表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/154

第四十話 帰還と新たな仲間

 盗賊団討伐から二日後――。


◇◇◇


 ビルセイヤたちはエメラルド・グリーンへ帰還していた。


◇◇◇


 北街道を脅かしていた盗賊団は壊滅。


◇◇◇


 奪われた荷物も奪還。


◇◇◇


 さらに囚われていた少女の救出にも成功した。


◇◇◇


 依頼としては文句なしの大成功である。


◇◇◇


 街の門が見えてきた時だった。


◇◇◇


「おおっ! ビルセイヤ殿!」


◇◇◇


 聞き慣れた声が響く。


◇◇◇


 商人ギルバードだった。


◇◇◇


 丸々とした身体を揺らしながら、こちらへ駆け寄ってくる。


◇◇◇


 その表情は満面の笑みだ。


◇◇◇


「本当にやってくれましたな!」


◇◇◇


「流石ですぞ!」


◇◇◇


 何度も頭を下げるギルバード。


◇◇◇


 今回奪還された荷物の中には、彼の商会の商品も数多く含まれていた。


◇◇◇


 被害を最小限に抑えられたのは、間違いなくビルセイヤたちのおかげだった。


◇◇◇


「礼を言うのはまだ早い」


◇◇◇


 ビルセイヤが苦笑する。


◇◇◇


「盗賊たちの引き渡しが終わってからだ」


◇◇◇


「それでも感謝しておりますぞ!」


◇◇◇


 ギルバードは豪快に笑った。


◇◇◇


 その様子に周囲の商人たちも安堵の表情を浮かべる。


◇◇◇


 北街道の安全回復は、それだけ大きな意味を持っていた。


◇◇◇


 その後、一行は冒険者ギルドへ向かった。


◇◇◇


 依頼達成の報告。


◇◇◇


 盗賊団の引き渡し。


◇◇◇


 奪還した荷物の確認。


◇◇◇


 ギルド内はすぐに騒然となった。


◇◇◇


「盗賊団を壊滅させただと!?」


◇◇◇


「頭領まで討伐したのか!」


◇◇◇


「しかも生存者を救出!?」


◇◇◇


 冒険者たちの視線が一斉に集まる。


◇◇◇


 驚き。


◇◇◇


 羨望。


◇◇◇


 そして尊敬。


◇◇◇


 様々な感情が入り混じっていた。


◇◇◇


 支部長も苦笑しながら報告書を閉じる。


◇◇◇


「まったく……」


◇◇◇


「お前たちは本当に規格外だな」


◇◇◇


 そう言いながら報酬袋を差し出した。


◇◇◇


 ずっしりと重い。


◇◇◇


 盗賊団討伐。


◇◇◇


 頭領討伐。


◇◇◇


 盗品回収。


◇◇◇


 生存者救出。


◇◇◇


 全ての功績が加算された結果だった。


◇◇◇


「ありがたく受け取る」


◇◇◇


 ビルセイヤが頭を下げる。


◇◇◇


 その時だった。


◇◇◇


 支部長の視線が後方へ向く。


◇◇◇


 そこにはミリアがいた。


◇◇◇


 まだ少し緊張している。


◇◇◇


 だが洞窟で出会った時とは違う。


◇◇◇


 瞳に光が戻っていた。


◇◇◇


「その娘が救出した子か」


◇◇◇


「はい」


◇◇◇


 ビルセイヤが答える。


◇◇◇


 支部長は顎へ手を当てた。


◇◇◇


「身元は分かったのか?」


◇◇◇


「まだです」


◇◇◇


 その答えに支部長も難しい表情を浮かべる。


◇◇◇


 盗賊に家族を奪われた少女。


◇◇◇


 帰る場所はない。


◇◇◇


 この世界では珍しくない悲劇だった。


◇◇◇


 だからこそ重い。


◇◇◇


 沈黙が流れる。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


「しばらく俺たちが面倒を見る」


◇◇◇


 ビルセイヤが静かに言った。


◇◇◇


 迷いはなかった。


◇◇◇


 当然のような口調だった。


◇◇◇


 支部長は小さく笑う。


◇◇◇


「お前らしいな」


◇◇◇


「好きにしろ」


◇◇◇


 許可は出た。


◇◇◇


 ミリアは思わず胸元を押さえる。


◇◇◇


 また居場所を失わずに済んだ。


◇◇◇


 それが何より嬉しかった。


◇◇◇


 ギルドを出た後。


◇◇◇


 一行は屋敷へ向かう。


◇◇◇


 市場を通る。


◇◇◇


 商人の呼び声。


◇◇◇


 露店の賑わい。


◇◇◇


 焼きたてのパンの香り。


◇◇◇


 子供たちの笑い声。


◇◇◇


 何気ない日常。


◇◇◇


 だがミリアにとっては眩しい光景だった。


◇◇◇


 盗賊に囚われていた日々。


◇◇◇


 暗い牢屋。


◇◇◇


 絶望しかなかった時間。


◇◇◇


 それらとは真逆の世界だった。


◇◇◇


「どうした?」


◇◇◇


 隣を歩くビルセイヤが尋ねる。


◇◇◇


 ミリアは少しだけ空を見上げた。


◇◇◇


「綺麗だなって思って」


◇◇◇


 その言葉にビルセイヤも周囲を見回す。


◇◇◇


「そうだな」


◇◇◇


 ただそれだけの会話。


◇◇◇


 けれどミリアの胸は温かくなった。


◇◇◇


 普通の会話。


◇◇◇


 普通の日常。


◇◇◇


 それがこんなにも嬉しい。


◇◇◇


 やがて屋敷へ到着する。


◇◇◇


 立派な建物を前にして、ミリアは思わず足を止めた。


◇◇◇


「すごい……」


◇◇◇


 感嘆の声が漏れる。


◇◇◇


 するとビルセイヤは自然な口調で言った。


◇◇◇


「今日からここが君の家だ」


◇◇◇


 その言葉にミリアの身体が震える。


◇◇◇


 家。


◇◇◇


 帰る場所。


◇◇◇


 もう二度と手に入らないと思っていたもの。


◇◇◇


 失ったはずの居場所。


◇◇◇


 それを目の前の青年は当然のように差し出してくれた。


◇◇◇


 涙が滲む。


◇◇◇


「ありがとう……ございます」


◇◇◇


 深く頭を下げる。


◇◇◇


 セシリアが優しく肩を叩いた。


◇◇◇


「これからよろしくね」


◇◇◇


 エミリアも微笑む。


◇◇◇


「困ったことがあれば何でも相談してください」


◇◇◇


 ツバサは腕を組みながら笑った。


◇◇◇


「料理ができるなら大歓迎だぞ」


◇◇◇


 その言葉に全員が笑う。


◇◇◇


 ミリアも思わず笑顔になった。


◇◇◇


 洞窟で見せた怯えた表情ではない。


◇◇◇


 年相応の少女の笑顔だった。


◇◇◇


 こうして盗賊団討伐は幕を閉じた。


◇◇◇


 そして同時に。


◇◇◇


 ビルセイヤたちの新しい日常が始まる。


◇◇◇


 未来の良妻。


◇◇◇


 未来の家族。


◇◇◇


 ビルセイヤの人生を支えることになる少女。


◇◇◇


 ミリアとの新たな物語が、静かに始まろうとしていた。


第二章 第四十話


「帰還と新たな仲間」


――続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ