第四十三話 クラン結成
盗賊団討伐からしばらく経ったある日――。
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ビルセイヤは冒険者ギルドの掲示板の前に立っていた。
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依頼書が所狭しと貼られている。
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薬草採取。
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魔物討伐。
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商人護衛。
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日々、多くの冒険者たちがここで依頼を選び、生活の糧を得ている。
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そんな中、一枚の依頼書がビルセイヤの目を引いた。
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【大規模魔物討伐隊募集】
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街道周辺に出現した魔物の群れの討伐依頼だった。
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報酬は高額。
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危険度も高い。
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そして何より特徴的だったのは参加条件である。
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単独パーティ不可。
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複数パーティによる合同作戦。
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つまり、大人数による組織的な戦闘を前提としていた。
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「なるほどな……」
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ビルセイヤは依頼書を見つめながら呟く。
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確かに最近は依頼の規模が大きくなってきていた。
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今までは数人のパーティで十分だった。
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だがこれから先は違う。
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大規模討伐。
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ダンジョン攻略。
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スタンピードへの対応。
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より大きな力が必要になる。
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「やっぱり見てたか」
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後ろから声が掛かった。
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振り返る。
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そこにはツバサが立っていた。
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さらにマイとイリスの姿もある。
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「ツバサか」
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「ちょうどお前に話があった」
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普段より少し真剣な表情。
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ビルセイヤは何となく察した。
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きっと同じことを考えている。
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「場所を変えるか」
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「そうだな」
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一行はギルド併設の食堂へ移動した。
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昼前ということもあり、店内は比較的静かだった。
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果実ジュースを注文し、席に着く。
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そして。
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ツバサが口を開いた。
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「ビルセイヤ」
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「クランを作らないか?」
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単刀直入だった。
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ビルセイヤは少し驚いたものの、すぐに納得する。
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やはり同じ考えだった。
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「クランか」
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「そうだ」
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ツバサは頷く。
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冒険者ギルドにおけるクラン。
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それは二つ以上のパーティが所属する上位組織だ。
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通常の依頼だけでなく、大規模討伐や迷宮攻略にも対応できる。
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人数が増えれば役割分担もできる。
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前衛。
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後衛。
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索敵。
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補給。
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支援。
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今後を考えるなら必要な存在だった。
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「今回の依頼もそうだ」
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ツバサは掲示板の方を指差した。
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「俺たちは強くなってる」
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「でも人数には限界がある」
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「これから先を見据えるなら組織が必要だ」
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マイも静かに頷いた。
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「私も賛成です」
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「皆さんと一緒なら安心できます」
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イリスも微笑む。
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「クランなら新人育成もできますからね」
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その言葉にビルセイヤは考え込む。
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確かに悪くない。
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いや。
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むしろ必要だろう。
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これから先、仲間は増える。
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活動範囲も広がる。
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その時に組織が無ければ動きにくい。
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「名前は考えてあるのか?」
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ビルセイヤが尋ねた。
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するとツバサはニヤリと笑う。
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「もちろんだ」
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「ただしリーダーはお前だ」
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「俺は副リーダーをやる」
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即答だった。
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「勝手に決めるな」
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ビルセイヤが苦笑する。
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しかし周囲を見ると、誰も反対していない。
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マイ。
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イリス。
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そして後から合流したセシリアたちも同じ考えらしい。
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「当然でしょ」
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セシリアが笑う。
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「一番強いんだから」
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「それだけじゃありません」
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エミリアも微笑んだ。
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「皆が自然とビルセイヤさんについて行っています」
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リーダーとは肩書きではない。
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人が集まる存在こそがリーダーだ。
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その言葉にビルセイヤは小さく息を吐いた。
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「分かった」
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「そこまで言うなら引き受けよう」
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一瞬の静寂。
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そして。
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「よしっ!!」
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ツバサが勢いよく立ち上がる。
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「決まりだな!」
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満面の笑みだった。
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その様子に全員が笑う。
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こうして。
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ビルセイヤをクランリーダーとする新たな組織の設立が決定した。
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今はまだ小さな集まり。
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だが将来、このクランは王国中に名を轟かせることになる。
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英雄たちが集う伝説のクランへと成長していくのだ。
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そしてその日の夕方。
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屋敷へ戻ったビルセイヤはリリアとミリアへ報告した。
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「クランを作ることになった」
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「本当ですか!?」
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リリアが目を丸くする。
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「凄いです!」
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ミリアも嬉しそうに声を上げた。
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二人は戦闘員ではない。
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だがクランを支える重要な存在だ。
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リリアは家計と工房管理。
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ミリアは屋敷運営と生活管理。
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仲間たちが安心して冒険できるのは、二人が後方を支えているからでもある。
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ビルセイヤはそんな二人を見て微笑んだ。
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仲間が増えた。
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家族も増えた。
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そして今、新しい組織が生まれようとしている。
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未来へ向けた大きな一歩が、静かに踏み出されたのだった。
第二章 第四十三話
「クラン結成」
――続く。




