第四十五話 クランホーム始動
クラン【ホーム】が誕生してから三日後――。
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ビルセイヤたちは朝早くから冒険者ギルドを訪れていた。
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目的はただ一つ。
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クラン登録である。
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ギルド内は朝にもかかわらず活気に満ちていた。
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依頼を探す冒険者。
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討伐帰りの冒険者。
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仲間と談笑する者たち。
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そんな賑やかな空間を進み、一行は受付カウンターへ向かう。
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「クラン登録をお願いします」
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ビルセイヤがそう告げると、受付嬢は一瞬だけ驚いた表情を見せた。
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だがすぐに営業用の笑顔へ戻る。
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「かしこまりました」
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「クラン名をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
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ビルセイヤは仲間たちへ視線を向けた。
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セシリア。
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エミリア。
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ツバサ。
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マイ。
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イリス。
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そしてリリアとミリア。
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全員が静かに頷く。
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ビルセイヤは微笑んだ。
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「クラン名は――ホームです」
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「クラン【ホーム】ですね」
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受付嬢が丁寧に書類へ記入していく。
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その様子を見ていると、少しずつ実感が湧いてきた。
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本当にクランを作るのだと。
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やがて受付嬢が立ち上がる。
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「少々お待ちください」
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奥へ消えていく。
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数分後。
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ギルド支部長が姿を現した。
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「話は聞いたぞ」
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豪快に笑う。
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「お前たちらしい名前じゃないか」
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ホーム。
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帰る場所。
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家族のような仲間が集う場所。
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その由来を聞いた支部長も気に入ったらしい。
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「登録は問題なく完了だ」
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「今日から正式なクランになる」
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そう言って差し出されたのは一枚の金属板だった。
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銀色に輝くクラン証。
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中央には家を模した紋章。
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そして下には刻まれている。
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【HOME】
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ビルセイヤはそれを両手で受け取った。
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思った以上に重い。
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金属の重みではない。
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仲間を預かる責任。
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クランを導く責任。
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その重さだった。
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「ありがとう」
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自然とそんな言葉が口をついて出た。
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その時だった。
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「よう!」
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後ろから声が掛かる。
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振り返ると、数人の冒険者たちが立っていた。
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見覚えがある。
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スタンピード防衛戦で共に戦った冒険者たちだ。
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「クラン結成おめでとう!」
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「噂は聞いたぜ!」
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「盗賊団討伐も見事だったな!」
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次々と祝福の言葉が飛んでくる。
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握手を求められる。
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肩を叩かれる。
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笑顔を向けられる。
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いつの間にか多くの冒険者たちが集まっていた。
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「今度一緒に依頼を受けようぜ!」
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「迷宮攻略の時は声を掛けてくれ!」
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歓迎ムード一色だった。
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ビルセイヤは少し照れ臭くなる。
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そんな様子を見ていたツバサが笑った。
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「すっかり有名人だな」
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「勘弁してくれ」
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ビルセイヤは肩を竦めた。
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だが悪い気分ではない。
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仲間として認められている証だからだ。
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その後、一行は屋敷へ戻った。
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クラン【ホーム】としての初会議を行うためである。
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食堂にはミリアが腕を振るった昼食が並んでいた。
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焼き立ての白パン。
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具沢山のシチュー。
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新鮮な野菜のサラダ。
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見ているだけで腹が鳴りそうな料理ばかりだ。
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「まずは乾杯だな!」
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ツバサが果実ジュースを掲げる。
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「クランホームの門出に!」
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「乾杯!」
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全員の声が重なった。
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果実ジュースの入ったコップが軽く触れ合う。
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笑顔が広がる。
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新しい組織。
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新しい仲間たち。
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そして新しい未来。
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誰もが期待に胸を膨らませていた。
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食事が一段落した頃。
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ビルセイヤが真面目な表情になる。
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「今後の方針を決めよう」
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自然と空気が引き締まった。
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「まず新人募集は急がない」
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「信頼できる仲間だけを迎える」
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その言葉にツバサが大きく頷く。
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「賛成だ」
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「人数だけ増やしても意味がない」
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マイも続く。
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「家族みたいなクランですから」
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「誰でもいいわけではありません」
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イリスも微笑む。
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「まずは土台作りですね」
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ホームは強さだけを求めるクランではない。
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信頼。
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絆。
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仲間を大切にすること。
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それこそがホームの理念だった。
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そして会議が終わる頃。
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リリアが帳簿を取り出す。
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「クラン資金の管理は私が担当します」
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ミリアも元気よく手を挙げた。
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「屋敷の管理と備品整理は任せてください!」
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二人もまたクランを支える大切な存在だった。
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戦う力だけが強さではない。
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仲間を支える力もまた大切な力だ。
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そんな二人の姿を見ながら、ビルセイヤは静かに微笑んだ。
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クラン【ホーム】。
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まだ始まったばかりの小さな組織。
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だがきっと大きくなる。
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仲間たちと共に。
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家族と共に。
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誰もが帰りたくなる場所へ。
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そんな未来を思い描きながら、ビルセイヤはクラン証をそっと見つめるのだった。
第二章 第四十五話
「クランホーム始動」
――続く。




