第四十話 帰還と新たな仲間
盗賊団討伐から二日後――。
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ビルセイヤたちはエメラルド・グリーンへ帰還していた。
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北街道を脅かしていた盗賊団は壊滅。
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奪われた荷物も奪還。
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さらに囚われていた少女の救出にも成功した。
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依頼としては文句なしの大成功である。
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街の門が見えてきた時だった。
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「おおっ! ビルセイヤ殿!」
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聞き慣れた声が響く。
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商人ギルバードだった。
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丸々とした身体を揺らしながら、こちらへ駆け寄ってくる。
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その表情は満面の笑みだ。
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「本当にやってくれましたな!」
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「流石ですぞ!」
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何度も頭を下げるギルバード。
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今回奪還された荷物の中には、彼の商会の商品も数多く含まれていた。
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被害を最小限に抑えられたのは、間違いなくビルセイヤたちのおかげだった。
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「礼を言うのはまだ早い」
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ビルセイヤが苦笑する。
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「盗賊たちの引き渡しが終わってからだ」
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「それでも感謝しておりますぞ!」
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ギルバードは豪快に笑った。
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その様子に周囲の商人たちも安堵の表情を浮かべる。
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北街道の安全回復は、それだけ大きな意味を持っていた。
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その後、一行は冒険者ギルドへ向かった。
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依頼達成の報告。
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盗賊団の引き渡し。
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奪還した荷物の確認。
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ギルド内はすぐに騒然となった。
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「盗賊団を壊滅させただと!?」
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「頭領まで討伐したのか!」
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「しかも生存者を救出!?」
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冒険者たちの視線が一斉に集まる。
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驚き。
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羨望。
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そして尊敬。
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様々な感情が入り混じっていた。
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支部長も苦笑しながら報告書を閉じる。
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「まったく……」
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「お前たちは本当に規格外だな」
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そう言いながら報酬袋を差し出した。
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ずっしりと重い。
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盗賊団討伐。
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頭領討伐。
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盗品回収。
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生存者救出。
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全ての功績が加算された結果だった。
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「ありがたく受け取る」
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ビルセイヤが頭を下げる。
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その時だった。
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支部長の視線が後方へ向く。
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そこにはミリアがいた。
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まだ少し緊張している。
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だが洞窟で出会った時とは違う。
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瞳に光が戻っていた。
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「その娘が救出した子か」
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「はい」
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ビルセイヤが答える。
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支部長は顎へ手を当てた。
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「身元は分かったのか?」
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「まだです」
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その答えに支部長も難しい表情を浮かべる。
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盗賊に家族を奪われた少女。
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帰る場所はない。
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この世界では珍しくない悲劇だった。
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だからこそ重い。
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沈黙が流れる。
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そして。
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「しばらく俺たちが面倒を見る」
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ビルセイヤが静かに言った。
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迷いはなかった。
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当然のような口調だった。
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支部長は小さく笑う。
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「お前らしいな」
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「好きにしろ」
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許可は出た。
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ミリアは思わず胸元を押さえる。
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また居場所を失わずに済んだ。
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それが何より嬉しかった。
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ギルドを出た後。
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一行は屋敷へ向かう。
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市場を通る。
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商人の呼び声。
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露店の賑わい。
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焼きたてのパンの香り。
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子供たちの笑い声。
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何気ない日常。
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だがミリアにとっては眩しい光景だった。
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盗賊に囚われていた日々。
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暗い牢屋。
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絶望しかなかった時間。
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それらとは真逆の世界だった。
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「どうした?」
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隣を歩くビルセイヤが尋ねる。
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ミリアは少しだけ空を見上げた。
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「綺麗だなって思って」
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その言葉にビルセイヤも周囲を見回す。
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「そうだな」
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ただそれだけの会話。
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けれどミリアの胸は温かくなった。
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普通の会話。
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普通の日常。
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それがこんなにも嬉しい。
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やがて屋敷へ到着する。
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立派な建物を前にして、ミリアは思わず足を止めた。
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「すごい……」
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感嘆の声が漏れる。
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するとビルセイヤは自然な口調で言った。
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「今日からここが君の家だ」
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その言葉にミリアの身体が震える。
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家。
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帰る場所。
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もう二度と手に入らないと思っていたもの。
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失ったはずの居場所。
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それを目の前の青年は当然のように差し出してくれた。
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涙が滲む。
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「ありがとう……ございます」
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深く頭を下げる。
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セシリアが優しく肩を叩いた。
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「これからよろしくね」
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エミリアも微笑む。
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「困ったことがあれば何でも相談してください」
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ツバサは腕を組みながら笑った。
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「料理ができるなら大歓迎だぞ」
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その言葉に全員が笑う。
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ミリアも思わず笑顔になった。
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洞窟で見せた怯えた表情ではない。
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年相応の少女の笑顔だった。
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こうして盗賊団討伐は幕を閉じた。
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そして同時に。
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ビルセイヤたちの新しい日常が始まる。
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未来の良妻。
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未来の家族。
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ビルセイヤの人生を支えることになる少女。
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ミリアとの新たな物語が、静かに始まろうとしていた。
第二章 第四十話
「帰還と新たな仲間」
――続く。




