第六話 街道の盗賊団
運命の歯車が回り始めた翌日――。
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ビルセイヤたちはギルバードの商人馬車と共に街道を進んでいた。
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本来なら別行動の予定だった。
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しかしギルバードが強引に提案したのである。
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「目的地は同じですぞ!」
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「一緒に行った方が楽しいですぞ!」
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結果。
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商人馬車一台。
護衛冒険者二人。
ビルセイヤたち三人。
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小規模な隊商が完成していた。
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「本当に賑やかになりましたね」
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エミリアが苦笑する。
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「良いことですぞ!」
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ギルバードは上機嫌だった。
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昨夜からずっと機嫌が良い。
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新商品の話。
商会の未来。
王国規模の販路。
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延々と語っている。
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完全に夢を見ていた。
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「まずは包丁ですな!」
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「次に農具!」
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「その後は武器です!」
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「順番が逆じゃないですか?」
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セシリアが呆れる。
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「包丁の方が売れるのです!」
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ギルバードは真顔だった。
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商人らしい発想である。
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そんな会話をしていた時だった。
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ビルセイヤが足を止める。
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「どうしました?」
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セシリアが尋ねる。
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ビルセイヤは街道脇の森を見る。
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「人の気配がする」
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その言葉で空気が変わった。
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護衛冒険者たちも武器へ手を掛ける。
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「何人です?」
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「十人以上」
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ビルセイヤの声は冷静だった。
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ギルバードの顔色が変わる。
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「まさか……」
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その瞬間。
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「止まれぇぇぇぇ!!」
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森から男たちが飛び出してきた。
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十数名。
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剣や斧を持っている。
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服装はバラバラ。
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明らかに盗賊だった。
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「金目の物を置いていけ!」
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「命までは取らねぇ!」
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盗賊の頭らしき男が叫ぶ。
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ギルバードが小さく呟いた。
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「本当に出ましたぞ……」
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昨日話していた盗賊団である。
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恐ろしい偶然だった。
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いや。
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ある意味では必然かもしれない。
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盗賊が出没する街道を通っているのだから。
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「どうします?」
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エミリアが尋ねる。
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答えるまでもない。
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セシリアが剣を抜いた。
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「決まっています」
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美しい剣閃。
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そして笑う。
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「返り討ちです」
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盗賊たちが一瞬怯む。
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だが数では勝っている。
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すぐに包囲を狭めてきた。
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「おいおい」
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「女までいるじゃねぇか」
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「運が良かったな」
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下卑た笑い声。
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セシリアの額に青筋が浮かぶ。
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エミリアも冷たい目をしていた。
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そして。
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ビルセイヤが一歩前へ出る。
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「最後に聞く」
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静かな声だった。
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「降参するなら今だ」
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一瞬。
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盗賊たちは静かになる。
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そして。
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大爆笑した。
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「聞いたかお前ら!」
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「冒険者が脅してきたぞ!」
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「たった三人で!」
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笑い声が響く。
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誰も気付いていなかった。
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目の前にいるのが。
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オークロードを討伐し。
フォレスト・キングを倒し。
王都で名を上げた冒険者たちだということに。
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ビルセイヤは小さくため息を吐いた。
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「そうか」
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剣を抜く。
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鋼が陽光を反射した。
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「なら仕方ない」
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盗賊団。
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対。
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未来の創造神。
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勝負の行方は、始まる前から決まっていた。
第二章 第六話
「街道の盗賊団」
――続く。




