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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第一章 冒険者への第一歩編

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第三十六話 王女との初対面

 王都冒険者ギルド。


 王国最大の冒険者たちが集うその建物を見上げながら、ビルセイヤは感心したように頷いていた。


「見事な造りだな」


 太い柱。

 頑丈な梁。

 無駄のない石造りの構造。


 職人として興味を惹かれる部分が多い。


「ビルセイヤさん」


「なんだ?」


「まずは中へ入りましょう」


 セシリアが半ば呆れたように言う。


 王都へ来ても鍛冶や建築ばかり見ている。

 ある意味、いつも通りだった。


 ビルセイヤたちはロイドに案内され、王都冒険者ギルドの中へ入る。


 その瞬間――


 ざわっ、と空気が揺れた。


 ギルド内にいた冒険者たちの視線が、一斉に三人へ集まる。


「おい……あいつじゃないか?」


「オークロードを倒したっていう……」


「辺境の英雄候補か」


「ゴブリンジェネラルも討伐したらしいぞ」


 ひそひそと囁き合う声が聞こえる。


 どうやら噂は、すでに王都へ広まっているらしい。


 ビルセイヤは少しだけ居心地の悪さを感じた。


 本当は目立ちたくない。

 鍛冶をして、冒険をして、静かに暮らしたいだけだ。


 しかし現実は、そう上手くいかないらしい。


「こちらです」


 ロイドに案内され、ギルドの奥へ向かう。


 二階。

 一般冒険者は立ち入れない区域。


 通されたのは、豪華な応接室だった。


 高級木材で作られた机。

 柔らかなソファ。

 壁には魔物討伐の記念品が飾られている。


 そして――


「ようこそ王都へ」


 一人の壮年の男性が立ち上がった。


 筋骨隆々。

 鋭い眼光。

 歴戦の戦士を思わせる風格。


 王都冒険者ギルドのギルドマスターだった。


「私はガルドだ」


 ビルセイヤたちも順番に名乗る。


「ビルセイヤです」

「セシリアです」

「エミリアです」


 ガルドは満足そうに頷いた。


「噂以上だな」


「ゴブリンジェネラル討伐。オークロード討伐。どちらも並の冒険者では成し遂げられん」


 率直な称賛だった。


 しかし――


「運が良かっただけです」


 ビルセイヤはそう答える。


 ガルドは豪快に笑った。


「はははっ! 運だけでオークロードは倒せんよ」


 その通りだった。


 実力がなければ、生き残ることすらできない。


 部屋の空気が和らぎ始めた、その時だった。


 コンコン。


 扉が叩かれる。


「入れ」


 ガルドが応じる。


 ゆっくりと扉が開いた。


 そして――その人物が部屋へ入ってきた瞬間、誰もが視線を奪われた。


 雪のように白いドレス。

 陽光を思わせる金色の髪。

 透き通るような白い肌。


 そして、気品に満ちた立ち振る舞い。


 一目で分かる。


 高貴な身分の人物だと。


「失礼いたします」


 少女は優雅に一礼した。


 その後ろには一人の侍女。

 マリアが静かに控えている。


 ガルドが苦笑を浮かべた。


「お待ちかねの方が来たぞ」


「お待ちかね?」


 ビルセイヤが首を傾げる。


 少女は一歩前へ出た。


「初めまして」


 鈴の音のように澄んだ声だった。


「私はアルティア王国第二王女――アイリス・アルティアと申します」


 部屋が静まり返る。


 セシリアの身体がぴしりと固まった。

 エミリアも目を見開く。


 王女。


 本物の王女だ。


 普通の冒険者なら、一生関わることすらない存在。


 だが、一方で――


「ビルセイヤです」


 ビルセイヤは普段通りに名乗った。


 アイリスが一瞬だけ目を丸くする。


 予想していた反応ではなかったのだろう。


 普通なら慌てる。

 緊張する。

 言葉に詰まる。


 しかし、目の前の青年は違った。


 自然体だった。


 まるで身分など気にしていないかのように、落ち着いている。


(面白い方ですわ……)


 アイリスは思わず微笑んだ。


 その表情を見たマリアは、心の中でそっとため息をつく。


(始まりましたね……)


 幼い頃から仕えているからこそ分かる。


 アイリスは完全に興味を持った。

 しかも、かなり強く。


「ビルセイヤ様」


 アイリスが柔らかく微笑む。


「王都へようこそ」


「ありがとうございます」


 穏やかな返事。


 その様子に、アイリスの笑みはさらに深くなる。


 気取らない。

 媚びない。

 それでいて失礼でもない。


 王族として多くの貴族や騎士と接してきたアイリスにとって、それは新鮮な反応だった。


「後ほど、王城へもご招待したいのですが」


 さらりと告げられた言葉に、セシリアとエミリアが固まる。


 王城。


 普通の冒険者が足を踏み入れるような場所ではない。


 だが――


「構いませんが」


 ビルセイヤはあっさり承諾した。


 緊張感がない。

 あまりにも自然だった。


 一瞬ぽかんとした後――


「ふふっ」


 アイリスが楽しそうに笑った。


 その笑顔は年相応に愛らしく、しかしどこか気品を損なわない。


 王女が笑ったことで、部屋の空気もふっと和らぐ。


 セシリアとエミリアは顔を見合わせた。


(本当に普通に話してる……)

(ビルセイヤさんらしいですね……)


 そんな心の声が聞こえてきそうだった。


 こうして――


 辺境から来た冒険者、ビルセイヤ。

 そして、アルティア王国第二王女、アイリス。


 二人は初めて言葉を交わした。


 まだ誰も知らない。


 この出会いが――

 後に世界を救う英雄と王女、そして未来の夫婦となる二人の物語の始まりであることを。


 運命の歯車は、静かに動き始めていた。


---


第一章 第三十六話


王女との初対面


――続く。

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