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第四十三話 クラン結成

 盗賊団討伐からしばらく経ったある日――。


◇◇◇


 ビルセイヤは冒険者ギルドの掲示板の前に立っていた。


◇◇◇


 依頼書が所狭しと貼られている。


◇◇◇


 薬草採取。


◇◇◇


 魔物討伐。


◇◇◇


 商人護衛。


◇◇◇


 日々、多くの冒険者たちがここで依頼を選び、生活の糧を得ている。


◇◇◇


 そんな中、一枚の依頼書がビルセイヤの目を引いた。


◇◇◇


【大規模魔物討伐隊募集】


◇◇◇


 街道周辺に出現した魔物の群れの討伐依頼だった。


◇◇◇


 報酬は高額。


◇◇◇


 危険度も高い。


◇◇◇


 そして何より特徴的だったのは参加条件である。


◇◇◇


 単独パーティ不可。


◇◇◇


 複数パーティによる合同作戦。


◇◇◇


 つまり、大人数による組織的な戦闘を前提としていた。


◇◇◇


「なるほどな……」


◇◇◇


 ビルセイヤは依頼書を見つめながら呟く。


◇◇◇


 確かに最近は依頼の規模が大きくなってきていた。


◇◇◇


 今までは数人のパーティで十分だった。


◇◇◇


 だがこれから先は違う。


◇◇◇


 大規模討伐。


◇◇◇


 ダンジョン攻略。


◇◇◇


 スタンピードへの対応。


◇◇◇


 より大きな力が必要になる。


◇◇◇


「やっぱり見てたか」


◇◇◇


 後ろから声が掛かった。


◇◇◇


 振り返る。


◇◇◇


 そこにはツバサが立っていた。


◇◇◇


 さらにマイとイリスの姿もある。


◇◇◇


「ツバサか」


◇◇◇


「ちょうどお前に話があった」


◇◇◇


 普段より少し真剣な表情。


◇◇◇


 ビルセイヤは何となく察した。


◇◇◇


 きっと同じことを考えている。


◇◇◇


「場所を変えるか」


◇◇◇


「そうだな」


◇◇◇


 一行はギルド併設の食堂へ移動した。


◇◇◇


 昼前ということもあり、店内は比較的静かだった。


◇◇◇


 果実ジュースを注文し、席に着く。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


 ツバサが口を開いた。


◇◇◇


「ビルセイヤ」


◇◇◇


「クランを作らないか?」


◇◇◇


 単刀直入だった。


◇◇◇


 ビルセイヤは少し驚いたものの、すぐに納得する。


◇◇◇


 やはり同じ考えだった。


◇◇◇


「クランか」


◇◇◇


「そうだ」


◇◇◇


 ツバサは頷く。


◇◇◇


 冒険者ギルドにおけるクラン。


◇◇◇


 それは二つ以上のパーティが所属する上位組織だ。


◇◇◇


 通常の依頼だけでなく、大規模討伐や迷宮攻略にも対応できる。


◇◇◇


 人数が増えれば役割分担もできる。


◇◇◇


 前衛。


◇◇◇


 後衛。


◇◇◇


 索敵。


◇◇◇


 補給。


◇◇◇


 支援。


◇◇◇


 今後を考えるなら必要な存在だった。


◇◇◇


「今回の依頼もそうだ」


◇◇◇


 ツバサは掲示板の方を指差した。


◇◇◇


「俺たちは強くなってる」


◇◇◇


「でも人数には限界がある」


◇◇◇


「これから先を見据えるなら組織が必要だ」


◇◇◇


 マイも静かに頷いた。


◇◇◇


「私も賛成です」


◇◇◇


「皆さんと一緒なら安心できます」


◇◇◇


 イリスも微笑む。


◇◇◇


「クランなら新人育成もできますからね」


◇◇◇


 その言葉にビルセイヤは考え込む。


◇◇◇


 確かに悪くない。


◇◇◇


 いや。


◇◇◇


 むしろ必要だろう。


◇◇◇


 これから先、仲間は増える。


◇◇◇


 活動範囲も広がる。


◇◇◇


 その時に組織が無ければ動きにくい。


◇◇◇


「名前は考えてあるのか?」


◇◇◇


 ビルセイヤが尋ねた。


◇◇◇


 するとツバサはニヤリと笑う。


◇◇◇


「もちろんだ」


◇◇◇


「ただしリーダーはお前だ」


◇◇◇


「俺は副リーダーをやる」


◇◇◇


 即答だった。


◇◇◇


「勝手に決めるな」


◇◇◇


 ビルセイヤが苦笑する。


◇◇◇


 しかし周囲を見ると、誰も反対していない。


◇◇◇


 マイ。


◇◇◇


 イリス。


◇◇◇


 そして後から合流したセシリアたちも同じ考えらしい。


◇◇◇


「当然でしょ」


◇◇◇


 セシリアが笑う。


◇◇◇


「一番強いんだから」


◇◇◇


「それだけじゃありません」


◇◇◇


 エミリアも微笑んだ。


◇◇◇


「皆が自然とビルセイヤさんについて行っています」


◇◇◇


 リーダーとは肩書きではない。


◇◇◇


 人が集まる存在こそがリーダーだ。


◇◇◇


 その言葉にビルセイヤは小さく息を吐いた。


◇◇◇


「分かった」


◇◇◇


「そこまで言うなら引き受けよう」


◇◇◇


 一瞬の静寂。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


「よしっ!!」


◇◇◇


 ツバサが勢いよく立ち上がる。


◇◇◇


「決まりだな!」


◇◇◇


 満面の笑みだった。


◇◇◇


 その様子に全員が笑う。


◇◇◇


 こうして。


◇◇◇


 ビルセイヤをクランリーダーとする新たな組織の設立が決定した。


◇◇◇


 今はまだ小さな集まり。


◇◇◇


 だが将来、このクランは王国中に名を轟かせることになる。


◇◇◇


 英雄たちが集う伝説のクランへと成長していくのだ。


◇◇◇


 そしてその日の夕方。


◇◇◇


 屋敷へ戻ったビルセイヤはリリアとミリアへ報告した。


◇◇◇


「クランを作ることになった」


◇◇◇


「本当ですか!?」


◇◇◇


 リリアが目を丸くする。


◇◇◇


「凄いです!」


◇◇◇


 ミリアも嬉しそうに声を上げた。


◇◇◇


 二人は戦闘員ではない。


◇◇◇


 だがクランを支える重要な存在だ。


◇◇◇


 リリアは家計と工房管理。


◇◇◇


 ミリアは屋敷運営と生活管理。


◇◇◇


 仲間たちが安心して冒険できるのは、二人が後方を支えているからでもある。


◇◇◇


 ビルセイヤはそんな二人を見て微笑んだ。


◇◇◇


 仲間が増えた。


◇◇◇


 家族も増えた。


◇◇◇


 そして今、新しい組織が生まれようとしている。


◇◇◇


 未来へ向けた大きな一歩が、静かに踏み出されたのだった。


第二章 第四十三話


「クラン結成」


――続く。

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