第三十一話 クラン結成準備
クランを作る――。
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それはツバサがスタンビートの戦場で抱いた想いだった。
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一人では守れない。
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一つのパーティにも限界がある。
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だからこそ、仲間たちが集う組織が必要だ。
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その提案から三日後。
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ビルセイヤたちは冒険者ギルドの会議室へ集まっていた。
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部屋にいるのは五人。
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ビルセイヤ。
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セシリア。
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エミリア。
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リリア。
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そしてツバサ。
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さらに今回は冒険者ギルド支部長も同席している。
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「クラン設立の相談とはな」
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支部長が腕を組みながら言った。
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「最近じゃ珍しい話だ」
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エメラルド・グリーンにもクランは存在する。
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だが数は決して多くない。
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実力だけでは運営できないからだ。
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資金。
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人材。
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信頼。
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全てが揃って初めて成立する。
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「本気です」
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ツバサが真っ直ぐ答える。
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その瞳に迷いはない。
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「スタンビートを経験して確信しました」
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「これからはクランの時代です」
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「個人では限界があります」
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「大規模討伐も迷宮攻略も、組織の力が必要です」
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支部長はしばらく黙っていた。
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そしてゆっくり頷く。
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「確かにな」
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「あの戦いは良い例だった」
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スタンビート。
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街を守れたのは英雄一人の力ではない。
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兵士。
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冒険者。
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商人。
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補給班。
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全員が役割を果たしたから勝てた。
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支部長もそれを理解している。
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「だが問題がある」
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支部長の言葉に全員が耳を傾ける。
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「人員だ」
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現在のメンバーは五人。
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一つのパーティとしてなら十分。
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しかしクランとしては少なすぎる。
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「増やす予定です」
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ツバサが即答した。
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「心当たりがあるのか?」
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「あります」
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静かな返答。
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脳裏に浮かぶのは二人の女性だった。
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マイ。
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そしてイリス。
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まだ再会はしていない。
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だが必ず力になってくれる。
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ツバサには確信があった。
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一方。
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ビルセイヤは別の問題について考えていた。
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「拠点も必要だな」
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その一言に支部長が感心したように笑う。
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「流石だな」
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「そこまで考えているか」
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クランには本拠地が必要になる。
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会議室。
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倉庫。
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宿泊施設。
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訓練場。
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人数が増えれば必要な設備も増える。
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「今の屋敷を改装するか」
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ビルセイヤが呟く。
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頭の中では既に設計図が描かれ始めていた。
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倉庫を増築。
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訓練場を整備。
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食堂も拡張。
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鍛冶工房も増設。
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やるべきことは山ほどある。
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「始まったわね」
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セシリアが苦笑する。
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「何か作る話になると止まらないのよ」
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「職人だからな」
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ビルセイヤも苦笑した。
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エミリアも小さく笑う。
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リリアに至っては慣れたものである。
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こういう時のビルセイヤは止まらない。
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それが分かっていた。
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「正式なクラン申請は後回しでもいい」
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支部長が机へ書類を置く。
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「まずは人数だ」
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「最低でも二パーティ以上」
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「それがクラン設立条件だからな」
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クランシステム。
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二つ以上のパーティが集まって成立する組織。
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だからこそ人数と人材が重要になる。
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「分かりました」
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ビルセイヤが頷く。
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ツバサも拳を握った。
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やるべきことは明確だ。
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仲間を集める。
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拠点を整える。
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そしてクランを結成する。
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その時だった。
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バンッ!
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会議室の扉が勢いよく開いた。
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「支部長!!」
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飛び込んできたのはギルド職員だった。
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額には汗。
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息も切れている。
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「どうした?」
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支部長が眉をひそめる。
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職員は荒い呼吸を整えながら報告した。
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「大変です!」
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「北街道で商人馬車が襲われました!」
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部屋の空気が一変する。
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商人馬車襲撃。
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それは王国の経済にも関わる重大事件だった。
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「相手は?」
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支部長が鋭く問う。
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職員は唾を飲み込んだ。
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「盗賊団です!」
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その言葉に全員の表情が引き締まる。
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盗賊討伐。
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商人護衛。
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冒険者の重要な仕事の一つだ。
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そしてビルセイヤは知らない。
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この依頼が新たな運命を連れてくることを。
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後にクランを支える仲間。
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そして未来の家族となる者との出会いが待っていることを。
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運命の歯車は再び動き出していた。
第二章 第三十一話
「クラン結成準備」
――続く。




