表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
214/245

第百六十五話 蛇の牙幹部 ――《蛇杖のガイゼル》

 白き霊樹の光が聖域を照らす。


 その輝きとは対照的に、蛇の牙の幹部が纏う魔力はどこまでも禍々しかった。


 黒衣の裾が風もないのに揺れる。


 手にした黒い杖には、二匹の蛇が絡み合うような装飾が施され、翡翠色の魔石が不気味な鼓動を刻んでいた。


 やがて男は、ゆっくりと仮面へ手を掛ける。


「ここまで来たのだ。」


「名くらいは教えてやろう。」


 仮面が外される。


 現れたのは四十代ほどの男だった。


 痩せた頬。


 蛇のように細い黄金色の瞳。


 左頬には古い傷跡が一本走っている。


「我が名は――ガイゼル。」


「蛇の牙、第三幹部。」


 男は蛇杖を軽く掲げた。


「《蛇杖のガイゼル》だ。」


◇◇◇


「第三幹部……」


 セシリアが剣を握り直す。


「幹部が何人いるのか知らないけど、かなり上の立場みたいね。」


「間違いない。」


 ツバサが低く答える。


「ここまで大規模な計画を任されるんだ。」


「相当な実力者だろ。」


 ビルセイヤは静かにガイゼルを見据えた。


「白き霊樹を狙った理由を話せ。」


「理由?」


 ガイゼルは肩を震わせて笑う。


「決まっている。」


「神代を終わらせるためだ。」


◇◇◇


 その言葉に、ヴァルグラムの瞳が鋭く細められた。


『愚かな。』


『神代を終わらせれば世界そのものが崩れる。』


「だからどうした?」


 ガイゼルは薄く笑う。


「古い秩序は壊れるためにある。」


「世界樹も。」


「霊樹も。」


「神々も。」


「全て新しい世界へ作り替える。」


 カグラが静かに首を振る。


「違います。」


「それは創造ではありません。」


「破壊です。」


「破壊なくして創造はない。」


 ガイゼルは迷いなく言い切った。


「神代は終わる。」


「それが我ら蛇の牙の悲願。」


◇◇◇


「勝手な理屈だな。」


 ビルセイヤは一歩前へ出る。


「命を踏みにじってまで叶える願いに価値はない。」


「価値を決めるのは勝者だ。」


 ガイゼルの蛇杖がゆっくり持ち上がる。


「歴史とは、最後に立っていた者だけが語れる。」


「なら。」


 ビルセイヤは白枝を構えた。


「ここでお前を止める。」


◇◇◇


「ふふふ……。」


 ガイゼルは不気味に笑った。


「できるかな?」


 杖を地面へ突き立てる。


 ゴォォォッ!!


 聖域全体が激しく震えた。


 黒い魔法陣が次々と広がっていく。


「また魔法陣!」


 フィリアが叫ぶ。


 しかし今回は違う。


 魔法陣は一つではない。


 十。


 二十。


 三十。


 無数に現れた。


◇◇◇


「来る!」


 エミリアが弓を構える。


 次の瞬間。


 魔法陣から黒い影が次々と這い出した。


 狼。


 熊。


 蛇。


 鹿。


 しかし、そのどれもが骨だけの姿だった。


 翡翠色の光が骨の隙間を流れている。


「魔物じゃない!」


 セシリアが目を見開く。


「魔獣の死骸だ!」


 ガイゼルは満足そうに頷いた。


「そう。」


「森で死んだ獣たちだ。」


「我が研究の副産物だよ。」


「死者を利用するなんて……!」


 フィリアの顔が青ざめる。


「最低です!」


◇◇◇


 フェンリルが怒りの咆哮を上げた。


 ガァァァァォォォ!!


 かつての仲間たち。


 森を守っていた獣たちが操られている。


 その姿を見て、守護獣の怒りは頂点へ達していた。


「落ち着け!」


 ビルセイヤが声を掛ける。


「今のお前が怒りに飲まれたら奴の思う壺だ!」


 フェンリルは苦しそうに息を荒げる。


 しかし数秒後、大きく息を吐いた。


 怒りを押さえ込んだのだ。


 その姿にエミリアは静かに微笑む。


「もう大丈夫。」


「フェンリルも、穢れには負けません。」


◇◇◇


「面白い。」


 ガイゼルは感心したように頷く。


「守護獣まで精神を成長させたか。」


「だが。」


 蛇杖を振る。


「数で押し潰せ。」


 ガシャァァァ!!


 骨の魔獣たちが一斉に突撃してきた。


「迎え撃つ!」


 ビルセイヤが叫ぶ。


「セシリア!」


「前衛!」


「任せて!」


 盾を構え、一直線に突撃する。


「ツバサ!」


「右を頼む!」


「了解!」


 風を纏い、一気に右側の敵陣へ飛び込む。


「エミリア!」


「フィリア!」


「後方支援!」


「はい!」


 二人は同時に魔法陣を展開した。


◇◇◇


 ビルセイヤは白枝を静かに構える。


 骨だけとなった魔獣たち。


 彼らもまた、本来はこの森の命だった。


「もう苦しまなくていい。」


 白枝が白銀に輝く。


「眠れ。」


 飛天御剣流。


「《龍翔閃》!」


 一閃。


 白銀の斬撃が骨の魔獣たちを包み込む。


 ガシャァァァン!!


 骨は砕け散る。


 だが黒い瘴気は残らない。


 白い光となって空へ昇っていく。


 まるで魂が解放されたかのように。


◇◇◇


 その光景を見た白き霊樹が、静かに枝葉を揺らした。


 サァァァ……。


 優しい風が聖域を吹き抜ける。


 森の命たちは、ようやく本当の安らぎを得ていた。


 しかし、その様子を見つめるガイゼルの表情に焦りはない。


 むしろ――。


「そうだ。」


「その力だ。」


「その剣こそが欲しかった。」


 黄金色の瞳が妖しく輝く。


「契約者候補、ビルセイヤ。」


「お前の存在こそ、我ら蛇の牙最大の収穫なのだから。」


 その言葉の意味を知る者は、まだ誰もいなかった。


――続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ