第四十四話 王都冒険者ギルドの依頼
アイリスとのお茶会を終えた翌日――。
ビルセイヤたちは再び王都冒険者ギルドを訪れていた。
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朝から多くの冒険者で賑わうギルド。
受付前には依頼を探す者たちが集まり、酒場スペースでは既に情報交換が始まっている。
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「やっぱり落ち着きますね」
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セシリアが周囲を見回しながら呟いた。
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王城は素晴らしかった。
豪華な庭園も美しかった。
アイリスとのお茶会も楽しかった。
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だが――。
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自分たちは冒険者だ。
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冒険者ギルドの空気の方が、どこか居心地が良い。
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「確かにな」
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ビルセイヤも頷く。
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王城では常に周囲の視線を感じる。
礼儀作法にも気を遣う。
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しかしギルドは違う。
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依頼を受ける。
魔物を討伐する。
報酬を得る。
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単純で分かりやすい世界だ。
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そんなことを考えながら受付へ向かうと、周囲が少しざわついた。
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「あれが噂の……」
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「オークロード討伐の冒険者か」
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「王城へ招かれたって本当だったんだな」
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「まだ若いじゃないか……」
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視線が集まる。
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どうやら噂はさらに広がっているらしい。
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ビルセイヤは苦笑した。
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本当に目立ちたくない。
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できれば静かに鍛冶をして暮らしたいくらいだ。
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「ビルセイヤ様」
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受付嬢が笑顔で声を掛けてくる。
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「ギルドマスターから伝言があります」
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「伝言ですか?」
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「はい」
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受付嬢は一枚のメモを取り出した。
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「もしギルドへ来られたら、会議室へ案内するようにとのことです」
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ギルドマスター・ガルドからの呼び出しだった。
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「何でしょうね?」
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セシリアが首を傾げる。
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「行けば分かるだろう」
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三人は二階の会議室へ向かった。
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扉を開く。
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中にはガルドが待っていた。
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しかし、それだけではない。
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騎士団の制服を着た男。
商人と思われる中年男性。
地図を広げる熟練冒険者。
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複数の関係者が集まっていた。
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ただならぬ雰囲気である。
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「来たか」
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ガルドが腕を組みながら言った。
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「座ってくれ」
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三人は席に着く。
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ガルドは机の上へ大きな地図を広げた。
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「実は少し厄介な依頼がある」
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その言葉で室内の空気が引き締まる。
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「厄介な依頼ですか?」
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ビルセイヤが尋ねる。
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「ああ」
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ガルドは頷いた。
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「王都西の森で異変が起きている」
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ビルセイヤは地図へ目を向けた。
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王都西側。
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広大な森林地帯が広がっている。
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「魔物ですか?」
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「それが分からん」
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ガルドの表情が険しくなった。
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「森へ入った冒険者が何人も消息を絶っている」
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セシリアの表情も引き締まる。
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失踪案件。
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それは高難度依頼の典型だった。
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「目撃情報はありますか?」
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エミリアが質問する。
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「巨大な影を見たという証言はある」
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「だが正体は誰も確認できていない」
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今度は騎士団の男が口を開いた。
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「騎士団も調査した」
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「しかし森の奥で痕跡が消える」
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「まるで何かに誘い込まれるようにな」
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不気味な話だった。
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ガルドがビルセイヤを見る。
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「本来ならAランク向け依頼だ」
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「だが君たちなら可能だと判断した」
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オークロード討伐。
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その実績は王都でも高く評価されている。
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「もちろん強制ではない」
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「受けるかどうかは君たちが決めろ」
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部屋が静まり返る。
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セシリアがビルセイヤを見る。
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エミリアも同じだった。
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三人で決めることだからだ。
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ビルセイヤは少しだけ考えた。
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危険な依頼だろう。
失踪者も出ている。
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だが。
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「その人たちは、まだ生きている可能性がありますか?」
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静かな問いだった。
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ガルドは頷く。
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「ゼロではない」
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「なら助けたいですね」
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迷いのない答えだった。
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セシリアも頷く。
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「私も賛成です」
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エミリアも微笑んだ。
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「もちろんです」
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三人の意見は最初から決まっていた。
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困っている人がいる。
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なら助ける。
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それが三人の答えだった。
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ガルドが満足そうに笑う。
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「そう言うと思った」
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そして地図の一点を指差した。
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「調査開始は明日の朝だ」
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「目的地はこの森の最深部」
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「何がいるのか突き止めてほしい」
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三人は真剣な表情で頷いた。
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こうして。
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ビルセイヤたちは新たな依頼を受けることになる。
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王都西の森。
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そこに潜む未知の脅威。
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そして、この依頼は――。
◇◇◇
ビルセイヤが王都で初めて挑む本格的な高難度任務の始まりとなるのだった。
第一章 第四十五話
「王都冒険者ギルドの依頼」
――続く。




