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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第二十五話 漆黒の暴君

 グオオオオオオオオオオオオオッ!!


◇◇◇


 ブラックベアの咆哮が北部森林全体を震わせた。


◇◇◇


 大地が揺れる。


◇◇◇


 木々がざわめく。


◇◇◇


 空気そのものが震えているかのようだった。


◇◇◇


 最前線に立つ冒険者たちの表情が強張る。


◇◇◇


 巨大だった。


◇◇◇


 四メートルを超える体躯。


◇◇◇


 漆黒の毛皮。


◇◇◇


 鋼のような筋肉。


◇◇◇


 そして血のように赤く輝く双眸。


◇◇◇


 森の主。


◇◇◇


 いや、暴君と呼ぶべき存在だった。


◇◇◇


「ブラックベア……」


◇◇◇


 冒険者ギルド支部長の額に汗が浮かぶ。


◇◇◇


 Bランク上位魔物。


◇◇◇


 単独でも村一つを滅ぼせる災害級の怪物。


◇◇◇


 本来ならAランク冒険者パーティが総力を挙げて討伐する相手だ。


◇◇◇


 それが今、スタンビートの中心に立っている。


◇◇◇


「冗談だろ……」


◇◇◇


「こんなの聞いてないぞ……」


◇◇◇


 冒険者たちの間に動揺が広がる。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 一人だけ違った。


◇◇◇


 ビルセイヤである。


◇◇◇


 静かに剣を構える。


◇◇◇


 呼吸を整える。


◇◇◇


 視線はブラックベアから一瞬たりとも逸らさない。


◇◇◇


「セシリア」


◇◇◇


「うん」


◇◇◇


 短い返事。


◇◇◇


 それだけで十分だった。


◇◇◇


 互いに信頼している。


◇◇◇


 言葉は必要ない。


◇◇◇


「エミリア」


◇◇◇


「いつでも」


◇◇◇


 後方で魔力が高まる。


◇◇◇


 援護準備完了。


◇◇◇


 三人の連携は既に完成していた。


◇◇◇


 その瞬間――。


◇◇◇


 ドォォォォォン!!


◇◇◇


 ブラックベアが地面を蹴った。


◇◇◇


 巨大な身体が砲弾のように突進してくる。


◇◇◇


 速い。


◇◇◇


 巨体からは想像もできない速度だった。


◇◇◇


「来るぞ!」


◇◇◇


 誰かが叫ぶ。


◇◇◇


 だがビルセイヤは動じない。


◇◇◇


 ギリギリまで引き付ける。


◇◇◇


 そして。


◇◇◇


 半歩。


◇◇◇


 ほんのわずかに身体を動かした。


◇◇◇


 ブラックベアの巨大な爪が空を裂く。


◇◇◇


 だが当たらない。


◇◇◇


 合気道の体捌き。


◇◇◇


 最小限の動きで最大の回避を行う。


◇◇◇


「そこだ!」


◇◇◇


 反撃。


◇◇◇


 一閃。


◇◇◇


 剣がブラックベアの肩を斬り裂いた。


◇◇◇


 しかし。


◇◇◇


 ガギィィン!!


◇◇◇


 まるで鉄を叩いたような音が響く。


◇◇◇


「なっ!?」


◇◇◇


 周囲の冒険者たちが驚愕した。


◇◇◇


 確かに斬れた。


◇◇◇


 だが浅い。


◇◇◇


 毛皮と筋肉が異常な硬さを持っていた。


◇◇◇


 ブラックベアが怒りの咆哮を上げる。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 ビルセイヤは冷静だった。


◇◇◇


 傷は入った。


◇◇◇


 ならば倒せる。


◇◇◇


 それだけで十分だった。


◇◇◇


「セシリア!」


◇◇◇


「任せて!」


◇◇◇


 セシリアが側面へ回り込む。


◇◇◇


 鋭い斬撃。


◇◇◇


 ブラックベアの脚へ傷が走る。


◇◇◇


 さらに。


◇◇◇


「アイスランス!」


◇◇◇


 エミリアの魔法が放たれる。


◇◇◇


 氷の槍が地面へ突き刺さり、ブラックベアの足元を凍結させた。


◇◇◇


 一瞬。


◇◇◇


 本当に一瞬だけ動きが止まる。


◇◇◇


「今だ!」


◇◇◇


 ビルセイヤが踏み込む。


◇◇◇


 剣道で培った最高の踏み込み。


◇◇◇


 腰。


◇◇◇


 肩。


◇◇◇


 腕。


◇◇◇


 全身の力を一撃へ集約する。


◇◇◇


 そして放った。


◇◇◇


 渾身の斬撃。


◇◇◇


 ズバァァァァァッ!!


◇◇◇


 鮮血が舞う。


◇◇◇


 ブラックベアの胸元へ深い傷が刻まれた。


◇◇◇


 巨体が大きくよろめく。


◇◇◇


「やったか!?」


◇◇◇


 冒険者たちから歓声が上がる。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 ブラックベアは倒れなかった。


◇◇◇


 むしろ――。


◇◇◇


 赤い瞳がさらに禍々しく輝く。


◇◇◇


 筋肉が膨れ上がる。


◇◇◇


 荒い息が蒸気のように漏れる。


◇◇◇


「まずい……」


◇◇◇


 支部長の顔色が変わった。


◇◇◇


「暴走状態だ!」


◇◇◇


 冒険者たちに緊張が走る。


◇◇◇


 暴走状態。


◇◇◇


 強力な魔物が瀕死になることで発動する狂化現象。


◇◇◇


 痛みを忘れ。


◇◇◇


 理性を失い。


◇◇◇


 純粋な破壊衝動だけで動く。


◇◇◇


 最も危険な状態だった。


◇◇◇


 グオオオオオオオオオオオオッ!!


◇◇◇


 再び咆哮が響く。


◇◇◇


 すると周囲の魔物たちまで興奮し始めた。


◇◇◇


 ゴブリンたちが叫ぶ。


◇◇◇


 オークたちが暴れる。


◇◇◇


 フォレストウルフたちが牙を剥く。


◇◇◇


 戦場全体が狂気に染まり始めていた。


◇◇◇


 しかし。


◇◇◇


 ビルセイヤは静かに剣を握り直す。


◇◇◇


 恐怖はない。


◇◇◇


 焦りもない。


◇◇◇


 あるのは勝つための思考だけ。


◇◇◇


 その姿を見ていたツバサは拳を握り締めた。


◇◇◇


 強い。


◇◇◇


 本当に強い。


◇◇◇


 だが。


◇◇◇


 ビルセイヤの本当の強さは剣ではない。


◇◇◇


 仲間との信頼。


◇◇◇


 組織をまとめる力。


◇◇◇


 皆を生かそうとする心。


◇◇◇


 それこそが最大の武器だった。


◇◇◇


「やっぱり必要だな……」


◇◇◇


 ツバサは小さく呟く。


◇◇◇


「クランが」


◇◇◇


 一人では守れない。


◇◇◇


 パーティだけでも足りない。


◇◇◇


 もっと多くの仲間が必要だ。


◇◇◇


 その決意は、この戦場で確かな形になりつつあった。


◇◇◇


 後に王国を代表する伝説のクラン。


◇◇◇


 その始まりは――。


◇◇◇


 この北部森林防衛戦にあったのである。


第二章 第二十五話


「漆黒の暴君」


――続く。

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