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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第三十八話 洞窟の奥の少女

 盗賊団との戦いは終わった。


◇◇◇


 洞窟前には拘束された盗賊たちが並び、頭領だった怪物の亡骸が横たわっている。


◇◇◇


 依頼は成功。


◇◇◇


 商人たちを苦しめていた盗賊団は壊滅した。


◇◇◇


 本来なら、ここで任務完了だ。


◇◇◇


 しかし――。


◇◇◇


「まだ終わってない気がするんだ」


◇◇◇


 洞窟の入口を見つめながら、ビルセイヤは静かに呟いた。


◇◇◇


 その言葉にセシリアが頷く。


◇◇◇


「私も同じことを考えてたわ」


◇◇◇


「何か引っ掛かるのよね」


◇◇◇


 Bランク冒険者として培った勘。


◇◇◇


 それが警鐘を鳴らしていた。


◇◇◇


「盗賊団の規模に対して、押収した荷物が少ない」


◇◇◇


 ツバサが腕を組む。


◇◇◇


「何度も商人馬車を襲ったにしては不自然だな」


◇◇◇


 確かにそうだった。


◇◇◇


 これほどの人数を養うには大量の食料と資金が必要になる。


◇◇◇


 だが発見された物資は予想より少ない。


◇◇◇


 まるで何かを隠しているようだった。


◇◇◇


「調べる価値はあるな」


◇◇◇


 ビルセイヤの言葉に全員が頷く。


◇◇◇


 こうして一行は洞窟内部の捜索を開始した。


◇◇◇


 洞窟の中は薄暗い。


◇◇◇


 壁には粗末な松明が掛けられていた。


◇◇◇


 奥へ進むほど湿った空気が肌にまとわり付く。


◇◇◇


 途中には盗まれた荷物が山積みになっていた。


◇◇◇


 食料。


◇◇◇


 武器。


◇◇◇


 衣類。


◇◇◇


 酒樽。


◇◇◇


 金貨の入った袋。


◇◇◇


 商人たちから奪った物だろう。


◇◇◇


「これだけでもかなりの被害額だな」


◇◇◇


 ツバサが呟く。


◇◇◇


「全部ギルドへ提出だな」


◇◇◇


 ビルセイヤも頷いた。


◇◇◇


 証拠として必要になる。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 違和感は消えない。


◇◇◇


 まだ何かある。


◇◇◇


 そんな予感がした。


◇◇◇


 さらに奥へ進む。


◇◇◇


 曲がりくねった通路。


◇◇◇


 行き止まりの部屋。


◇◇◇


 盗賊たちの寝床。


◇◇◇


 そして――。


◇◇◇


 ガシャン。


◇◇◇


 微かな音が聞こえた。


◇◇◇


 全員の足が止まる。


◇◇◇


「今の音……」


◇◇◇


 リリアが不安そうに周囲を見回した。


◇◇◇


 金属音だった。


◇◇◇


 鎖か。


◇◇◇


 それとも鉄格子か。


◇◇◇


 ビルセイヤは剣の柄へ手を添えながら慎重に進む。


◇◇◇


 曲がり角を抜ける。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


 そこにあったものを見て全員が息を呑んだ。


◇◇◇


 鉄格子。


◇◇◇


 牢屋だった。


◇◇◇


 そしてその中に。


◇◇◇


 一人の少女がいた。


◇◇◇


 年齢は十六歳ほどだろうか。


◇◇◇


 銀色の長い髪。


◇◇◇


 痩せた身体。


◇◇◇


 汚れた服。


◇◇◇


 長い間まともな生活を送れていなかったことが一目で分かる。


◇◇◇


 それでも。


◇◇◇


 その瞳だけは美しかった。


◇◇◇


 透き通るような青い瞳。


◇◇◇


 まるで宝石のようだった。


◇◇◇


 少女は突然現れた冒険者たちを見て目を見開く。


◇◇◇


「だ……誰?」


◇◇◇


 震える声。


◇◇◇


 恐怖。


◇◇◇


 不安。


◇◇◇


 そして僅かな期待。


◇◇◇


 その全てが混ざっていた。


◇◇◇


 ビルセイヤはゆっくりと剣を鞘へ納める。


◇◇◇


 怖がらせないように。


◇◇◇


 安心させるように。


◇◇◇


 優しい声で告げた。


◇◇◇


「冒険者だ」


◇◇◇


「盗賊団討伐の依頼を受けて来た」


◇◇◇


「もう大丈夫だ」


◇◇◇


 少女の瞳が大きく揺れる。


◇◇◇


 信じられない。


◇◇◇


 そんな表情だった。


◇◇◇


「本当に……?」


◇◇◇


 消え入りそうな声。


◇◇◇


 ビルセイヤは力強く頷く。


◇◇◇


「ああ」


◇◇◇


「盗賊団は壊滅した」


◇◇◇


「君は自由だ」


◇◇◇


 その言葉を聞いた瞬間だった。


◇◇◇


 少女の瞳から涙が溢れ出す。


◇◇◇


「うっ……」


◇◇◇


「うぅぅ……」


◇◇◇


 必死に耐えていたのだろう。


◇◇◇


 恐怖。


◇◇◇


 絶望。


◇◇◇


 孤独。


◇◇◇


 全てが一気に溢れ出した。


◇◇◇


 リリアが駆け寄る。


◇◇◇


「もう大丈夫です!」


◇◇◇


「安心してください!」


◇◇◇


 優しく声を掛ける。


◇◇◇


 少女は泣きながら何度も頷いた。


◇◇◇


 ビルセイヤは牢の鍵を探す。


◇◇◇


 近くの机の上。


◇◇◇


 無造作に置かれていた鍵束を見つけた。


◇◇◇


 ガチャリ。


◇◇◇


 重い音と共に牢の扉が開く。


◇◇◇


 少女は恐る恐る外へ出ようとした。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 足に力が入らない。


◇◇◇


 長期間の監禁生活。


◇◇◇


 まともな食事も与えられていなかったのだろう。


◇◇◇


 身体は限界だった。


◇◇◇


 ふらりと倒れそうになる。


◇◇◇


 その瞬間。


◇◇◇


 ビルセイヤが咄嗟に支えた。


◇◇◇


「危ない」


◇◇◇


 温かな腕。


◇◇◇


 少女の身体が小さく震える。


◇◇◇


 久しぶりだった。


◇◇◇


 こんな優しさに触れたのは。


◇◇◇


 少女は涙で潤んだ瞳を向ける。


◇◇◇


「ありがとう……ございます……」


◇◇◇


 小さな声だった。


◇◇◇


 それでも確かな感謝が込められていた。


◇◇◇


 ビルセイヤは微笑む。


◇◇◇


「礼は後でいい」


◇◇◇


「まずは安全な場所へ帰ろう」


◇◇◇


 少女は何度も何度も頷いた。


◇◇◇


 こうして。


◇◇◇


 盗賊団に囚われていた謎の少女は救出された。


◇◇◇


 まだ名前も知らない。


◇◇◇


 過去も分からない。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 この出会いがビルセイヤの運命を大きく変える。


◇◇◇


 仲間となり。


◇◇◇


 家族となり。


◇◇◇


 誰よりも彼を支える存在となる少女。


◇◇◇


 未来の良妻との運命の出会いだった。


第二章 第三十八話


「洞窟の奥の少女」


――続く。

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