表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
239/243

第百九十話 凍てついた故郷

 氷牙熊に導かれ、ビルセイヤたちは山道を駆け下りる。


 眼下に広がるスノリア村は、白銀の雪に包まれていた。


 しかし、その美しさとは裏腹に、村全体からは重苦しい空気が漂っている。


 家々の煙突から立ち上る煙はほとんどなく、生活の気配も薄い。


 まるで村そのものが眠りについてしまったかのようだった。


◇◇◇


「お父さん……お母さん……。」


 リシアは祈るように呟きながら走る。


 フィリアはそんな彼女の肩に手を添えた。


「大丈夫。」


「必ず助けます。」


 その言葉には、自分自身へ言い聞かせるような強い決意も込められていた。


◇◇◇


 村の入口へ辿り着くと、木製の門は厚い氷に覆われていた。


 ビルセイヤは白枝を抜く。


「下がっていて。」


 静かに呼吸を整える。


「飛天御剣流――。」


 一閃。


 カキィン――!


 刃は門を傷付けることなく、氷だけを美しく断ち切った。


 砕けた氷は光の粒となって風に舞い、門はゆっくりと開いた。


「すごい……。」


 リシアは目を丸くする。


 セシリアは微笑みながら言った。


「ビルの剣は、守るための剣だから。」


◇◇◇


 一行は慎重に村へ入る。


 道には人の足跡がない。


 吹雪が消したのではない。


 ここ数日、誰も外へ出られなかったことを物語っていた。


「静かすぎますね。」


 ツバサが辺りを見回す。


 すると、一軒の家の窓から、小さく灯りが揺れた。


「誰かいます!」


 エミリアが駆け寄る。


◇◇◇


 扉を叩くと、中から弱々しい声が返ってきた。


「……誰だ?」


「冒険者です。」


「助けに来ました。」


 ゆっくりと扉が開く。


 現れたのは、白髪の老人だった。


 顔色は悪く、厚着をしているにもかかわらず震えている。


 老人はフィリアを見るなり、大きく目を見開いた。


「その顔……。」


「まさか……。」


「フィリア、なのか?」


◇◇◇


 フィリアも息を呑んだ。


「グランおじいちゃん……?」


 老人は涙ぐみながら頷く。


「やっぱり、お前だったか……。」


 フィリアが幼い頃、よく木彫りを教えてくれた近所の老人だった。


 十年以上の時を経ても、その優しい眼差しは変わっていない。


 フィリアは思わず老人の手を握る。


「ご無事で良かった……。」


◇◇◇


 家の中へ案内されると、暖炉には弱々しい火が灯っていた。


 部屋の奥には数人の村人が毛布に包まり横になっている。


 皆、疲れ切った表情だった。


「村は、この有り様じゃ。」


 グラン老人が静かに語る。


「吹雪が始まってからというもの、畑は全滅。」


「狩りにも出られん。」


「外へ出れば氷に閉ざされる。」


 リシアは両親へ駆け寄った。


「お父さん!」


「お母さん!」


 二人は弱々しく目を開き、娘の無事な姿を見て涙を流した。


◇◇◇


 フィリアはすぐに治癒魔法を施す。


「《ヒール》。」


 柔らかな聖なる光が部屋を包む。


 村人たちの表情が少しずつ和らいでいく。


「身体は回復しています。」


 エミリアが魔力を探る。


「ですが……。」


「どうした?」


 ビルセイヤが尋ねる。


「病気ではありません。」


「何かに生命力を少しずつ奪われています。」


 ヴァルグラムが低く唸った。


『霊樹だ。』


『正確には、穢れに侵された霊樹が周囲の命を吸ってしまっている。』


◇◇◇


 その時、家の奥から一人の壮年の男性が姿を現した。


 肩まで伸びた白髪に、厳しい表情。


 しかし、その瞳には村人を守ろうとする強い意志が宿っている。


「フィリア……。」


 彼は静かに娘のような眼差しを向けた。


「久しぶりだな。」


 フィリアは深く頭を下げた。


「村長……。」


 リシアが紹介する。


「この人がスノリア村の村長、オルディスさんです。」


◇◇◇


 オルディス村長はビルセイヤたちへ向き直る。


「遠いところ、本当にありがとう。」


「だが……。」


 その表情が曇る。


「もう時間がない。」


 部屋の空気が張り詰める。


「昨夜。」


「白き風の乙女が、ついに村の中央広場へ姿を現した。」


 フィリアの胸元の首飾りが、淡く光を放つ。


 ビルセイヤは静かに白枝へ手を添えた。


「その人は、何をしていたんですか?」


 オルディスはゆっくりと首を振る。


「何もしていない。」


「ただ……。」


「広場で泣き続けていた。」


 その言葉に、一同は息を呑む。


 泣く白き風の乙女。


 それは宿場町リンドで聞いた証言とも一致していた。


 そして、その涙と共に吹雪はさらに激しさを増しているという。


 第三の霊樹へ繋がる真実は、もうすぐその姿を現そうとしていた。


――続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ