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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
鍛冶革命編

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第二話 王都との別れ

 旅立ちの朝――。


 王都アルティアの空は、どこまでも澄み渡っていた。


 雲ひとつない青空。

 大通りには朝早くから人々が行き交い、商人たちは店を開く準備に追われている。


 王国最大の都市にふさわしい、活気に満ちた朝だった。


 そんな王都の大通りを、三人の冒険者が歩いていた。


 ビルセイヤ。

 セシリア。

 エミリア。


 背負い袋には旅の荷物。

 腰には愛用の武器。


 次なる目的地へ向かう準備は、すでに整っていた。


「いよいよですね」


 セシリアが、少しだけ寂しそうに呟いた。


 王都で過ごした時間は、決して長くない。

 それでも、思い出は数え切れないほどある。


 国王ライオットとの謁見。

 王太子ウィルとの出会い。

 第二王女アイリスとのお茶会。


 そして――。


 フォレスト・キングとの死闘。

 古代遺跡で出会った、あの謎の存在。


 短い滞在とは思えないほど、濃密な日々だった。


「また来ればいい」


 ビルセイヤは、いつも通りの口調で言った。


「王都がなくなるわけじゃない」


「……それもそうですね」


 セシリアは小さく笑う。


 確かに、その通りだ。

 王都はここにある。


 また戻って来ればいい。

 その時は、今よりもっと強くなって。


 やがて三人は西門へ到着した。


 巨大な城壁に囲まれた王都の門。

 その前には、すでに見覚えのある人物が立っていた。


「やはり来ていたか」


「ウィル殿下」


 そこにいたのは、王太子ウィルだった。


 今日は護衛の数も少ない。

 王族としてではなく、一人の青年として見送りに来たように見えた。


「見送りに来てくださったんですか?」


 エミリアが驚いたように尋ねる。


 ウィルは穏やかに笑った。


「友人を見送るくらい、普通だろう?」


 その言葉に、セシリアがわずかに目を丸くする。


 友人。


 王太子が一介の冒険者へ向ける言葉としては、あまりにも異例だった。


 だが、ウィルの表情に迷いはない。

 彼は本気でそう言っているのだ。


「ビルセイヤ」


「はい」


「次に会う時は、模擬戦だ」


 ウィルの口元に笑みが浮かぶ。


 以前交わした約束。

 それは、王太子と冒険者ではなく、剣士同士の約束だった。


「分かりました」


 ビルセイヤも静かに笑う。


「負けませんよ」


「それはこちらの台詞だ」


 二人は固く握手を交わした。


 王太子と冒険者。

 本来なら、簡単に交わるはずのない立場。


 それでも二人の間には、確かな友情が芽生えていた。


 その時だった。


「お兄様だけずるいですわ」


 鈴のような声が響く。


 振り向くと、そこにはアイリスの姿があった。

 淡い色のドレスを身に纏い、その後ろには侍女のマリアが控えている。


「アイリス様」


 セシリアが驚いた声を上げた。


 まさか王女まで見送りに来るとは思っていなかったのだ。


「わたくしも、お見送りに参りました」


 アイリスは少し恥ずかしそうに微笑む。


 その瞳には、嬉しさと寂しさが同時に宿っていた。


「手紙、ありがとうございました」


 ビルセイヤが頭を下げる。


 その瞬間、アイリスの表情がぱっと明るくなった。


「読んでくださったのですね」


「もちろんです」


「……嬉しいです」


 その笑顔を見て、マリアは内心で小さくため息をついた。


 本当に分かりやすい。

 分かりやすすぎる。


 だが、肝心の本人はまったく気付いていない。


「こちらをお持ちください」


 アイリスは小さな袋を差し出した。


「これは?」


 ビルセイヤが受け取る。


 袋の中には、青く透き通る宝石が入っていた。

 朝日を受けて、静かに輝いている。


「旅のお守りです」


 アイリスは優しく言った。


「どうか、無事に帰って来てください」


 その言葉には、様々な想いが込められていた。


「ありがとうございます。大切にします」


 ビルセイヤは素直に礼を言う。


 その一言だけで、アイリスは満足そうに微笑んだ。


 やがて、別れの時が訪れる。


「お気を付けて」


 アイリスが静かに言った。


「また必ず、お会いしましょう」


「はい」


 ビルセイヤは力強く頷く。


 その返事に、アイリスは少しだけ安心したようだった。


 そして――。


 三人は王都アルティアを後にした。


 巨大な西門を抜ける。


 目の前には、どこまでも続く街道。

 その先にあるのは、伯爵領エメラルド・グリーン。


 商人と職人が集う、王国第二の都市。

 新たな冒険の舞台である。


 ビルセイヤは一度だけ振り返った。


 遠くに見える王都の城壁。

 門の前で手を振るウィルとアイリス。


 短い滞在だった。

 それでも、大切な出会いがあった。


 かけがえのない縁が生まれた。


「行こう」


 ビルセイヤが前を向く。


 セシリアとエミリアも頷いた。


 冒険は、まだ始まったばかり。


 青年たちは未来へ向かって歩き出す。


 その先に待つ運命を、まだ知らないまま――。


――続く。

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