表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら刀鍛冶だった。気づけば英雄になり、最後は創造神になっていた件  作者: バモス
第二章 鍛冶革命編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
179/221

第百三十話 白銀橋の攻防

 白銀橋。


 フロストヴェールへと続く街道最大の石橋は、今や雪と血で染まりつつあった。


 橋の中央では、二台の荷馬車を守る護衛冒険者たちが必死に剣を振るっている。


 しかし、その表情には疲労の色が濃い。


 相手は二十体を超えるアイスウルフの群れ。


 しかも、その全てが翡翠色の魔力に侵され、通常種を遥かに上回る力を持っていた。


「もう駄目だ……!」


 一人の冒険者が膝をつく。


 牙を剥いたアイスウルフが飛びかかった、その瞬間――


「間に合った!」


 鋭い声とともに、一閃。


 銀色の軌跡が雪原を走り、飛びかかった魔物が真っ二つになる。


「なっ!?」


 護衛たちが目を見開いた。


 白枝を構えたビルセイヤが、橋の上へ降り立っていた。


「全員、下がれ!」


 短い声。


 それだけで、場の空気が変わる。


◇◇◇


「セシリア!」


「任せて!」


 セシリアは盾を構え、一気に前へ飛び出す。


 身体強化を纏った盾が先頭の三体を正面から受け止めた。


 轟音。


 雪が舞い上がる。


「硬い!」


 普段のアイスウルフなら、この一撃で吹き飛ぶ。


 しかし、翡翠色に侵された個体は違う。


 まるで痛みを感じないかのように牙を剥き続ける。


「でも!」


 セシリアは笑った。


「止めるくらいなら十分よ!」


◇◇◇


「エミリア!」


「はい!」


 エミリアは橋の欄干へ飛び乗る。


 弓を引く。


 風の精霊が集まり、矢へ宿る。


「風よ――」


 透明な魔力が矢を包む。


「《ウィンドアロー》!」


 放たれた矢は三本へ分裂。


 さらに空中で六本へ。


 正確にアイスウルフの肩、脚、首元を射抜いていく。


「すごい……」


 護衛冒険者の一人が呆然と呟いた。


「全部急所だ……」


◇◇◇


「じゃあ俺も!」


 ツバサは雪を蹴る。


 低い姿勢から群れの横へ潜り込む。


 抜刀。


 一閃。


 二閃。


 三閃。


 無駄のない剣筋が、アイスウルフたちの脚を次々と断っていく。


「動けなくなれば!」


 振り返りざまに蹴りを放つ。


 一体が雪煙を上げながら吹き飛んだ。


「怖くねぇだろ!」


◇◇◇


 一方――


 ビルセイヤは群れの中央へ向かっていた。


 視線の先。


 そこには巨大なアイスウルフロード。


 白銀の体毛。


 胸元を走る翡翠色の亀裂。


 全身から黒緑色の魔力が噴き出している。


「グルルルル……」


 低い唸り。


 しかし、その瞳の奥には苦しみが見えた。


「……お前も被害者か」


 ビルセイヤは静かに剣を構える。


 狼は咆哮した。


 轟音が雪山へ響く。


 次の瞬間。


 地面が弾けるほどの勢いで突進してきた。


「速い!」


 セシリアが叫ぶ。


 通常種とは比べ物にならない。


 だが。


 ビルセイヤもまた前へ出る。


 身体強化。


 風魔法。


 両方を同時に発動。


 世界が一瞬だけ静止したように感じる。


 そして――


 交錯。


 キィィィン!


 白枝が牙を受け止めた。


 衝撃で雪が吹き飛ぶ。


「力も強いな」


 狼は再び飛び退く。


 すぐに二度目の突撃。


 今度は左右へ細かく動きながら距離を詰めてくる。


「学習してる!」


 ツバサが驚く。


「普通の魔物じゃねぇ!」


◇◇◇


 その時だった。


「ビルセイヤ!」


 エミリアが叫ぶ。


「胸です!」


「胸?」


「翡翠色の亀裂!」


「そこだけ精霊の気配が違います!」


 ビルセイヤは目を凝らす。


 確かに。


 胸元だけ魔力が集中している。


「核か」


 あそこが侵食の中心。


 壊せば助けられるかもしれない。


「セシリア!」


「了解!」


 言葉はそれだけで十分だった。


 セシリアが正面へ飛び込む。


「こっちよ!」


 盾を叩き、狼の注意を引く。


 怒り狂ったアイスウルフロードが牙を剥く。


 その一瞬。


 ビルセイヤが背後へ回った。


「風よ」


 白枝へ風魔法を纏わせる。


 さらに火属性を重ねる。


 青白い刃が黄金色へ染まる。


「飛天御剣流――」


 腰を落とす。


 一歩。


 踏み込む。


「龍翔閃!」


 轟音。


 炎と風を纏った斬撃が、狼の胸元を正確に切り裂いた。


 翡翠色の核へ届く。


 パリン――


 ガラスが割れるような音。


 胸元の翡翠色が砕け散る。


「ガァァァァ!」


 狼は苦しげな叫びを上げた。


 だが。


 その叫びは次第に穏やかになる。


 翡翠色の瞳が、元の蒼い瞳へ戻っていく。


 やがて。


 巨大な体は静かに雪の上へ横たわった。


◇◇◇


 残るアイスウルフたちも変化した。


 翡翠色の光が消え。


 一斉に動きを止める。


 そして――


 森の方へ走り去っていった。


「終わった……?」


 冒険者の一人が呟く。


 静寂。


 吹雪だけが雪原を吹き抜ける。


◇◇◇


 ビルセイヤは倒れたアイスウルフロードへ近付く。


 狼は最後の力で顔を上げた。


 蒼い瞳。


 もう苦しみはない。


「グゥ……」


 静かな鳴き声。


 まるで礼を言うようだった。


「安心しろ」


 ビルセイヤはその額へ手を置く。


「もう終わった」


 狼はゆっくりと目を閉じる。


 その身体は淡い光となり、雪へ溶けるように消えていった。


 残されたのは――


 一つの蒼い魔石。


「浄化された……」


 エミリアが静かに呟く。


「世界樹に近い力が、侵食だけを消したんです」


◇◇◇


 その時。


 ビルセイヤの懐に入れていた世界樹羅針盤が突然震えた。


「!」


 針が激しく回転する。


 止まった方角は――


 北。


 フロストヴェール。


 そして同時に。


 遥か雪山の彼方で。


 巨大な翡翠色の光柱が天を貫いた。


「またか!」


 ツバサが空を見上げる。


 エミリアの顔色が変わる。


「違います!」


「あれは今までよりずっと強い!」


 冷たい風が吹き荒れる。


 吹雪が一気に勢いを増した。


 まるで雪山全体が悲鳴を上げているようだった。


 ビルセイヤは羅針盤を握り締める。


「蒼氷の霊樹が危ない」


 その一言に、仲間たちは力強く頷いた。


 白銀橋の戦いは終わった。


 しかし、本当の戦いはまだ始まったばかり。


 蛇の牙はすでに雪山の奥深くへ到達している。


 蒼氷の霊樹を巡る新たな戦いが、静かに幕を開けようとしていた。


――続く。

次回、第百三十一話「雪山への道」。


フロストヴェールへ向かうビルセイヤたちは、雪山の集落で《蒼氷の巫女》と出会います。彼女は蒼氷の霊樹を代々守る一族の生き残りであり、蛇の牙の真の目的を語り始めます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ