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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

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第一話 新たな街への旅立ち

 王都アルティア――。


 フォレスト・キング討伐から、数日が過ぎていた。


 王都西の森で起きていた失踪事件は、無事に解決した。

 囚われていた人々も救出され、王都には少しずつ平穏が戻ってきている。


 酒場には笑い声が戻り、通りには露店が並び、人々はいつもの日常を取り戻しつつあった。


 だが――。


 ビルセイヤの心は、すでに次の場所へ向いていた。


 冒険者とは旅をする者だ。


 一つの場所に留まり続けるのではなく、未知の土地へ向かい、新たな出会いを重ね、強くなっていく。

 それが、ビルセイヤの思い描く冒険者の姿だった。


 そしてもう一つ。


 ビルセイヤの胸を強く動かしていたのは、鍛冶師としての想いだ。


 もっと多くの技術を見たい。

 もっと優れた鍛冶師と出会いたい。

 もっと多くの素材を知りたい。


 いつか、自分だけの最高の刀を打つために。


 その想いは、王都での日々を経るごとに、ますます強くなっていた。


「決めた」


 朝食の席で、ビルセイヤが口を開いた。


 向かいではセシリアがパンを食べている。

 エミリアは紅茶のカップを手にしていた。


「何をですか?」


 セシリアが首を傾げる。


「次の街へ行こうと思う」


 その言葉に、セシリアとエミリアは顔を見合わせた。


 だが、驚きはない。

 むしろ、やはりそう来たかという反応だった。


「どこへ向かうんですか?」


 エミリアが尋ねる。


 ビルセイヤは卓上に地図を広げた。

 アルティア王国全土が描かれた地図である。


「ここだ」


 指差した先は、王都の西方。


 伯爵領エメラルド・グリーン。


 王国第二の都市と呼ばれる、大商業都市だった。


「エメラルド・グリーンですか」


 エミリアが頷く。


「交易が盛んな街ですね。森林資源も豊富だったはずです」


「そうらしい」


 ビルセイヤも事前に調べていた。


 商人が集まり、職人が集まり、様々な技術が集まる街。

 そして、優秀な鍛冶師も多いという。


「なるほど」


 セシリアがにやりと笑う。


「つまり、鍛冶ですね」


「違う」


 ビルセイヤは即答した。


「冒険者としての成長も、ちゃんと考えている」


「本音は?」


「鍛冶」


 正直すぎる返答だった。


 セシリアとエミリアは同時に吹き出す。


 この男は、本当にぶれない。


 強敵との戦いより鍛冶。

 王都観光より鍛冶。

 王女とのお茶会より鍛冶。


 ここまでくると、逆に尊敬できるほどだった。


 そんな和やかな空気の中――。


 コンコン。


 部屋の扉が叩かれた。


「失礼いたします」


 聞き覚えのある声だった。


 ビルセイヤが扉を開けると、そこに立っていたのはマリアだった。

 第二王女アイリス付きの侍女である。


「マリアさん?」


 セシリアが目を丸くする。


 マリアは優雅に一礼し、一通の封筒を差し出した。


「アイリス様より、お手紙をお預かりしております」


 白い封筒には、王家の紋章が刻まれた封蝋。

 王族からの正式な手紙だった。


「私にですか?」


 ビルセイヤは受け取り、丁寧に封を切る。


 中には、整った文字で短い手紙が綴られていた。


『ビルセイヤ様


 突然のお手紙をお許しください。


 旅立たれると聞きました。


 寂しい気持ちはありますが、ビルセイヤ様の旅が素晴らしいものになることを願っております。


 また王都へ戻られた時は、ぜひ旅のお話を聞かせてください。


 どうかお元気で。


         アイリス・アルティア』


 短い手紙だった。


 けれど、その一文一文に想いが込められていることは、十分に伝わってくる。


「……良い方ですね」


 エミリアが柔らかく微笑む。


「そうですね」


 セシリアも静かに頷いた。


 一方で、マリアは少し複雑な気持ちだった。


 昨夜のアイリスの姿を思い出す。


 便箋を前にして、何度も書いては止まり、また書いては消す。

 何枚もの便箋を無駄にしながら、それでも言葉を選び続けていた。


 もっと想いを伝えたい。

 けれど、王女としての立場がある。


 その葛藤を、マリアはずっと傍で見ていた。


「必ずお渡しすると約束しておりましたので」


 マリアは静かにそう言った。


 ビルセイヤは手紙を丁寧に畳み、封筒へ戻す。


「ありがとうございます」


「こちらこそ」


 マリアは微笑み、踵を返した。


 だが、部屋を出る直前――一度だけ振り返る。


「アイリス様は、ビルセイヤ様のご無事を心より願っております」


 それだけ告げて、彼女は静かに部屋を後にした。


 扉が閉まる。


 しばしの沈黙。


 セシリアとエミリアは、同時にビルセイヤの顔を見た。


「……何ですか?」


「いえ、別に」


「何でもありません」


 二人は揃って視線を逸らす。


 やはり、この青年は気付いていない。


 王女の想いにも。

 その手紙に込められた迷いや願いにも。

 そして、それを託された侍女の苦労にも。


 見事なくらい、何も気付いていない。


 そんなビルセイヤを見て、二人は思わず苦笑した。


 こうして、ビルセイヤたちは旅立ちの準備を進めることになった。


 次なる目的地は、伯爵領エメラルド・グリーン。


 商人と職人が集う、王国屈指の大都市。

 そこには新たな出会いがあり、新たな技術があり、新たな冒険が待っているはずだ。


 冒険者として、さらに高みへ進むために。

 そして鍛冶師として、まだ見ぬ技と素材に触れるために。


 ビルセイヤたちの新たな旅が、今始まる。


 この旅立ちは、やがて仲間たちとの新たな出会いを呼び、

 ビルセイヤの鍛冶が王国に大きな変化をもたらす、その始まりになるのだった。


――続く。




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