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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第二十一話 クランという力

 包丁の大成功から数日後――。


 エメラルド・グリーンの街では、ビルセイヤの名が急速に広まり始めていた。


 鍛冶師ギルドでは天才鍛冶師。

 料理人たちからは奇跡の包丁職人。

 商人たちからは金貨を生み出す男。


 様々な呼ばれ方をされている。


 もっとも、当の本人は相変わらずだった。


 今日も特別工房で、新しい農具の試作品を作っている。


「この部分を少し軽くしてみるか……」


 作業台に広げた図面を見ながら、ビルセイヤが呟く。


 その隣では、リリアが真剣な表情で図面を見つめていた。


「こちらの方が良いと思います」


「ん?」


「柄を少し短くした方が、女性でも扱いやすいです」


 ビルセイヤは感心したように頷いた。


「なるほど。確かにそうだな」


 図面へ修正を書き込む。


 最近ではこれが当たり前になっていた。


 作るのはビルセイヤ。

 使う側の意見を出すのはリリア。


 二人で一つの作品を作り上げているような状態だった。


 リリア自身もまだ気付いていない。


 だが、鍛冶施設で過ごす時間は、彼女にとって何よりも大切なものになり始めていた。


 そんな時だった。


 バンッ!


 工房の扉が勢いよく開く。


「ビルセイヤ殿!」


 飛び込んできたのはギルバードだった。


 額には汗。

 息も荒い。


 明らかに様子がおかしい。


「今度は何ですか?」


 セシリアが呆れたように言う。


 だが、ギルバードの表情を見た瞬間、その軽口は消えた。


「スタンビートです!」


 その一言で、工房の空気が変わる。


 スタンビート。


 大量の魔物が一斉に発生し、人の住む街へ押し寄せる災害級の現象。

 被害次第では村一つが消えることもある。


「規模は?」


 ビルセイヤの表情が一瞬で引き締まる。


「まだ詳細は不明です」


「ですが、冒険者ギルドが緊急招集を掛けています」


 全員が顔を見合わせた。


 エメラルド・グリーンは大商業都市だ。

 住民も多い。


 もし防衛に失敗すれば、大惨事になる。


「冒険者ギルドへ行こう」


 ビルセイヤが立ち上がった。


 セシリアも頷く。

 エミリアも武器を手に取る。

 リリアも不安げな表情を浮かべながら、静かに後へ続いた。


 冒険者ギルドへ到着すると、建物の中は異様な熱気に包まれていた。


 普段とは明らかに違う。


 多くの冒険者が集まり、受付前には長い列ができている。

 壁には緊急依頼書が張り出されていた。


「本当にスタンビートか……」


「最悪だな」


「今回はどれくらいの規模だ?」


 冒険者たちの表情は重い。


 そんな中、一人の壮年男性が演台へ上がった。


 エメラルド・グリーン冒険者ギルド支部長である。


「静かに!」


 大声が響き、ざわめきが収まる。


「今回確認されたスタンビートは中規模以上!」


「発生源は北部森林地帯!」


「このまま進行した場合、エメラルド・グリーンへ到達する可能性が高い!」


 会場の空気が重くなる。


 中規模以上。


 その意味を知らない者はいない。


 一パーティでどうにかなる規模ではない。

 下手をすれば街全体を巻き込む戦いになる。


 支部長はさらに続けた。


「これよりクラン単位での緊急招集を行う!」


 会場がざわついた。


 クラン。


 複数のパーティが集まって結成される大規模組織。

 スタンビートや大規模ダンジョン攻略のために存在する制度だ。


「Aランククラン二組!」


「Bランククラン四組!」


「参加可能な冒険者は全て登録しろ!」


 次々と指示が飛ぶ。


 大規模討伐が始まろうとしていた。


 ビルセイヤはその様子を静かに見つめる。


 クランシステム。


 複数のパーティを束ねるための組織。

 悪くない制度だ。


 だが同時に、改善できる部分も見えた。


 情報共有。

 補給体制。

 指揮系統。


 地球で得た知識を活かせば、もっと効率化できるかもしれない。


 個人の力だけでは守れないものがある。


 どれだけ強い剣士がいても。

 どれだけ優れた魔法使いがいても。

 大規模戦では、連携と統率がなければ街は守れない。


 クランとは、力を束ねるための器だ。


 一人では届かない場所へ、仲間と共に手を伸ばすための仕組み。


「ビルセイヤ?」


 セシリアが声を掛ける。


 彼は静かに頷いた。


「まずは状況確認だ」


「必要なら俺たちも出る」


 その瞳には迷いがない。


 鍛冶師としてではない。

 一人の冒険者として。

 守るべき人々のために。


 そして――。


 後に『北部森林スタンビート戦』と呼ばれる大規模防衛戦。


 その戦いが、ビルセイヤを新たな英雄への道へ導くことになる。


 誰もまだ知らない。


 この戦いが。

 王国中へその名を轟かせる、伝説の始まりになることを――。


――続く。

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