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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

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第五十話 オーガス到着

 盗賊襲撃事件から一日――。


 クラン【ホーム】が護衛するロイド商会の商隊は、その後大きな問題もなく街道を進んでいた。


 馬車の車輪が、規則正しい音を響かせる。

 青く広がる空。

 吹き抜ける心地よい風。

 一見すれば、どこまでも平和な旅路だった。


 しかし、ビルセイヤたちは誰一人として警戒を解いていない。


 盗賊たちは捕らえた。

 依頼も順調だ。

 それでも、あの襲撃には不可解な点が多すぎた。


 黒いローブの人物。

 蛇の紋章。

 そして、盗賊たちへ情報を流した何者か。


 全てが一本の線で繋がっている気がしてならない。


 だが、今は依頼が最優先だった。


 商隊を無事に目的地へ送り届ける。

 それが冒険者としての責任であり、クラン【ホーム】の最初の仕事でもある。


◇◇◇


「見えてきたぞ!」


 先頭の馬車から、ロイドの声が響いた。


 全員が顔を上げる。


 その先に見えたのは、巨大な城壁だった。


 高く積み上げられた石壁。

 堅牢な城門。

 その周囲を行き交う無数の人々と荷馬車。


 商業都市オーガス。


 エメラルド・グリーンよりもさらに大きな都市。

 物流と商売で栄える、交易の要所だ。


「おお……」


 ツバサが感嘆の声を漏らした。


「想像以上に大きいな」


「さすが商業都市ですね」


 エミリアも目を輝かせる。


 セシリアは口元に笑みを浮かべた。


「これなら買い物も楽しそうね」


「嫌な予感しかしないな……」


 ぼそりと呟いたツバサの言葉に、セシリアがにっこりと笑う。


「何か言った?」


「何も言ってません」


 即答だった。


 周囲から笑いが漏れる。


 こういう何気ないやり取りも、少しずつクランらしくなってきた証拠だろう。

 戦いの中だけではない。

 こうして肩の力を抜いて笑い合える時間もまた、仲間の絆を深めていくのだ。


◇◇◇


 やがて商隊は城門へ到着する。


 門番たちは慣れた様子で荷物と書類を確認していた。

 ロイドが通行証を提出し、商会印の入った積荷目録を見せる。


 しばらくして、門番が頷いた。


「問題なし。通行を許可する」


 重々しい音を立てて城門が開かれる。


 こうして一行は、ついにオーガスへ足を踏み入れた。


◇◇◇


 街の光景は圧巻だった。


 大通りの両側には、数え切れないほどの店舗が並んでいる。


 武器屋。

 防具屋。

 食料品店。

 魔道具店。

 布を扱う店に、香辛料を売る露店。

 さらには大道芸人や吟遊詩人の姿まで見える。


 人、人、人。


 商人の呼び声。

 客の値切る声。

 荷車の軋む音。

 焼きたてのパンや香辛料の匂いが風に乗って流れてくる。


 まさに商業都市と呼ぶに相応しい賑わいだった。


「すごい……」


 エミリアが思わず呟く。


「エメラルド・グリーンより、ずっと大きいですね」


「ああ」


 ビルセイヤも頷いた。


 物資の流れが活発だ。

 商人たちの活気も凄まじい。

 街そのものが、生き物のように脈打っている。


 そして何より――鍛冶師としての血が騒ぐ。


 これだけの商業都市なら、良質な鉱石や珍しい素材、見たことのない武具が流れてきてもおかしくない。

 工房や武器屋を見て回るだけでも、かなり面白そうだった。


 オーガス。

 この街には、多くの可能性がある。


◇◇◇


 やがて商隊は商業区の倉庫街へ到着した。


 石造りの大きな倉庫が立ち並び、多くの荷馬車と荷運び人が行き交っている。

 ロイド商会の従業員たちが慌ただしく動き回り、商品の搬入作業が始まった。


 その様子を確認したロイドが、改めてビルセイヤたちへ向き直る。


「皆さん、本当にありがとうございました」


 深々と頭を下げた。


「皆さんのお陰で、商品を無事届けることができました」


 その顔には、心からの感謝が浮かんでいる。


「仕事だから気にするな」


 ビルセイヤが答える。


 だがロイドは首を横に振った。


「それでも感謝します。盗賊まで撃退していただきましたから」


 そう言って差し出したのは、依頼報酬だった。


 銀板五枚。


 約束通りの金額である。


 さらに。


「こちらは私個人からのお礼です」


 別の袋を差し出す。


 中には銀貨がぎっしり詰まっていた。


「多すぎないか?」


 ビルセイヤが苦笑する。


「命を救われた礼です」


 ロイドは笑った。


「どうか受け取ってください。私だけではなく、商会の者たちも皆、そう思っています」


 周囲の商人たちも何度も頭を下げていた。

 それを見て、ビルセイヤは素直に受け取ることにする。


「分かった。ありがたく頂こう」


 これで依頼主との関係も悪くない形で終えられた。

 商人との縁は、冒険者にとっても鍛冶師にとっても大きな財産になる。


 こうして、クラン【ホーム】最初の依頼は無事完了した。


 しかも、大成功と言っていい結果である。


◇◇◇


 その後、一行はオーガス冒険者ギルドへ向かった。


 依頼完了報告を行うためだ。


 オーガス支部は、エメラルド・グリーン支部よりもさらに巨大だった。


 広いホール。

 大量の依頼掲示板。

 酒場スペースでは既に昼間から冒険者たちが騒いでいる。

 受付窓口の数も多く、ひっきりなしに人が出入りしていた。


「さすが大都市のギルドだな」


 ツバサが周囲を見回す。


「人の数が全然違う」


「冒険者だけじゃなく、商人や職人も多そうですね」


 エミリアも興味深そうに視線を巡らせる。


 受付で依頼書を提出すると、受付嬢が書類を確認しながら微笑んだ。


「ロイド商会の護衛依頼、完了ですね」


「はい」


 ビルセイヤが頷く。


「途中で盗賊の襲撃を受けましたが、依頼主・積荷ともに無事です」


「盗賊襲撃の件も報告に上がっています」


 受付嬢は手元の書類をめくりながら続けた。


「盗賊の拘束、護衛対象の保護、積荷の損失なし。確認いたしました」

「お疲れ様でした」


 正式な依頼達成。


 クラン【ホーム】の初依頼は、完全成功で幕を閉じた。


 誰一人欠けることなく。

 怪我人も出さず。

 最高の結果だった。


 セシリアが小さく息を吐く。


「初依頼としては上出来ね」


「ええ」


 エミリアも嬉しそうに微笑んだ。


「連携も問題ありませんでした」


「まあ、俺たちならこんなもんだろ」


 ツバサが得意げに胸を張る。


 だが、その言葉にセシリアが呆れたように肩を竦めた。


「調子に乗ると次で痛い目を見るわよ?」


「うっ……否定できないのが怖いな」


 また小さな笑いが起こる。


 緊張の続いた護衛任務を終えたからこそ、その笑いはどこか心地よかった。


◇◇◇


 その夜。


 宿屋の一室。


 仲間たちが眠りについた後も、ビルセイヤは一人起きていた。


 机の上には、一枚の黒い金属板が置かれている。


 蛇の紋章が刻まれた、不気味な証。


 ランプの灯りに照らされ、その模様が妖しく浮かび上がる。


「……何者なんだ」


 小さく呟く。


 依頼は終わった。

 クラン【ホーム】としての初仕事は成功した。


 だが、問題は終わっていない。


 むしろ――始まったばかりだ。


 黒ローブの人物。

 謎の組織。

 蛇の紋章。


 あの盗賊たちは、ただの使い捨ての駒に過ぎなかったのかもしれない。

 だとすれば、本命はまだ別にいる。


 そして、その何者かは今もどこかで動いている。


 ビルセイヤは金属板を手に取り、指で紋章をなぞった。


 冷たい感触が、嫌な予感をより鮮明にする。


 オーガスに来たのは、ただの護衛依頼のためだった。

 だが、この街で終わる気がしない。


 蛇の紋章が示す何か。

 黒幕の正体。

 そして、その先に待つもの。


 全てが、この商業都市オーガスへ繋がっている――そんな気がしてならなかった。


◇◇◇


 窓の外では、夜のオーガスがまだ賑わっている。


 遠くから聞こえる人々の笑い声。

 酒場の喧騒。

 遅くまで働く荷運び人の怒鳴り声。


 巨大な都市は、夜になっても眠らない。


 ビルセイヤはゆっくりと立ち上がり、窓の外を見た。


「……明日から、少し探ってみるか」


 誰に聞かせるでもなく呟く。


 依頼は終わった。

 ならば次は、自分たちの番だ。


 蛇の紋章の正体を。

 この街に潜む気配を。

 黒幕へと続く足跡を。


 追う価値はある。


 そしてビルセイヤは、まだ知らない。


 この商業都市オーガスで、新たな仲間との出会いと、更なる陰謀が待ち受けていることを――。


第二章 第五十話


「オーガス到着」


――続く。

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