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第三十一話 クラン結成準備

 クランを作る――。


◇◇◇


 それはツバサがスタンビートの戦場で抱いた想いだった。


◇◇◇


 一人では守れない。


◇◇◇


 一つのパーティにも限界がある。


◇◇◇


 だからこそ、仲間たちが集う組織が必要だ。


◇◇◇


 その提案から三日後。


◇◇◇


 ビルセイヤたちは冒険者ギルドの会議室へ集まっていた。


◇◇◇


 部屋にいるのは五人。


◇◇◇


 ビルセイヤ。


◇◇◇


 セシリア。


◇◇◇


 エミリア。


◇◇◇


 リリア。


◇◇◇


 そしてツバサ。


◇◇◇


 さらに今回は冒険者ギルド支部長も同席している。


◇◇◇


「クラン設立の相談とはな」


◇◇◇


 支部長が腕を組みながら言った。


◇◇◇


「最近じゃ珍しい話だ」


◇◇◇


 エメラルド・グリーンにもクランは存在する。


◇◇◇


 だが数は決して多くない。


◇◇◇


 実力だけでは運営できないからだ。


◇◇◇


 資金。


◇◇◇


 人材。


◇◇◇


 信頼。


◇◇◇


 全てが揃って初めて成立する。


◇◇◇


「本気です」


◇◇◇


 ツバサが真っ直ぐ答える。


◇◇◇


 その瞳に迷いはない。


◇◇◇


「スタンビートを経験して確信しました」


◇◇◇


「これからはクランの時代です」


◇◇◇


「個人では限界があります」


◇◇◇


「大規模討伐も迷宮攻略も、組織の力が必要です」


◇◇◇


 支部長はしばらく黙っていた。


◇◇◇


 そしてゆっくり頷く。


◇◇◇


「確かにな」


◇◇◇


「あの戦いは良い例だった」


◇◇◇


 スタンビート。


◇◇◇


 街を守れたのは英雄一人の力ではない。


◇◇◇


 兵士。


◇◇◇


 冒険者。


◇◇◇


 商人。


◇◇◇


 補給班。


◇◇◇


 全員が役割を果たしたから勝てた。


◇◇◇


 支部長もそれを理解している。


◇◇◇


「だが問題がある」


◇◇◇


 支部長の言葉に全員が耳を傾ける。


◇◇◇


「人員だ」


◇◇◇


 現在のメンバーは五人。


◇◇◇


 一つのパーティとしてなら十分。


◇◇◇


 しかしクランとしては少なすぎる。


◇◇◇


「増やす予定です」


◇◇◇


 ツバサが即答した。


◇◇◇


「心当たりがあるのか?」


◇◇◇


「あります」


◇◇◇


 静かな返答。


◇◇◇


 脳裏に浮かぶのは二人の女性だった。


◇◇◇


 マイ。


◇◇◇


 そしてイリス。


◇◇◇


 まだ再会はしていない。


◇◇◇


 だが必ず力になってくれる。


◇◇◇


 ツバサには確信があった。


◇◇◇


 一方。


◇◇◇


 ビルセイヤは別の問題について考えていた。


◇◇◇


「拠点も必要だな」


◇◇◇


 その一言に支部長が感心したように笑う。


◇◇◇


「流石だな」


◇◇◇


「そこまで考えているか」


◇◇◇


 クランには本拠地が必要になる。


◇◇◇


 会議室。


◇◇◇


 倉庫。


◇◇◇


 宿泊施設。


◇◇◇


 訓練場。


◇◇◇


 人数が増えれば必要な設備も増える。


◇◇◇


「今の屋敷を改装するか」


◇◇◇


 ビルセイヤが呟く。


◇◇◇


 頭の中では既に設計図が描かれ始めていた。


◇◇◇


 倉庫を増築。


◇◇◇


 訓練場を整備。


◇◇◇


 食堂も拡張。


◇◇◇


 鍛冶工房も増設。


◇◇◇


 やるべきことは山ほどある。


◇◇◇


「始まったわね」


◇◇◇


 セシリアが苦笑する。


◇◇◇


「何か作る話になると止まらないのよ」


◇◇◇


「職人だからな」


◇◇◇


 ビルセイヤも苦笑した。


◇◇◇


 エミリアも小さく笑う。


◇◇◇


 リリアに至っては慣れたものである。


◇◇◇


 こういう時のビルセイヤは止まらない。


◇◇◇


 それが分かっていた。


◇◇◇


「正式なクラン申請は後回しでもいい」


◇◇◇


 支部長が机へ書類を置く。


◇◇◇


「まずは人数だ」


◇◇◇


「最低でも二パーティ以上」


◇◇◇


「それがクラン設立条件だからな」


◇◇◇


 クランシステム。


◇◇◇


 二つ以上のパーティが集まって成立する組織。


◇◇◇


 だからこそ人数と人材が重要になる。


◇◇◇


「分かりました」


◇◇◇


 ビルセイヤが頷く。


◇◇◇


 ツバサも拳を握った。


◇◇◇


 やるべきことは明確だ。


◇◇◇


 仲間を集める。


◇◇◇


 拠点を整える。


◇◇◇


 そしてクランを結成する。


◇◇◇


 その時だった。


◇◇◇


 バンッ!


◇◇◇


 会議室の扉が勢いよく開いた。


◇◇◇


「支部長!!」


◇◇◇


 飛び込んできたのはギルド職員だった。


◇◇◇


 額には汗。


◇◇◇


 息も切れている。


◇◇◇


「どうした?」


◇◇◇


 支部長が眉をひそめる。


◇◇◇


 職員は荒い呼吸を整えながら報告した。


◇◇◇


「大変です!」


◇◇◇


「北街道で商人馬車が襲われました!」


◇◇◇


 部屋の空気が一変する。


◇◇◇


 商人馬車襲撃。


◇◇◇


 それは王国の経済にも関わる重大事件だった。


◇◇◇


「相手は?」


◇◇◇


 支部長が鋭く問う。


◇◇◇


 職員は唾を飲み込んだ。


◇◇◇


「盗賊団です!」


◇◇◇


 その言葉に全員の表情が引き締まる。


◇◇◇


 盗賊討伐。


◇◇◇


 商人護衛。


◇◇◇


 冒険者の重要な仕事の一つだ。


◇◇◇


 そしてビルセイヤは知らない。


◇◇◇


 この依頼が新たな運命を連れてくることを。


◇◇◇


 後にクランを支える仲間。


◇◇◇


 そして未来の家族となる者との出会いが待っていることを。


◇◇◇


 運命の歯車は再び動き出していた。


第二章 第三十一話


「クラン結成準備」


――続く。

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