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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第十三話 ギルドマスターの試験

 鍛冶師ギルドの工房――。


 建物の奥にある巨大工房は、熱気に満ちていた。


 赤々と燃える炉。

 壁際に並ぶ無数の工具。

 天井近くまで積み上げられた鉱石や鉄材。


 ここは、エメラルド・グリーン鍛冶師ギルドの心臓部とも言える場所だった。


 しかし今、その工房は異様な静けさに包まれている。


 職人たちが、作業の手を止めていたからだ。


 全員の視線は、一人の青年へ向けられていた。


 ビルセイヤ。


 冒険者でありながら、驚異的な鍛冶技術を持つ青年。


 そしてその前には、鍛冶師ギルドの頂点に立つ男――ギルドマスター・ガルドがいた。


「試験内容は単純だ」


 ガルドは、作業台の上に置かれた鉄塊を指差した。


「その鉄を使って、剣を一本打て」


 周囲がざわめく。


 鍛冶師ギルドにおける、最も分かりやすい試験。


 技術は作品に現れる。


 言葉よりも、肩書きよりも、完成した剣が全てを証明する。


「分かりました」


 ビルセイヤは落ち着いた様子で頷いた。


 緊張は見られない。

 むしろ、楽しそうですらある。


「肝が据わってるな」


「普通なら緊張するぞ」


 若い職人たちが小声で話す。


 しかしビルセイヤの意識は、すでに鉄へ向いていた。


 鉄塊を手に取る。


 重量を確かめる。

 表面を指でなぞる。

 不純物の混じりを確認する。


 それはまるで、鉄と対話しているような仕草だった。


「始めます」


 そう言って、ビルセイヤは炉の前へ立つ。


 鉄を投入する。


 炎が鉄を包み込んだ。


 しばらくして、ビルセイヤは静かに炉を見つめ続ける。


 職人たちは不思議そうな顔をした。


 鍛冶師は鉄の色を見て温度を判断する。

 それは当然だ。


 だが、ビルセイヤの集中力は異常だった。


 まるで鉄そのものの声を聞いているように見える。


「……今だな」


 小さく呟く。


 ビルセイヤは、真っ赤に焼けた鉄を炉から取り出した。


 金床へ置く。


 そして――。


 カンッ――!


 工房中へ、澄み切った音が響いた。


 職人たちの表情が変わる。


「今の音……」


「なんだ?」


 普通の打撃音ではない。


 耳に心地良く響く、澄んだ音だった。


 カンッ!

 カンッ!

 カンッ!


 ハンマーが振り下ろされるたび、美しい音が連続する。


 無駄がない。

 力任せでもない。


 必要な場所へ、必要な力だけを伝えている。


 それは鍛造というより、一つの芸術だった。


「綺麗だ……」


 誰かが呟く。


 職人たちは目を離せなかった。


 若い職人も。

 熟練職人も。


 全員が見入っていた。


 技術が高いからではない。


 鍛冶そのものが、美しかった。


 ガルドは腕を組みながら見守る。


 表情は変わらない。


 だが内心では、大きな衝撃を受けていた。


 分かる。


 職人だからこそ分かる。


 目の前の青年は本物だ。


 それも、並の職人ではない。


 長年鍛冶に人生を捧げてきた者だけが到達できる領域に、片足を踏み入れている。


 鍛造は続く。


 不純物を落とし、鍛え、伸ばし、再び鍛える。


 鉄は次第に形を変え、やがて刀身となっていった。


 次は、焼き入れだった。


 ビルセイヤの表情がさらに真剣になる。


 焼き入れは失敗が許されない工程。

 一瞬の判断ミスで、全てが台無しになる。


 しかし、ビルセイヤに迷いはなかった。


 ジュワァァァァァッ!!


 真っ白な蒸気が立ち上る。


 工房の空気が震えた。


 誰も声を出さない。


 全員が、完成の瞬間を待っている。


 研磨。

 調整。

 仕上げ。


 そして数時間後――。


 一振りの剣が完成した。


 ビルセイヤは、静かに剣を持ち上げる。


 美しい。


 無駄がない。


 まるで最初からそこに存在していたかのような完成度だった。


「できました」


 ビルセイヤは、完成した剣をガルドへ差し出した。


 ギルドマスターは無言で受け取る。


 重さを確認する。

 重心を見る。

 刃を確かめる。

 刀身を光にかざす。


 沈黙。


 工房中が静まり返る。


 誰もが、結果を待っていた。


 そして――。


 ガルドが深く息を吐く。


「馬鹿な……」


 その一言だった。


 職人たちが息を呑む。


 ガルドほどの職人が、驚きを隠せない。


 それだけで評価は分かる。


 だが、次の言葉は誰の予想も超えていた。


「この歳になって……」


 ガルドは完成した剣を見つめる。


「儂より上の鍛冶師に出会うとは思わなかった」


 工房が凍り付いた。


 エメラルド・グリーン最強の鍛冶師。

 王国最高峰の名工。


 そのガルドが認めたのである。


 一人の若き冒険者を。


 職人たちは理解した。


 今、自分たちは歴史が動く瞬間を目撃しているのだと――。


――続く。

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