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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第一章 冒険者への第一歩編

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第四十七話 狂暴化した王

 グォォォォォォォォォォッ!!


 フォレスト・キングの咆哮が、森全体を震わせた。


 赤黒い魔力が全身から噴き出し、巨体を包み込む。


 狂暴化――。


 瀕死に追い込まれた高位魔物が発動する危険な状態。

 理性を失う代わりに、身体能力が飛躍的に上昇する。


 まさに最後の切り札だった。


「来ます!」


 エミリアが叫ぶ。


 次の瞬間――。


 ドンッ!!


 地面が爆発したような轟音が響いた。


 フォレスト・キングの姿が消える。


「なっ!?」


 セシリアが目を見開く。


 違う。


 消えたのではない。

 速すぎて、見失ったのだ。


 直後、巨大な拳がセシリアへ襲い掛かった。


「くっ!」


 咄嗟に剣を構える。


 ガァァァン!!


 凄まじい衝撃。


 セシリアの身体が吹き飛ばされた。


「セシリア!」


 ビルセイヤが叫ぶ。


 数メートル先を転がりながらも、セシリアはすぐに立ち上がった。


「だ、大丈夫です……!」


 腕が痺れる。


 だが骨は折れていない。


 オークロードとの死闘を経験した彼女は、以前よりも遥かに強くなっていた。


「無理はするな!」


「まだ戦えます!」


 力強い返答だった。


 しかし状況は厳しい。


 狂暴化したフォレスト・キングは、先ほどまでとは比較にならない強さを見せていた。


    ◇◇◇


 その時――。


 ビルセイヤの脳裏に、かつての師の言葉が蘇る。


『強敵ほど、力で勝とうとするな』


『相手をよく見ろ』


『理を見失うな』


 ビルセイヤは静かに息を吐いた。


 そして、敵を観察する。


 動き。

 呼吸。

 重心。

 足運び。


 剣術とは、人を制する術。


 どれほど綺麗事を並べても、その本質は変わらない。


 だからこそ、力任せではなく合理的に勝つ。


 それが剣の理だ。


 フォレスト・キングは確かに強い。


 だが、狂暴化によって理性を失っている。


 力は増した。


 しかし――。


 動きは単調になっている。


「なるほど」


 ビルセイヤが小さく呟く。


「見えた」


 セシリアとエミリアが振り向いた。


「何がですか?」


「勝ち筋だ」


 その一言で、二人の目が変わる。


 ビルセイヤがそう言うなら、本当にあるのだ。


    ◇◇◇


「エミリア!」


「はい!」


「左側から風魔法で攻撃を続けてくれ」


「分かりました!」


「セシリアは正面から注意を引いてくれ」


「任せてください!」


 二人は即座に動いた。


「ウィンドアロー!」


 風の矢が放たれる。


 フォレスト・キングがエミリアへ顔を向けた。


 その隙に――。


「こっちです!」


 セシリアが正面から斬り込む。


 完全に注意が分散した。


 そして、ビルセイヤは静かに位置を変える。


 狙いは最初から決まっていた。


 右膝。


 先ほど傷付けた関節部分だ。


 狂暴化によって力は増した。

 しかし傷が治ったわけではない。


 むしろ無理な動きによって、負担は増えている。


 理を見極めれば答えは一つ。


 そこが最大の弱点だった。


「そこだ!」


 ビルセイヤが飛び込む。


 一気に加速。


 地面を蹴る。


 剣道の基本。


 正確に。

 最短で。

 無駄なく。


 そして――。


 ザァァァァッ!!


 剣が傷口へ深々と食い込んだ。


「グォォォォォォッ!?」


 絶叫が響く。


 巨体が大きく傾いた。


 膝関節が完全に破壊されたのだ。


 フォレスト・キングが片膝をつく。


 勝負の流れが、こちらへ傾いた。


「今です!」


 エミリアが叫ぶ。


「はい!」


 セシリアが跳んだ。


 今までで最も高く。


 今までで最も速く。


 そして――今までで最も強く。


「はああああああああっ!!」


 渾身の一撃。


 剣が閃く。


 ズバァァァァン!!


 鋭い斬撃が首筋を深く切り裂いた。


 フォレスト・キングの巨体が揺れる。


 赤黒い魔力が霧散する。


 そして――。


 ゆっくりと。


 ゆっくりと。


 大地へ倒れ込んだ。


 ドォォォォォン!!


 森全体が震える。


    ◇◇◇


 静寂。


 しばらく、誰も動かなかった。


「勝った……?」


 セシリアが呟く。


 ビルセイヤは慎重に近付いた。


 呼吸なし。

 魔力反応なし。


 完全に絶命している。


「終わった」


 その言葉で、ようやく三人は肩の力を抜いた。


 Aランク魔物。


 フォレスト・キング討伐。


 本来なら大規模討伐隊が出動するほどの戦果である。


 だが、三人だけで成し遂げた。


 確かな成長の証だった。


 しかし――。


 ビルセイヤはすぐに表情を引き締める。


「……おかしい」


「え?」


 セシリアが振り向く。


 ビルセイヤは森の奥を見つめていた。


 そこから、不気味な魔力が流れてきている。


 フォレスト・キングとは違う。


 もっと禍々しい何か。


 まるで――誰かが呼んでいるような感覚だった。


「この魔物が原因じゃない」


 ビルセイヤの声に、セシリアとエミリアの表情も変わる。


 森の奥。


 暗く沈んだ木々の向こう。


 そこにはまだ、何かがある。


 そして三人はまだ知らない。


 失踪事件の真相が、さらに森の奥に眠っていることを。


---


第一章 第四十七話


狂暴化した王


――続く。

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