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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

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第五話 商機の匂い

 翌朝――。


 街道沿いの野営地は、朝日と共に活気を取り戻していた。


 商人たちは荷物の確認を行い、護衛の冒険者たちは武器の手入れをしている。

 旅人たちもそれぞれの目的地へ向けて、出発の準備を進めていた。


「それでは皆さん、良い旅を!」


 ギルバートが満面の笑みで手を振る。


「ギルバートさんも、お気を付けて」


 セシリアが笑顔で返した。


 こうして商人馬車と別れたビルセイヤたちは、再び街道を西へ向かって歩き始める。


 穏やかな旅路だった。


 空は青く、風は心地良い。

 昼過ぎになる頃には、野営地もすっかり見えなくなっていた。


 だが――。


 ガラガラガラガラ!!


 突然、後方から激しい馬車の音が聞こえてきた。


「ん?」


 ビルセイヤが振り返る。


 土煙を上げながら、猛スピードで近付いてくる馬車があった。


 見覚えがある。


「ギルバートさん?」


 エミリアが目を瞬く。


 間違いない。

 先ほど別れたばかりの商人馬車だった。


 しかも、異常な速度でこちらへ向かって来る。


 やがて馬車は三人の少し手前で急停止した。


 ギギギギッ!!


 御者も驚くほどの急ブレーキである。


「ビルセイヤ殿!!」


 馬車からギルバートが飛び降りた。


 そして全力疾走で駆け寄ってくる。


 息は荒く、顔つきも真剣そのものだった。


「どうしたんですか?」


 セシリアが驚いて尋ねる。


 盗賊でも出たのかと思った。

 だが、どうやら違うらしい。


「思い出したのです!!」


 ギルバートが叫んだ。


「何をです?」


「昨夜の話です!」


 意味が分からない。


 ビルセイヤたちは揃って首を傾げた。


 ギルバートは勢いよくビルセイヤの肩を掴む。


「ビルセイヤ殿!」


「はい」


「鍛冶はできますな!?」


「できますけど」


「武器も作れますな!?」


「作れます」


「包丁は!?」


「作れます」


「農具は!?」


「作れます」


 ギルバートの動きが止まった。


 数秒間の沈黙。


 そして次の瞬間、彼は両手で頭を抱えた。


「なぜ昨夜それを聞かなかったのですかぁぁぁぁ!!」


 本人に言われても困る。


 セシリアとエミリアは呆然としていた。


 どうやら、とんでもなく大事なことに今さら気付いたらしい。


 ギルバートは勢いよく顔を上げる。


 その目は、完全に商人の目だった。


 獲物を見付けた猛獣のように、ぎらりと輝いている。


「ビルセイヤ殿!」


「はい」


「エメラルド・グリーンへ着いたら、工房を貸します!」


「工房?」


「試作品を作りましょう!」


 勢いが凄い。


 だが、ギルバートは止まらない。


「良い武器なら売れます!」


「良い包丁なら、もっと売れます!」


「良い農具なら、農家が飛び付きます!」


 次々と言葉が飛び出してくる。


 完全に商売人の顔だった。


 ビルセイヤは腕を組み、少しだけ考え込む。


 確かに興味はあった。


 自分の鍛冶技術が、この世界でどこまで通用するのか。

 王都以外の街で、どこまで評価されるのか。


 試してみたい気持ちは、かなりある。


「……面白そうですね」


 その一言だった。


「ですよなぁぁぁ!!」


 ギルバートが歓喜した。


「商機ですぞ!」


「これは大商機ですぞ!」


 セシリアが苦笑する。


 昨日知り合ったばかりなのに、妙に息が合っている。


 いや、正確には違う。


 二人は似た者同士なのだ。


 ビルセイヤは鍛冶馬鹿。

 ギルバートは商売馬鹿。


 だからこそ、話が噛み合う。


「そんなに売れるものなんですか?」


 セシリアが疑問を口にした。


 すると、ギルバートの表情がすっと真面目になる。


「良い商品は、必ず売れます」


 断言だった。


「わしは鍛冶師ではありません。ですが、人が欲しがる物は分かります」


「それが商人です」


 長年、商売の世界で生きてきた男の言葉。


 そこには確かな重みがあった。


「もしビルセイヤ殿の作品が本物なら――」


 ギルバートは不敵に笑う。


「王国中へ売り込みますぞ」


 その瞳は希望に満ちていた。


 まるで、金鉱脈を見付けた探鉱者のように。


 この時――まだ誰も知らなかった。


 この出会いが、後に王国の武器事情を変え、

 料理人たちの常識を変え、

 農業の発展にまで影響を与えることを。


 そして、ギルバート自身もまだ知らない。


 王都帰りの街道で出会った一人の冒険者が、

 自らの人生を大きく変える存在になることを。


 運命の歯車は、静かに回り始めていた。


――続く。

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