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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第三十五話 洞窟突入

 ドォォォォォン!!


 巨大な戦斧が地面へ叩き付けられた。


 衝撃で大地が揺れる。


 土砂が舞い上がり、周囲にいた盗賊たちまでもが慌てて距離を取った。


 洞窟前の広場。


 そこには二人の男が向かい合っていた。


 一人はビルセイヤ。


 もう一人は盗賊団を率いる頭領。


 身長は二メートル近い。


 鍛え上げられた筋肉。


 全身に刻まれた古傷。


 そして肩に担いだ巨大な戦斧。


 ただ立っているだけで、周囲の空気を押し潰すような威圧感があった。


 歴戦の戦士――いや、正道ではなく、殺し合いの中で生き残ってきた男の気配だった。


「若造」


 頭領が低い声で言う。


「今なら見逃してやる」


「仲間を連れて帰れ」


 意外な言葉だった。


 だが、その目には余裕がある。


 自分が負けるとは微塵も思っていないのだろう。


 長年積み上げてきた暴力への絶対的な自信。


 それが見て取れた。


 しかし――。


 ビルセイヤは肩をすくめる。


「断る」


 即答だった。


 迷いはない。


 盗賊団を放置すれば、また誰かが被害に遭う。


 商人が襲われる。


 旅人が命を落とす。


 そんな未来を見過ごせるほど、ビルセイヤは冷たくなかった。


「そうか」


 頭領が笑う。


 獣のような笑みだった。


「なら死ね」


 次の瞬間。


 巨体が動く。


 速い。


 その体格からは想像もできない速度だった。


 巨大な戦斧が横薙ぎに振るわれる。


 ブォンッ!


 空気が唸る。


 ビルセイヤは即座に後方へ跳んだ。


 直後――。


 ドガァァァァン!!


 背後の大木が真っ二つになる。


 木片が弾け飛び、周囲へ降り注いだ。


「嘘でしょ……」


 セシリアが思わず呟く。


 あの一撃をまともに受ければ、鎧ごと粉砕される。


 それほどの威力だった。


 だが。


 ビルセイヤは冷静に観察していた。


 力は確かに凄まじい。


 おそらく今まで戦った相手の中でも上位に入るだろう。


 しかし――。


 剣士としての経験が告げる。


 当たらなければ意味がない。


「舐めるなぁぁぁぁぁっ!!」


 頭領が咆哮する。


 戦斧を振り回しながら突進。


 縦斬り。


 横薙ぎ。


 振り上げ。


 連続攻撃が容赦なく襲い掛かる。


 だが、ビルセイヤはその全てを躱した。


 半歩。


 一歩。


 最小限の動き。


 剣道で培った間合い。


 合気道で磨いた体捌き。


 紙一重で斧の軌道を外し、致命の間合いだけをすり抜けていく。


 まるで未来を見ているかのようだった。


「何故だ!」


「何故当たらん!!」


 頭領の声に苛立ちが混じる。


 その瞬間だった。


 ビルセイヤが踏み込む。


 一閃。


 ズバッ!


 鋭い斬撃が頭領の肩口を切り裂いた。


 鮮血が舞う。


「ぐっ!?」


 頭領の目が見開かれる。


 初めて傷を負ったのだ。


 それを見た盗賊たちがざわめく。


「お頭が傷を!?」


「そんな馬鹿な!」


 彼らにとって頭領は絶対だった。


 誰にも負けない存在。


 その神話が、今まさに崩れ始めていた。


 一方――。


 ツバサたちも戦い続けていた。


 日本刀が閃く。


 スパンッ!


 盗賊の武器ごと断ち切る。


 ビルセイヤに研ぎ直してもらった愛刀は、凄まじい切れ味を見せていた。


 セシリアも圧倒している。


 鋭い踏み込みから放たれる斬撃で、盗賊たちを次々と沈めていく。


 エミリアの魔法支援も的確だった。


 氷の矢が盗賊の足を止め、風刃が牽制し、味方の動きを助ける。


 戦況は完全に冒険者側へ傾いていた。


「終わりだ」


 ビルセイヤが静かに告げた。


 頭領の息は荒い。


 傷も増えている。


 誰の目にも勝敗は明らかだった。


 だが。


 頭領は笑った。


 不気味に。


 狂気を孕んだ笑みだった。


「まだ終わらねぇよ……」


 嫌な予感が走る。


 頭領は懐へ手を入れた。


 取り出したのは赤黒い魔石。


 禍々しい魔力を放っている。


「まさか……!」


 エミリアの顔色が変わった。


 普通の魔石ではない。


 あれは、禁忌の力を封じた呪具だ。


「これを使う時が来たか」


 頭領が嗤う。


 周囲の盗賊たちまでもが驚いていた。


 どうやら、それは本当に最後の切り札らしい。


 そして――。


 バキッ!


 魔石が握り潰された。


 赤黒い光が溢れ出す。


 魔力が暴走する。


 頭領の全身を、不気味な光が包み込んだ。


 筋肉が膨れ上がる。


 血管が浮き出る。


 皮膚の下で何かが蠢くように盛り上がり、骨が軋む音が響いた。


 瞳が赤く染まる。


「グオオオオオオオオオオオッ!!」


 人のものとは思えない咆哮。


 周囲の空気が震える。


 盗賊たちが怯えたように後ずさった。


 味方であるはずの彼らですら、本能的な恐怖を覚えたのだ。


 セシリアが剣を握り直す。


 ツバサも表情を引き締めた。


「魔物化……」


 エミリアが呟く。


 禁忌の術。


 理性と引き換えに力を得る代償。


 使った者は二度と元には戻れない。


 そして変貌した頭領は、巨大な戦斧を握り締めながらビルセイヤを睨み付けた。


「殺ス……」


 低く響く声。


 その姿は、もはや人間ではない。


 怪物だった。


 だが。


 ビルセイヤは静かに剣を構える。


 恐怖はない。


 守るべき仲間がいる。


 助けを待つ人がいる。


 だから負けるわけにはいかない。


 洞窟の奥には、まだ救いを待つ誰かがいるかもしれない。


 ここで立ち止まるわけにはいかなかった。


 決戦の時は訪れた。


第二章 第三十五話


「盗賊団頭領」


――続く。



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