝しろ」


俊介「わかった」


田中「藍沢先生?」


藍沢「なんだ?」


田中「新海先生が来てるよ」


藍沢は救命の医局に新海がいることに気がついた。


藍沢「わかった」


田中に返事をすると藍沢は俊介に「じゃあな」と一言いってICUを出ていった。



藍沢が医局に入ると新海が待っていた


藍沢「どうした。今日だったろ。トロント行き」


新海「あぁ、これを渡しにきた」


藍沢「カルテ?」


新海「俺の患者だ」


藍沢「フッ。脳外の中で引き継ぎはしたんだろ?もしもの時に備えての予備の引継ぎか?」


新海「まぁな」


藍沢「どの人が一番ヤバイ」


新海「あぁ、急変したらヤバイ順にカルテ化した」


藍沢「了解」


新海「じゃあ、よろしく」


藍沢「お前こそ」


新海「心配いらない。完璧に覚えてきてやる」


藍沢「頼んだ」


そして、新海が医局を出ていった。


藍沢はPCでカルテをみはじめる。


そして、全てに一通り目を通し、ICUに戻っていった。


すると今度は名取が父親のバイタルを確認していた。


名取「まさか、父さんが俺の患者になるとは思ってなかったよ」


将馬「私もお前の患者になるなんて想像してなかった」


名取「骨盤骨折だけだ。イヤなら自分の病院に戻れば」


将馬「いや、治るまではこっちにいさせてもらうよ。向こうに戻ると余計に気を使われる」


名取「そう。なんかあったら今日は俺に直接電話して」


将馬「あぁ」


名取「じゃあ、俺は初療室に戻るから」


将馬「あぁ」



藍沢とすれ違うようにして名取は藍沢の会釈をしてICUを出ていった。


そこに将馬の声が響く。


将馬「藍沢耕作先生、だったかな」


藍沢「何でしょうか」


将馬「脳外のトロント大のレジデントを断ったんだってな」


藍沢「えぇ」


将馬「理由を教えてくれるか」


藍沢「自分たちがフェローのときに同じフェローの仲間がミスをして腕を切断した指導医がいたんです。その後、その先生は腕が繋がったけどリハビリが必要だった。その先生がリハビリを終えて、またこちらに戻ってきてくださったんです。自分はその先生から学ぶことが沢山ある。だから、レジデントに行かなかったんです」


将馬「なるほど」


そこに黒田がきた。


黒田「名取、大丈夫だったか?」


藍沢「黒田先生」


将馬「あぁ。平気だ。だが、息子の患者になってしまったよ」


黒田「そうか」


将馬「藍沢くん。指導医だったのは黒田だろ?」


藍沢「えぇ」


将馬「俺と黒田は昔からの仲だ。その事故も知ってたよ」


藍沢「そうなんですか」


黒田「あぁ。お前が俺の腕を切ったときの話もした」


将馬「それでだ黒田。藍沢くんはお前からまだ救命のスキルを学びたいらしいぞ」


黒田「お前がか?」


藍沢「はい」


黒田「見て学べ」


藍沢「はい」


そこに田中が来た。黒田が田中を呼ぶ


黒田「田中」


田中「はい」


そして、田中が黒田のもとに来る。


黒田「おめでとう」


田中「えっ…」


黒田「いつの間にか結婚してたんだな」


田中「これは、婚約指輪です」


黒田「そうか。相手は」


田中「…ぁ、ぃ、、先生です」


黒田「今、なんて言った」


田中「藍沢先生です」


黒田が藍沢を見る。藍沢の指にも指輪がハメられていた。


黒田「お前が田中の相手なのか」


藍沢「はい」


黒田「ハハハッ。いいじゃないか」


藍沢・田中は目を丸くする。


黒田「お似合いだ。おめでとう」


2人「ありがとうございます」


将馬「この2人か。確かあと2人いたよな。お前の育てたフェローだったってことは君たちも颯馬の指導医か。これからもあいつの事を頼むよ」


2人「はい」


そして、藍沢と田中はICUを出ていった。



黒田「名取、お前の息子も成長したな」


将馬「そうか?」


黒田「あぁ」


将馬「あいつを頼むぞ」


黒田「あぁ」


そして、黒田は短く返事をするとICUを出ていった。



それから5日後、将馬とその運転手、風間親子は退院していった。

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