第三十四話 盗賊討伐
王都アルティアへ向かう街道沿いの休憩所。
穏やかだった空気は、盗賊たちの登場によって一変していた。
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森から現れた十人ほどの男たち。
粗末な革鎧。
欠けた剣。
使い込まれた斧。
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一目で分かる。
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盗賊だ。
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「へへへっ!」
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先頭に立つ男が下卑た笑みを浮かべる。
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「今日は運がいいぜ!」
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「貴族様の馬車じゃねぇか!」
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盗賊たちは馬車を取り囲むように広がった。
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「大人しく金目の物を置いていけば命だけは助けてやる!」
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いかにも盗賊らしい台詞だった。
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ロイドの顔色が青くなる。
御者も怯えた表情を浮かべていた。
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しかし――。
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ビルセイヤたちは落ち着いていた。
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いや。
落ち着き過ぎていた。
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「どうします?」
セシリアがいつもの調子で尋ねる。
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「捕まえる」
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ビルセイヤは即答した。
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「全員ですか?」
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「全員だ」
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「了解です」
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まるで依頼の確認でもしているような会話だった。
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盗賊たちの眉がぴくりと動く。
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「おいおい……」
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盗賊の一人が剣を向けた。
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「立場が分かってねぇみたいだな?」
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しかし。
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ビルセイヤはため息を吐くだけだった。
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「セシリア」
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「はい」
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「怪我はさせるな」
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「頑張ります!」
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盗賊たちの額に青筋が浮かぶ。
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完全に見下されていた。
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「舐めやがって!」
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「やれぇっ!」
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盗賊たちが一斉に襲い掛かる。
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だが。
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結果は最初から決まっていた。
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「はっ!」
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セシリアが前へ飛び出す。
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片手剣が閃く。
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ガキン!
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盗賊の剣を弾き飛ばした。
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「なっ!?」
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驚く盗賊。
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その隙に足払い。
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ドサッ!
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「ぐえっ!」
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見事に転倒した。
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戦闘不能。
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その横ではエミリアが静かに杖を構える。
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「風よ」
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小さな詠唱。
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「ウィンドバインド」
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風が渦を巻く。
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二人の盗賊の足へ絡み付いた。
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「なんだ!?」
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「うわっ!」
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二人同時に転倒。
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そのまま地面へ押さえ付けられる。
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戦闘不能。
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わずか数秒だった。
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三人の盗賊が無力化される。
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「ば、馬鹿な……」
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盗賊の頭領が顔色を変えた。
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ようやく理解する。
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相手は普通の旅人ではない。
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強い。
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しかも異常なほどに。
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その時だった。
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ビルセイヤが動く。
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一歩。
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ただそれだけ。
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次の瞬間には頭領の目の前へ到達していた。
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「なっ!?」
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速い。
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見えなかった。
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頭領が慌てて剣を振るう。
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しかし。
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ビルセイヤは最小限の動きで躱す。
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そして――。
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ゴッ!
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剣の柄頭を腹へ叩き込んだ。
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「がはっ!」
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頭領が膝をつく。
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呼吸が止まる。
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そのまま意識を失った。
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「頭領ぉ!?」
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盗賊たちが悲鳴を上げる。
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圧倒的だった。
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オークロードと死闘を繰り広げた三人にとって、盗賊団など脅威にならない。
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数分後。
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全てが終わった。
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盗賊十名。
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全員捕縛。
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重傷者なし。
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「終わりました」
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セシリアが笑顔で報告する。
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「終わったな」
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ビルセイヤも頷いた。
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ロイドは呆然としている。
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「凄い……」
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それしか言葉が出なかった。
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盗賊団を数分で制圧。
しかも死者はゼロ。
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普通ならあり得ない。
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「近くに騎士団の詰所はありますか?」
エミリアが尋ねる。
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「え、ええ」
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ロイドが我に返った。
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「ここから一時間ほどの場所にあります」
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「なら引き渡しましょう」
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盗賊たちは縄で縛られていく。
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その時だった。
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「た、助けてくれ!」
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若い盗賊が叫んだ。
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「俺たちは好きで盗賊になったんじゃない!」
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ビルセイヤが足を止める。
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「どういう意味だ?」
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「村が飢えてるんだ!」
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盗賊の目には涙が浮かんでいた。
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「今年は不作だった……」
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「子供たちが腹を空かせてるんだ……!」
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その場が静まり返る。
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頭領は俯いたまま何も言わない。
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だが否定もしなかった。
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嘘ではないのだろう。
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ビルセイヤは少し考えた。
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盗賊は悪だ。
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人を襲った。
奪おうとした。
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だから罪は罪である。
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しかし。
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事情があることも理解できた。
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「騎士団へ引き渡す」
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若い盗賊が絶望した表情になる。
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だが。
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「ただし」
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ビルセイヤは続けた。
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「事情は説明してやる」
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「え……?」
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「本当に村が困っているなら救う方法はある」
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「だからまず罪を償え」
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「その後でやり直せばいい」
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静かな声だった。
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だが不思議な重みがあった。
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若い盗賊は涙を流しながら頷く。
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「……はい」
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こうして盗賊騒動は終わった。
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再び馬車は王都へ向けて走り出す。
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窓の外では青空が広がっていた。
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そして王都アルティアでは――。
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「まだですの?」
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第二王女アイリスが落ち着きなく部屋を歩き回っていた。
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「まだ到着まで数時間ございます」
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侍女マリアが苦笑する。
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「長いですわ……」
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まだ会ったこともない英雄。
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それでも少女の胸は期待でいっぱいだった。
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一方その頃。
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当のビルセイヤは。
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「王都の鍛冶師ギルド、楽しみだな」
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完全に鍛冶のことしか考えていなかった。
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運命の出会いまで、あと少し――。
第一章 第三十五話
「盗賊討伐」
――続く。




