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異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

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第百七十話 禁忌の融合

 ドクン――。


 ドクン――。


 翡翠魔兵の胸に埋め込まれた魔核が、再び不気味な鼓動を刻み始める。


 先ほどビルセイヤが《断流》によって断ち切ったはずの穢れた魔力。


 その失われた流れを埋めるように、ガイゼル自身の命が流し込まれていた。


「ぐっ……!」


 ガイゼルの顔色はみるみる青白く変わっていく。


 それでも口元には狂気じみた笑みが浮かんでいた。


「これで……いい。」


「これで神代へ届く……!」


 蛇杖は鮮血を吸い込み、禍々しい赤黒い光を放つ。


 その魔力は翡翠魔兵へと注がれ続けていた。


◇◇◇


「正気じゃない……。」


 フィリアが震える声を漏らす。


「自分の命を魔核へ……。」


 エミリアも静かに首を振った。


「もう魔法ではありません。」


「命そのものを燃料にしています。」


 ヴァルグラムの表情は険しい。


『神代でも禁じられた術だ。』


『魂を魔核へ繋ぎ、疑似的な神兵へ変える禁術。』


『完成すれば使用者は二度と人へ戻れぬ。』


◇◇◇


 ガイゼルは笑った。


「戻る必要などない。」


「人など弱い。」


「限界がある。」


「だからこそ、神代の力を手にする!」


 その瞬間。


 翡翠魔兵の胸部が大きく開いた。


 結晶が花弁のように左右へ裂ける。


 その中心には、鼓動を続ける巨大な翡翠魔核。


 そして――。


 ガイゼルの身体が、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。


「まさか……。」


 セシリアが息を呑む。


 ガイゼルは抵抗しない。


 自ら魔核へ向かって歩み始めた。


◇◇◇


「止める!」


 ビルセイヤが駆け出す。


「させません!」


 フィリアが聖なる光を放つ。


「《ホーリー・ジャベリン》!」


 純白の光槍が一直線に飛ぶ。


 しかし。


 ガイゼルの前へ黒い結界が展開された。


 ガァン!!


 光槍は弾かれ、霧散する。


「結界!」


 フィリアが驚く。


 ガイゼルは振り返りもせず笑った。


「融合が始まった今。」


「誰にも止められん。」


◇◇◇


「ビルセイヤ!」


 ツバサが叫ぶ。


「左だ!」


 融合を守るように、翡翠魔兵の四本の腕が一斉に襲い掛かる。


 ドゴォォォォン!!


 大地が砕ける。


 ビルセイヤは紙一重で回避。


 白枝で反撃する。


「飛天御剣流!」


 《龍翔閃》!


 ガキィィィン!!


 腕を斬り飛ばす。


 だが――。


 切断された腕は黒い結晶となり、瞬く間に再生してしまう。


「再生が速くなってる!」


 ツバサが舌打ちする。


◇◇◇


 その頃。


 フェンリルは白き霊樹の前で低く唸っていた。


 ガルルルル……。


 白き霊樹も苦しげに枝葉を揺らしている。


 すると。


 一枚。


 また一枚。


 白い葉が舞い落ちた。


 その葉はビルセイヤの周囲を静かに巡る。


「……これは。」


 カグラが目を見開く。


「霊樹が力を貸しています!」


◇◇◇


 白い葉は全部で七枚。


 白枝の周囲を円を描くように回り始める。


 その光景を見たヴァルグラムが静かに呟いた。


『七葉の加護。』


『白き霊樹最大の祝福だ。』


「七葉の加護?」


 エミリアが尋ねる。


『霊樹が真に認めた者へ与える神代の加護。』


『穢れを断つ力がさらに高まる。』


 ビルセイヤは白枝を握り直した。


 刀身がこれまでにないほど澄み切っている。


 穢れと命。


 その境界が、はっきりと見えていた。


◇◇◇


 だが、その直後だった。


「間に合った。」


 ガイゼルが不気味に笑う。


 身体の半分がすでに魔核へ溶け込んでいた。


 人の脚は結晶へ変わり。


 胸は翡翠色に染まり。


 左腕は巨大な結晶の腕へ変貌している。


「見ろ。」


「これが。」


「人を超えた姿だ。」


 ゴォォォォッ!!


 融合が完成した瞬間。


 翡翠魔兵の瞳へ、ガイゼルの黄金色の瞳が宿った。


 今まで無機質だった魔兵へ、明確な意思が宿る。


「まずい!」


 エミリアが叫ぶ。


「魔兵に知性が!」


 ヴァルグラムも険しい表情を浮かべた。


『最悪だ。』


『完全融合してしまった。』


◇◇◇


 融合したガイゼルは、ゆっくりとビルセイヤへ顔を向けた。


 その口元が歪む。


「ありがとう。」


「契約者候補。」


「お前のおかげで。」


「私は神代へ一歩近づいた。」


 巨大な身体が一歩踏み出す。


 その一歩だけで聖域全体が揺れた。


 黒い瘴気と翡翠色の魔力が渦を巻き、空までも染め上げていく。


 白き霊樹の葉が激しく舞う。


 フェンリルが天を震わせる咆哮を放つ。


 そしてビルセイヤは、白枝を静かに構えた。


「……違う。」


 その声は静かだった。


 しかし、揺るがない。


「お前は神へ近づいたんじゃない。」


「命から最も遠い存在になっただけだ。」


 その言葉に、融合したガイゼルの笑みがゆっくりと消えていく。


 神代の禁忌。


 人の執念。


 そして契約者候補。


 すべてを懸けた最後の戦いが、今まさに始まろうとしていた。


――続く。

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