異世界の観光案内
久々です。
皆様お忘れではないでしょうか?
楽しんでいただけたらよろしいのですが……
「シュー!!!あれ見て!!あれは、なに?」
可愛い
「ねー!シュー早く早く!!!」
可愛い
「シュー、今度はあっちに行ってみたい。」
勇姫は、初めての城下に興奮気味であちこちと行きたがる。
その好奇心旺盛さとかわいさといったら、犯罪の域に達する。
鼻血が出そうなくらい、めちゃくちゃ可愛い。
さすが私の勇姫だ。
あー、早く結婚したい。勇姫のすべてを私のものにしてしまいたい。
「ねーシュー?どうしたの?具合悪いの?」
私が勇姫のかわいさに酔いしれていて反応しなかったからだろう。
少し離れたところにいた勇姫が寄ってきて、上目づかいで私の様子をうかがっている。
身長差もある分私の視界は最高だ。勇姫の谷間がハッキリと……。
「いいえ、そんなことはありませんお嬢様。お嬢様の愛らしさに見とれていたのです。」
途端に赤くなる頬。かわいい。
普段とは違う自分を演出している分思っていることも言いやすい。
そう考えると設定もなかなかいいな。
「そ、そんなことばっか言って……。褒めたって何にも出ないからね!!!」
勇姫から何か物をもらう予定はない。勇姫の心ごと……勇姫のすべてをもらえればそれでいい。
「お嬢様から物をいただく予定はありませんよ。」
「そうなの?いっつもお世話になってるから、なんかお礼したかったんだけどな……。」
「お礼とおっしゃるなら、お嬢様の口づけを一つ、この下僕目にいただけますか?」
勇姫は、顔全体、耳まで赤くした。
「そ、そんなのあげるわけないじゃん!!!」
「それは残念です。」
普段の勇姫もかわいい。
しかし、普段の勇姫は、私を意識していない。
たぶん、この世界での保護者という認識だろう。
だが、それでは駄目なのだ。
私は勇姫の心ごと、体ごと、すべてがほしい。
そのためには、勇姫が成人するまでの1年の間に私に恋をしてもらわなければ困るのだ。
日常から出るのは、普段とは違う環境で私を意識させやすい。
より意識させるためにも、日常では言わないことも言う。
そう決めたんだ。
「もぅ、そんな恥ずかしいことばっか言わなくていいよぉ……。それよりも、物珍しくていろいろ引っぱっちゃったけど、シューのおすすめを教えて?」
上目使いでおねだりは、犯罪だと今ここで決定した。
この場で襲いたくらい可愛い。
だがしかし、顔に出すわけにはいかない。
王として身につけた、ポーカーフェイスの技術を全面で使い、顔を引き締めた。
「お嬢様はどのようなものが見たいですか?」
「んー?アクセサリーとか?あと、お菓子!甘いものがいいなぁー。」
「かしこまりました。甘いものはティータイムのお時間になったら、お連れいたしますね。先に、アクセサリーはいかがでしょう?」
「うん!!!楽しみ!!!」
アクセサリー店で勇姫好みのデザインをリサーチして、婚約指輪、果は結婚指輪に反映してみせる。
そんな決意を持って、アクセサリー店へ――
***
アクセサリー店を数点まわり、勇姫の好みも把握した。
勇姫からの可愛いお願い『みんなにお土産買っちゃダメ?』も叶えた。
今日のデートは最高にいい気分で、幕を閉じそうだ。
勇姫の様子をうかがうと、歩き回ったせいか疲れているように見えた。
時間もいい頃合いであるし、お茶をしたら帰ることに決め、勇姫に声をかけた。
「お嬢様、そろそろお茶になさいませんか?お茶が終わったら帰りましょう。」
「えぇ、まだまだ遊びたいよ。」
「また連れてきますから。」
「本当に?」
「もちろん。私がお嬢様との約束をたがえたことがありますか?」
「……ない。……わかった帰る。……また、本当に連れてきてね?」
「もちろんです。」
***
スイーツが有名で、恋人たちに人気のカフェへ。
目新しいスイーツに大興奮の勇姫。めちゃくちゃかわいい。
また、絶対勇姫を連れてデートする。決意を新たにした。
「お嬢様、私は会計をすましてくるので、少し外でお持ちいただけますか?」
今思えばこの判断が間違いだった。
「うん!いいよ。」
店の中から外が見えることに安心していたんだ。
「あまり遠くには行かないで、見える範囲にいてくださいね。迷子になってしまいますよ。」
「もー!!わかってます。」
勇姫が外に出て、視界の端に勇姫をとらえているから、大丈夫だと思っていたんだ。
会計の店員に声をかけられ、ほんの一瞬視線が外れた。
その一瞬で勇姫は視界から消えた。
急いで店の外に出て、視線をさまよわせる。視界の端に走り去る馬車。
馬車が去った後には、勇姫がつけていたリボンが落ちていた―――。
人さらいにあいました。
オルはぶち切れ寸前です。
今後をお楽しみにしといてください。