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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第一章 冒険者への第一歩編

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第五話 王女様との出会い

 ゴブリンソルジャー討伐から数日後。


 ビルセイヤはシーサスの大通りを歩いていた。


 異世界へ来てからまだ一週間も経っていない。


 それでも生活は少しずつ安定し始めて


 薬草採取。


 スライム討伐。


 ゴブリン討伐。


 荷物運搬。


 初心者向けの依頼をこなしながら、冒険者としての経験を積んでいる。


 おかげでセシリアへの借金もかなり返済できた。


 だが。


「そろそろ限界だな……」


 ビルセイヤは手に持っていた木の枝を見つめた。


 異世界へ来てからずっと使っている相棒。


 だが武器ではない。


 ただの木の枝である。


 よく考えなくてもおかしい。


 ゴブリンソルジャーまで倒しているのに、武器が木の枝というのはどうなのだろう。


「今日は武器屋だな」


 そう決めて歩き出す。


 刀鍛冶としての知識はある。


 だが異世界の金属事情はまだ分からない。


 まずは市場調査も兼ねて見学するつもりだった。


◇◇◇


 シーサスの中心街は今日も賑わっていた。


 魚を売る商人。


 果物を並べる露店。


 武器や防具を売る店。


 行き交う冒険者たち。


 そんな人混みの中を歩いていると――。


「きゃっ!」


 突然、小さな悲鳴が聞こえた。


 視線を向ける。


 一人の少女が石畳につまずいて倒れそうになっていた。


 反射的だった。


 身体が勝手に動く。


 剣道で鍛えた瞬発力。


 数歩で距離を詰める。


 そして。


「危ない!」


 少女の身体を支えた。


 ふわりと甘い香りが漂う。


 腕の中に収まった少女は驚いたように目を見開いていた。


「大丈夫か?」


「あ……」


 透き通るような金髪。


 宝石のような蒼い瞳。


 整った顔立ち。


 上品な服装。


 どこか育ちの良さを感じさせる少女だった。


 年齢は十七歳前後だろう。


「す、すみません……」


 少女は顔を真っ赤にしながら頭を下げた。


「怪我はないか?」


「は、はい!」


 慌てて頷く。


 どうやら無事らしい。


 ビルセイヤは安心して手を離した。


「それなら良かった」


 その一言。


 ただそれだけだった。


 だが。


 少女の心臓はとんでもないことになっていた。


◇◇◇


(か、格好いい……)


 少女は呆然としていた。


 人生で初めてだった。


 胸がこんなにも高鳴るのは。


 少女の名前はアイリス。


 王都にある王城で暮らす第二王女である。


 本来ならば。


 今頃は礼儀作法や政治の勉強をしている時間だった。


 だが今日は違う。


 城下町を見てみたい。


 そんな好奇心から護衛の目を盗み、変装してシーサスまでやって来ていたのだ。


 そして。


 運命の出会いを果たしてしまった。


(素敵……)


 助けられた。


 優しかった。


 強そうだった。


 笑顔も素敵だった。


(結婚したい)


 出会って三分。


 アイリスの中で結論が出た。


◇◇◇


 一方のビルセイヤはそんなことを全く知らない。


「じゃあ気を付けろよ」


 軽く手を振って立ち去ろうとする。


 その瞬間。


「ま、待ってください!」


 アイリスが慌てて呼び止めた。


「ん?」


「あ、あの……」


 ここで別れたら二度と会えない気がする。


 そんな予感がした。


「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


 勇気を振り絞って尋ねる。


 ビルセイヤは少しだけ考えた後、素直に答えた。


「ビルセイヤだ」


「ビルセイヤ様……」


 名前を聞いただけで幸せな気持ちになる。


 重症だった。


「私はアイリスです」


「そうか。よろしくな」


 にっこりと笑う。


 アイリスの心臓が危険な音を立てた。


◇◇◇


 その時だった。


「ビルセイヤさん!」


 聞き慣れた声が響く。


 振り返るとセシリアが人混みをかき分けながら走ってきていた。


「探しましたよ」


「悪い悪い」


「依頼の打ち合わせをする約束だったじゃないですか」


「あぁ、そうだったな」


 セシリアはため息を吐く。


 そして自然な流れでアイリスへ視線を向けた。


「こちらの方は?」


「さっき知り合った」


「そうですか」


 にこり。


 セシリアが笑う。


 アイリスも笑う。


「初めまして」


「初めまして」


 二人とも笑顔だった。


 だが。


 なぜか空気が重い。


 ビルセイヤは首を傾げた。


 何かあっただろうか。


◇◇◇


 アイリスは改めてセシリアを見る。


 綺麗な女性だ。


 しかもビルセイヤと親しそう。


(ライバル……?)


 危険信号が鳴る。


 一方のセシリアも同じことを考えていた。


(なんでこの人、こんなにビルセイヤさんを見てるんですか?)


 出会ったばかりのはずなのに。


 妙に距離が近い気がする。


 だが二人とも口には出さない。


 まだ初対面だからだ。


◇◇◇


「それでは私、そろそろ失礼します」


 アイリスは優雅に頭を下げた。


 王女として叩き込まれた礼儀作法が自然と出る。


「そうか」


「はい」


 そして。


 少しだけ頬を染めながら言った。


「またお会いできますよね?」


 期待に満ちた眼差し。


 ビルセイヤは深く考えず答えた。


「ああ。縁があればな」


「はい!」


 アイリスの顔がぱっと明るくなる。


 そして彼女は心の中で固く誓った。


(縁なら作ります!)


(絶対に結婚します!)


 王女として。


 女性として。


 全力で。


◇◇◇


 こうしてビルセイヤは知らぬ間に第二王女の心を射止めていた。


 もちろん本人は全く気付いていない。


 そして数日後。


 アイリスがとんでもない方法でビルセイヤへ接近しようとすることも――。


 まだ誰も知らなかった。


第一章 第五話


「王女様との出会い」


――続く。

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